4話 変わり始める関係 (上)

「ん~まさか矢野にあんな事を言われるとは全く思わなかったなー、イメージとしては3人の中で一番言わなそうだったけどな」


 にしても今日の放課後かー、あんまり関わらないようにしていたけど今更断るとか無理だろうし、もうそこらへんは考えるのやめるか。

 ゲーム通りにストーリーが進行する訳でも無いって分かったし、主人公に任せきりってのも危険だってわかったしな。

 イベント発生日以外も多少なりとも気をはっていくべきだな。

 まぁずっとは無理だけどな。

 そんな事を思いながら教室にはいった。


「なぁ~愛?何か今日はやけにぼーとしてるけど何か考え事でもしてんのか?」

「いや、そんな事ないから気にしなくて大丈夫よ」

「そうか、ならいいけど」

「そう言えば三人とも何の部活入るか決めたのか?」

「うちはそーだなー、色々な運動部から誘われてるけど最終的にはバドミントン部かな~中学でもそうだったしね~」

「私は運動は苦手だから入るとしても文化部かな?どこに入るかはこれから決めると思う」

「そうだな、春香は中学でもバドミントン部のエースだったし、沙羅は昔から運動よりインドアだったしな~」

「うん!傑は中学と同じくバスケ部?」

「う~んそうだな~中学ではある程度活躍できたけど高校ではどーなんだろーな」

「大丈夫だよ傑は中学から自分より大きい相手でも全然劣って無かったし」

「うん!そうだよ!傑君なら出来るよっ!」

「まぁ~そうか!二人がそんなに言うならやってみようかな、ハハッ」


 傑は凄く緩んだ笑顔を浮かべて笑っていた。


「それで、愛はどうするんだ?中学と同じくバスケ部のマネージャーしてくれる?」

「え、えぇ、そうね一応はそのつもりではいるけど、まだわからないわ」

「そうか、でも俺的には愛がマネージャーとしてサポートしてくれると凄く嬉しい」

「分かったわ、前向きに考えてみるわ」


 愛は高校ではマネージャーじゃなくもっと自分の為に時間を使おうと思っていたので少し戸惑っていた。

 しかし、余りにも期待した眼差しで見てくるのでそんな答えを出してしまった。

 

「じゃあ、皆放課後暇だよな、部活見学も明日からだし今日は4人でカラオケいこーぜ!」

「いいね!いこーいこー!」

「うん、私も特には予定は無いから大丈夫だよ」

「愛もいくよな!!」

「えーと、今日はちょっと予定があって、ごめんね」

「え~~、愛にしては珍しいな~何があるんだ~?」

「あはは、いや、ちょっと違う人と約束があるだけよ」

「ふ~んそうなんだ、じゃ今日は3人で行くか」


 愛はそんな会話をしながら考えていた、今日の放課後の事を考えていた。

 特に何をするとか考えていたわけでも無いからどうしようか悩んでいた。


「う~ん、取り敢えずお礼だから、カフェに行っておごろうかしら」



「ふぅ~、やっと学校終わったな、にしてもお礼って何するんだろ、俺から声かける訳にもいかないし少し待つか」


 そう思い珍しくチャイムが鳴ってもすぐには帰らず机でスマホをいじって待つことにした


「じゃあ行こうぜー沙羅~春香~、じゃあな愛、また明日~」

「うん、また明日ね」


 そんな会話が聞こえてきて、三人が教室の外に行って教室に残っているは俺と愛だけになった。


「えーと、ごめんね、急に昨日誘っちゃって」


 愛が恐る恐るそう言ってきた


「いや、大丈夫だよ、でもさっきの三人と約束があったんじゃないのか?」

「ううん、約束した訳じゃないから大丈夫だよ、それよりこの後お礼にカフェおごりたいんだけどいい?」

「おう、全然お礼ってんならどこでも大丈夫だぞ」

「そう、なら行きましょ」

「えっと、このまま一緒に行くのか?」

「当たり前でしょ、何故いちいち別で行くのよ?」

「ほらだって、矢野も聞いてるだろ?俺の噂、俺といると変な噂流されちゃうぞ?」

「そんな事大丈夫よ、別に他人に何と言われようが問題ないわ、それに所詮噂でしょ」


 少し照れくさそうにそう言った


「そ、そうか、なら行くか」


 二人で歩いている途中予想通り周りから凄い視線を感じた


「なぁ、矢野?」

「うん?何かしら」

「周りの視線気づいてます?」

「ええ、確かにいつもより視線が多い気がするわね、でももう慣れてるわ」


 そう聞いて納得した、確かに愛レベルの女が視線を集めてない訳がない。

 その上他の二人も同じ位可愛いから尚更か。


「そう言われればそりゃそうか、矢野位可愛ければいつも視線集めてるか」

「ちょっ、そういう事真顔で言わないでよ」


 愛は少し照れながら顔を赤くした。その顔を見て俺も危うく照れて顔に出そうになった。

 

