40話 カオスソード

「【逆再生】……?」


 一体どのようなスキルなのだろうか。

 逆再生と言えば、ドナルド動画を連想させる。


 逆再生……もしやその通りのスキルなのだろうか。

 ノナは脳内で念じると、スキルの効果を確認する。



☆スキル名

 逆再生ぎゃくさいせい

☆効果

 任意の空間、対象を最大10分まで逆再生する。

 この効果は、スキル所持者の視界に収まらないと発動できない。

 ※このスキルは1日に1度のみ発動可能



「どんなスキルだったの?」

「逆再生って言うスキルみたい」

「へぇ、で、効果は?」


 ノナは2人と1匹に効果を説明する。

 その結果、実際に目の前で実践してみることとなった。


「じゃあ、いっくよー! 【ファイアボール】!!」


 エムがダンジョン内の壁に向かって、【ファイアボール】を発動させた。

 彼女が持つ杖から、火球が発射される。


「今だよ」


 ミソギの合図で、ノナは視界に入っているエムに集中し、スキルを発動させる。


「【逆再生】!」


「!!ウルーオバイアフ !おゆっき、ああやざ」


 エムは空気を吸ったような発音で、謎の言葉を発する。

 まるで動画を逆再生したかのようであった。


 動作に関しても、杖の中に火球を取り込むといった、まさに先程の動作全てが逆行している感じだ。

 エムの体全体の動きも逆再生されており、かなり不自然な動きをしている。


 10分まで発動できるが、ここで発動をストップし、状況を確認する。


「おもしろ!」


 まるで、動画サイトにある逆再生動画のようであった。

 思った通りではあったのだが、目の前で実際にそのような光景が繰り広げられると、想像以上に面白く感じる。


「じゃあ、いっくよー!」

「あ、終わったよ? ありがとう!」

「え? いつ!?」


 どうやら、先程までの記憶もないらしい。

 記憶までもを逆再生してしまうスキルのようだ。


「本当に覚えてないの?」

「う、うん」


 だが、こんなスキルは正直ネタスキルだろう。


「“ハズレスキル”だね」

「やっぱり!」


 ミソギも同じ意見のようだ。


「ハズレなスキルじゃなくて、ハズレスキルね」

「うん? どういう意味?」


 どう違うのだろうか?


「一見ネタっぽいけど、実は強いってこと」

「強い? このスキルが?」


 明らかに逆再生されている光景を楽しむスキルだと思うのだが、どこが強いと言うのだろうか?


「一種の時間操作でしょ? 絶対強いよ」

「時間操作!?」


 確かに、そう考えると強いのかもしれない。



 ここで本題に入る。

 フェンリルに剣を作って貰おう。


「フェンリル、錬金術用の素材は溜めてある?」


 錬金術には錬金釜が必要なのだが、フェンリルは体内がその代わりだ。

 つまり、先程食べたドロップアイテムを錬金術に使用することもできる。


『ああ、勿論だ。ただ、最後に1つ素材が足りていないことを思い出した』

「1つ?」

『剣だ。剣を作るとなると、元となる剣も必要だ。剣ならなんでもいいぞ』


 ということで、ノナは腰のショートソードを抜いて、フェンリルに差し出した。

 なんだかんだ、このショートソードには世話になった。


『ふん!』


 フェンリルはショートソードを飲み込むと、叫ぶ。


『いくぞ! 錬金術!!』


 フェンリルの体が青白く光り輝くと、フェンリルの体内から1本の剣が吐き出された。

 鞘に収まっている状態なので、飛んできてもそこまで危険ではなかったのだが……


「うわっ!」

『驚くな!』


 毎度のことであるが、フェンリルの口内から出て来たものから、反射的に距離を取ってしまうノナなのであった。


「おお! かっこいい! えーと、名前はっと……」


 確認しようとした所で、フェンリルが言う。


『カオスソードだ』

「名前が結構普通だ!」


 だが、見た目がかっこいいので良いとしよう。

 そもそも、以前使用していた名もなき剣もシルバーソードと呼んでいたのだ。


「シンプルイズベストだね! 分かりやすくていい!」


 と、考えをすぐに変えた。

 ノナは考えがコロコロと変わる。昨日言っていたことも、考えを変えることがあるくらいだ。


 ノナはカオスソードを右手で持ち、鞘から剣を抜く。


「凄い! どんなトリックなんだろう!」


 この剣の刀身は非常に面白いことになっている。

 見る角度によって、白く見えたり、黒く見えたりするのだ。


 カオスソードということもあり、光と闇を表しているのだろう。

 そういえば、素材をドロップしたドラゴンの大群も白と黒だったので、あのモンスター達も光と闇のドラゴンだったのだろうか?


 今となっては確認できないことだが、その可能性は高い。


 持ち手は白で、つばは黒なのも、混沌を表しているのだろう。


 重量に関しては、ショートソードくらいの重さであり、流石にシルバーソードのように軽くはなかった。

 だが、扱えない程の重さではない。


 現実世界ならともかく、ダンジョン内であれば身体能力も強化されているので、振り回すことはそこまで難しいことではない。



 無事に新たな武器を入手したノナは、フェンリルにお礼を言うと、ダンジョンをあとにした。

 その後ミソギとエムとも解散をし、自宅へと戻ると、パソコンを起動させる。


「あれをやらないとね!」


 以前VTuberの配信にコメントをした時、ノナはVTuberというものをよく知らなかった。

 調べた今なら分かるのだが、マナー違反な発言をしたということを理解した。


 VTuberはあくまで、画面の中の存在。

 それを知らなかったノナは、画面に表示されているアバターをイラスト扱いしてしまったのだ。


 それを申し訳なく思ったノナは、今まであの文章を張り付けたVTuberへの謝罪を行うことにした。






あとがき

この作品、7月9日から始まりましたが、一か月で9万字以上になりました!

書き溜め分を考慮しても、8万字以上書いたのは確かだと思うので、個人的には新記録だと思います!


勿論もっと書いている方はいますが、個人的に嬉しいです! よろしければ記念にページ下↓か作品トップページのおすすめレビューをタップ又はクリックをして、★★★評価で応援していってくださると嬉しいです!

読んでみて好きな数で大丈夫です! 現時点で0評価だと思った方は、1評価になったら評価してくださると嬉しいです!

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