2話 流石悪役だな
「ん~、まぁ分かってはいたけどなぁ、ここまで避けられるとはなぁ」
入学式から一週間たって分かったことがいくつかある。
まず第一に、佐野悪琉は嫌われてるってマジで感じている。
教室に入ればわちゃわちゃしていた雰囲気が、皆こっちを見てし~んて静まり返って、少ししたらまた皆話始める。
何故か沙羅だけちょいちょいこっちを見て目が合うと直ぐそらしてるんだよな。
まぁ、何かある訳でも無いからまあ大丈夫か。
それよりも問題は主人公だよなぁ。
一週間位観察して来たけど、プレイヤーが操ってない主人公がなかなかヤバい。
周りの男子に幼馴染達をあたかも自分の事のように自慢しては調子に乗ってるんだよな。
男子達は笑って冷やかしたり、妬ましそうに見たりと様々な表情で見てるけど、中には呆れる人達も何人かいる。
しかも何がヤバいのかって言うと、そう言う話しをする時は必ず女子のいない所でしか話そうとしないんだよな~、女子にどんな関係か聞かれてもただの幼馴染だよってしか言わない。
幼馴染達は三者三様ではあるけど主人公と話してる時の表情を見る感じやっぱ三人とも主人公の事が好きなんだろうなぁって思える。
ちなみに幼馴染達は、一人目が以前会った相沢 沙羅、普段おっとりとしていて優しい性格で低身長ながら巨乳。
二人目が矢野 愛、クールでモデルみたいなルックス、普段表情はあんまり変わらないけど主人公と話す時だけ少しだけ表情が緩くなる。
この変化に周りの人は気付かないらしい。
三人目は七瀬 春香、他二人にコンプレックスを抱いているけど、いつも明るく振舞い一番友達が多い。
ゲームをプレイしていた俺からしたらコンプレックスを抱いている事が不思議に思えてくるくらい可愛いと思う。
そんな事を思いながら主人公達の方を眺めていたら沙羅がこっちを見て直ぐに俯いた、何故こっち見てくるのか分からないけどやっぱめちゃくちゃ可愛いな。
正直主人公はどうでもいいが、三人には幸せになって欲しいと思ってる。
だから主人公にはハーレムルートを目指してくれないとなんだけどな。
でも今の主人公を見てると信用できないんだよな~。
幼馴染以外の女子に向けてもいい顔してるから本当にヒロイン達を守れんのかなって思っちゃうんだよな~。
まぁ、ある程度のイベント発生日時とかも覚えてるから、俺は俺で備えていればいいか。
昼休みになりいつも通り屋上にで昼ごはんを食べているといつもは誰も来ないのに扉の方からカチャって音が鳴った。
念のため隠れてみたらまさかの幼馴染3人組だった。
いつもは教室で主人公と食べたり、主人公が男友達と食べてる時は3人で食べてるのになんでだろう?って思いながら恐る恐る話を聞くことにした。
「それで、教室で話しづらいことって何?」
「それにしても珍しいね沙羅ちから話しづらい話があるって」
「うん、えっと、二人は佐野君について何か知ってる事ってある?」
なぜ俺の事を聞いてるのか、心当たりが無いわけではないけど二人に聞くほどかとは思う。
まぁ、優しい沙羅だからこそ、そう思うんだろうな。
「えっっ?なんで沙羅ちはそんな事が気になるの?」
「沙羅からしたら一番関わりたくない人じゃないの?」
「えっと、最近まで私もそう思ってたんだけどね、この前外国の方に話しかけられてる時に助けてくれたんだよ。その時からちょっと気になって少し見てきたんだけどね、掃除とかも隅々までしてるし、重たい荷物を運んでる先生を手伝ったりと悪い人にはみえないんだよね」
「ん~まぁ噂だしね、正直中学でも全く関わり無かったからどうなのか分からないけど噂がある時点で全くのデマってこともないんじゃないかな?」
「どっちにしても、沙羅ちが気にすることでもないんじゃないかな」
「そっか、それもそうだね」
そう言いながら帰っていった。
遠くからだけど、沙羅が笑いつつも少し微妙な表情をしている様に感じた。
「にしても、分かっていたがやっぱ沙羅って相当お人よしなんだな~」
あらためてそう感じた。
あっ、そういえば今日だな。最初に起こるイベントがあるのは。
矢野 愛が不良に絡まれてる女子を助ける為に止めに入るが、女子を逃がすことには成功する。
しかし、愛自身が捕まってしまい連れていかれる所を、たまたま通りかかった主人公が助けを呼びつつ不良と殴り合いになりボコボコにされる。
そして警察が何とか間に合い助ける事が出来て、矢野からの好感度が爆上がりするってイベントだ。
流石に無視は出来ないから俺も近くに行こうか。
放課後適当に時間を潰しながら歩いていると、愛が歩いているのを見つけた。
時間的にはまだまだだからこれからか。
後をつけたいけど周囲の視線が凄い…特に女子が凄いな。
これは嫌われてるっていうよりも前世でいうアイドルを見ているみたいな視線だな。
このまま追うと目立つから時間まで待つか、と思ったら路地裏から聞こえてきた。
「やめなさいっ」
え?時間までまだ早いぞ?今はまだ主人公が友達と遊んでる時間だろ!
