君との出会いで色づいた。

とりどり

第1話【ライオンとネコ】

「引っ越し!?転校!!??」

「ごめんな、茂道しげみち!誰かが異動するとは聞いてたんだが…、まさか僕に白羽の矢が立つとは思わなかったんだ」

「そんな急に!やだよ!千歌だって、今の友だちと離れるのは嫌だろ!?」

「新しいお友だちができるんでしょ!?楽しみだよ、お兄ちゃん!!」

「ねえ!母さん!なんとか言ってよ!」

「近くにスーパーあるかしら?」

…ダメだ。

引っ越すことに抵抗があるのは、俺だけか…。




俺、猫成ねこなり茂道しげみちには友だちがいない。

話しかける努力はしているが、誰とも仲良くなれないのだ。

「もうすぐ新しい学校に着くけど…、憂鬱ゆううつだなあ」

そのときだった。

「…さん!!好きです!つ!付き合ってください!!!」

思わず、電柱に隠れて、息を潜める。

まさか愛の告白のシーンに出くわすなんて…!!

「ずっと見てたんです…!」

制服からして告白した人物も、された人物も、俺が転入する童武どうぶ高等学校の生徒のようだ。

…!!告白された女子生徒…、かなり美人さんだな!!

目鼻立ちが整っていて、キリリとんだ蒼い瞳が美しい。

明らかに俺と住む世界が違う…。

「ごめん。あたしは誰とも付き合わない」

「…そ、そっか」

うわぁ…!

撃沈げきちんするところを見てしまった…。

美人さん、あんなにキッパリと断るなんて…。

俺、あんなことあったら立ち直れないよ。

まあ、関わることは、まずないだろうな…。




猫成ねこなりくん。今日からよろしくね」

「はい!久住くずみ先生!よろしくお願いします」

俺の担任になる久住くずみ先生は眼鏡をかけた若い女性の先生だった。

予鈴よれい鳴ったことだし、もう行きましょうか」

いよいよだ。

自己紹介から始まることはわかってるからな!

昨晩の練習通りしっかり喋って、この学校でこそ、友だちを作ってやる!!




「じゃあ、名前と、好きなものね」

「は、はい!ね、猫成茂道ねこなりしげみちです!好きなものは動物です!よろしくお願いします!!」

良かったんじゃない?!

俺にしてはよく…

「えー!すご~い!動物は何か飼ってるの?」

くっ、想定外の質問!

詰めが甘かった!!

「い、いや、特には」

「なんだ~」

…終わった。

マニュアル人間だ、俺は。

コミュ力も無いし人見知りだしさ…。

友だち、ここでもできないんだ…。

「みんな!猫成ねこなりくんと仲良くするのよ!」

「「は~い」」

「さてと、それじゃ席だけど…。あそこの宍嶋しししまさんの隣ね」




指定された席に行き、カバンを置いて隣の女子に声をかける。

「あ、あの、猫成ねこなり茂道しげみちです。しししま…さん?よ、よろしく」

「ん?あんた誰?」

顔をこちらに向けた彼女を見て、俺は驚いた。

け、今朝の美人さんだ!!

まさか隣の席になるとは。

って、すごいジロジロ見てくるじゃん…。

気恥ずかしい。

猫成茂道ねこなりしげみちです。転校生の。さっき名乗ったんだけど…」

「ふぁあ、寝てた」

「寝て!?」

彼女は気だるげなあくびをして、ぶっきらぼうにつぶやく。

「ま、テキトーによろしく」

「う、うん」




転校初日、慣れない環境で6時間の授業。

つ、疲れた!!

「にしても、こっち方面は俺だけなんだなぁ」

通学路は一応事前に下見したが、まだ迷ってしまう。

「…あれ、こっちだったっけ?」

ニャ~ゴ

「ほら、あたしは怖くないから。来いよ」

ん?あれは…宍嶋しししまさん!と、猫?

宍嶋しししまさんが話しかけても、猫はそっぽを向いている。

「ふ~ん、じゃあ、これならどうだ」

あ!あれは!よくCMで見る猫が大好きなちゅるちゅるペースト!!

ミャー

「あはは、現金なやつだなぁ、よしよし」

猫は突如、甘えた態度をとり、地面に寝転がった。

「かわいいなぁ…あ、舐めるなよ。っ、くすぐったいってば」

今朝のクールなイメージと真逆だ…!

はっ!彼女の自然体な笑顔にすっかり見入ってしまっていた。

えと、帰り道はこっち?かな。




家に着いても宍嶋しししまさんの笑顔は俺の頭から離れなかった。

…隣の席で、これから毎日顔を合わせるわけだし、雑談できるくらいにはなりたいな。


それは、新しく始まる学校生活での目標ができた瞬間であった。

このときはまだ知りもしなかった。

彼女が俺にとって、"はじめての………"になるなんて。



読んでいただきありがとうございました!

面白い!続き気になる!ヒロインかわいい!

と思った方は↓の♡、⭐から純粋な評価で結構ですので、作品の応援をよろしくお願いいたします。

フォローもめちゃくちゃ励みになります!

ではまた!








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る