 そしてカフェに着いた。

 注文を終えて二人で席に着いた。


「えっと、改めて昨日はありがとう、君がいなかったら大変な事になってたと思うわ」

「昨日も言ったけど全然気にしなくていいって、たまたま通りかかっただけだし」

「うん、それでも助けられたのは事実だし、それに……」

「ん?それになんだ?」

「いや、何でもないわ」


 愛は自分の口から出そうになった言葉を飲み込んだ。

 愛は今間違いなく悪琉に対してかっこよかったって口から出そうになっていた。


 少し無言が続いていたら


「佐野君って何か部活入るの?」


 愛は話す内容を考えていて咄嗟にそんな言葉が出た。


「う~ん、どうだろうなー、中学では部活には入ってなかったけど、高校生の知り合いに誘われてバスケ部の練習にはほぼ毎日参加してたなぁ~」

「え?じゃあバスケ部に入らない?」


 そう言われて一瞬不思議に思ったけど、ゲームでは愛は中高バスケ部だったなと思い納得した。


「いや~、入りたくない訳ではないけど、入る理由がないからなぁ~」

「私一応バスケ部のマネージャーになる予定だから、佐野君が来てくれたら嬉しい」


 マネージャーってのは分かってたけど分かってないふりして答えた。


「へ~意外だな、矢野のイメージだとマネージャーと言うよりプレイヤーって感じだったわ」

「確かに運動自体嫌いじゃないけど、訳あってマネージャーをしてたんだ……」


 少し言い淀んだけど、俺は当然その理由も分かってる。

 単純に主人公が3人にお願いしたけど沙羅は運動が苦手、春香は自分が運動したい。

 そんな訳で消去法で愛が引き受ける事になったって訳だ。


「そうなんだ、でも俺が入っても戦力になるか分からないよ、練習に参加してただけで大会とか出てた訳じゃないし」

「ううん、佐野君なら絶対大丈夫だよ、身長も高いし筋肉もすごいじゃん!!」

「まぁな、ランニングも筋トレも毎日やってるからな~」

「それで、バスケ部に入りませんか?」


 前世では高校に上がってからは身長が高いこともあって、バスケ部に誘われて入ってそこからハマって大学でも続いていたんだよな。


「そうだなぁ~じゃあ体験行ってみようかな、あ~でも俺が行ったら空気悪くならないか?」

「それなら大丈夫だと思う、バスケ部のキャプテンが私のお兄ちゃんだから、話を通してくれると思うよ!」


 そう言われて思い出した。

 確かにゲームで主人公が愛を見捨てて選ばなかった時、バスケ部のキャプテンに殴られてるシーンがあったな。

 そんな事を思いながら俺は言った。


「じゃあ、明日から行ってみようかな正直興味はあったけど行きづらかったんだよなー」

「そうなんだ!お兄ちゃんはちゃんと説得するし何かあれば私も助けるから」

「まぁ、悪評が多いから慣れるのは難しそうだけどなぁ」

「えっとその、気分悪くしたらごめんね、その噂って本当なの?とても今の佐野君をみてたら信じられないだけど」

「う~ん、だいぶ盛ってある事も多いけど全くの間違いって訳じゃないな~」

「そう、なんだ、でも今そんな感じしないけど何かあったの」

「うん、ちょっと家庭環境を言い訳にする訳じゃないけど、小さい頃から両親は仕事でほとんど家にいないし、ご飯は冷蔵庫にあるか自分でコンビニに行って買ってくるしかなくてな、今思えば寂しかったのかな(笑)、まぁそれが原因かな」

「そんなことが……」


 愛が悲しそうに俯いた。雰囲気が少し悪くなって急いで俺は考えて付け足した。


「うん、でも高校に入る前にちょっと落ち着いて考えたんだ、いくら荒れてもいい事なんてないなって、周りに恐れられて寧ろ今よりも孤立していってるなってね、そう思い真面目に生きていくことにしたんだ」


 佐野がそう言って満面の笑みを浮かべて来た。

 その笑顔を見た愛は、自分の心臓がバクバクしている事に気づいていた。


「そっ、そうなのね、うん、真面目に生きて行きたいって言うなら私もきょ、協力するわ」


 目線を反らして顔を赤くしてそう言ってきた愛に対して少し戸惑いつつも


「ま、まぁ協力してくれるって言うんだったら、お言葉に甘えようかな、でも、少し気に掛けてくれる程度で大丈夫だぞ」

「えっえぇ、分かったわ、じゃあ明日からよろしくお願いします。」

「ああ、よろしくな」


 そんな感じでカフェを出て解散することにした


「ねえ、部活の事とか連絡しないといけない事とか多くなると思うからLIME交換しない?」

「ああ、勿論大丈夫だぞ」 


 そう言ってLIMEを交換して解散した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る