余り主人公達に関わりたくないから助けに入るかどうするか迷っていたら
「はぁー?なんだよねえちゃん?」
「ちょっとは空気読んでくれよな?」
「この子達だって嫌がってないだろ?なぁ?」
「いっ、嫌に決まってるじゃないですか!」
「ほらっ!嫌がってるじゃない」
そう言って愛は女子を掴んでいた男の手を叩いて払うと、その隙に女子達を逃がした。
「おいおい、何で逃がしてんだよてめぇっ」
「あの二人のかわりに相手してくれるんだろ」
そう言って大学生らしい男三人が笑いながら愛の腕をつかんだ。
「ちょっ、放しなさい」
「おいおい、逃がした責任取ってくれないとな?それにそんな抵抗した所でこんな所に助けなんてこねーぞ」
「大人しく俺たちと一緒に遊ぼーぜねーちゃん?」
「誰があんたらなんかと遊ぶのよっ!ちょっ、止めなさい」
腕を掴まれながら連れていかれる愛、周りを見ても主人公がくる気配は無い、まずいと思い体が動いた。
「おいっ、待てよお前ら!!」
「あん?なんだてめぇ」
「え?佐野君?」
「なんだこの女の知り合いか、でもちょっとでけぇからって3人相手になにが出来るんだ?」
「ん?逆にたった3人で何が出来んの?」
そう言って煽り返した。
実際前世の俺はキックボクシングと空手をしていて全国でもかなり強い方だったし、佐野悪琉自体もかなり喧嘩が強くセンスがあった。
「てめぇっ、なめてるんじゃねーぞ」
一人がそういうとほかの二人と一緒に殴りかかって来た。
しかし俺からしたら素人そのもので、まるで相手にならずに全員あっという間に地面に転がった。
「ん~、少しやり過ぎたな、とりあえずこいつらはしばらく起きそうにないから警察に連絡してくれる?」
そう愛の方を振り向いて言うと、ポカーンとした顔をしていたのだが、急いで携帯を取り出して連絡を始めた。
しばらくして警察が来た。
事情を説明したら他にも証人がいたので話はスムーズに進み、話は簡単に終わり帰ることにした。
「じゃ、俺はこれで帰るから」
「ちょっと待って!」
「ん?どうした」
「えっと、あ、ありがとう」
「いや気にしないでいいよ、じゃあね」
「いや、だからなんでそんな直ぐどっか行こうとするんですか」
正直俺が関わる事で物語にどう影響するか分からないからあまり関わりたくもないが、ここまで関わっておいて変に無視するのもおかしい話だなとも感じてもいた。
「いや、そんなことはないぞ?」
「あっそう」
「うん、で?何か用事あるの?」
「えっと、用事ってほどでもないんだけど、助けてもらったお礼がしたくて」
「ん~そんな気使わなくてもいいんだけどな」
「いや、それじゃ私の気持ち的に落ち着かないからっ!明日の放課後空けておいて!!」
「あっ、はい」
あまりの勢いで言って来るのでつい反射で返事してしまった。
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