31話 光の龍と闇の龍

 救助を待つことになったノナとミソギ。

 救助隊が到着するまで、結構時間がかかるらしい。


 大人しく待っていようと考えていたが。


「なんか聴こえない?」


 もう少し奥の方から、何やらブツブツと聴こえる。

 そこまで遠くなかったので、「少し見に行くだけ見に行かない?」と、ミソギと相談した。


「危なかったらすぐ戻ろうね」

「勿論!」


 一体何が待っていると言うのだろうか?

 期待していたノナであったが、少し進んだ先に待っていた光景は、想像以上のものであった。


「なに……これ……」


 ミソギはその光景を見て、つぶやいた。

 確かに、大迫力の光景なので、ポカーンとしてしまうのも無理はないだろう。


 ただ、ノナの場合は……


「ラッキーだったね!」

「え?」


 目の前に広がるのは、白いドラゴンと、黒いドラゴンの大群だ。

 ドシンドシンと、こちらへ向かって歩いて来る。


 100体以上は、いそうな勢いだ。


「ドロップアイテムがなんかいい感じのだったら、Gにも余裕ができるだろうし、奢ってあげられそうだよ!」


 前のレッドドラゴンも、弱いバージョンではあったが、ドロップアイテムは高値で売れた。

 もし、このドラゴン達も似たような感じだったら?


 ノナは収納袋から、2mの真っすぐな剣、シルバーソードを取り出した。

 遠距離から、試しにそれで1匹を斬ってみた。


 だが、敵は硬かった。

 30発当てて、ようやく1匹倒すことができた。


「結構しぶといね!」


 ノナがそう言うと、ドラゴンの1匹が、ダンジョンの壁に向かって攻撃を放った。

 そこには、なぜか出入り口にあるのと同じような紫のダンジョンゲートが生成される。


 何発も何発もダンジョンの壁に打ち込まれ、どんどんとゲートが生成されていく。


「なんなのこれ……ねぇ!」


 ネットで情報を得たと言うミソギであったが、なんとも初歩的な疑問を口にしたのであった。

 なぜか、少し怯えているような気も……?


「あれはダンジョンゲートだよ! ここに入る時も、くぐって来たでしょ? 多分触ると外に出られるかもね! いや、どこに繋がってるか分からないし、危ないから触らない方がいいとは思うけど!」


 得意げにノナは言い放った。

 自分の方が詳しかったことで、少し勝ち誇ったのだ。


「グオオオオオッ!」

「あっ! やばっ!」


 こちらへ、光の玉が飛んできた。

 よそ見をしていたので、このまま食らうと思っていたが、手が自然に動き、それは放ったドラゴンへ向けてシルバーソードで弾かれた。


「おお! 凄いね! 長くて軽いだけじゃなくて、オートガード機能もついてるのか!」


 次々に打ち込まれる攻撃を、シルバーソードは全て弾いた。


「でもこのままだと、ミソギに危害が加わるし、この数じゃ逃げても救助が来るまで間に合うか分からないし……こうなったら、あれを使おう!」


 ノナは収納袋から、赤い液体の入った瓶を取り出した。


「この前エムからお礼に貰った、攻撃性能を1分間だけ2倍にする、激レアポーションだよ!」


 ノナはそれを飲み込むと、シルバーソードを両手で構える。


「ていっ! ていっ! ていっっっ!」


 次々に連続でドラゴン達を何発も斬り付け、粒子へと変えていく。

 攻撃されても、シルバーソードが自動で弾いてくれるので、問題なしだ。


「更に奥の手!」


 実はレッドドラゴンの大群を倒して、しばらくしてから、とあるアーツが再び使用可能となったのだ。


「アーツ発動! 【流星群】!」


 シルバーソードは青白い光を浴びる。

 理由不明だが、剣でありながら、杖の役割もになえるというのだろうか?


 剣を勢いよく振り降ろすと、上空から流星がドラゴンの大群に向かって降り注ぐ。

 攻撃性能が2倍なのと、シルバーソードにより威力が上がっているのか、次々とドラゴンは消滅していく。


 そこから回復ポーションを飲み、更に【流星群】を発動。

 そして更に、斬って斬って斬りまくる。


 その結果……。


「終わったー!」


 なんとか、全てのドラゴンを倒すことができた。

 ドラゴンを倒している間に、攻撃によって発生したダンジョンゲートも全て消えていた。


「ドロップアイテムがいっぱいだー! 取り放題だー!」


 青白いキューブが地面に転がっている。

 ノナはそれらを次々と、収納袋へと収納していった。


 中身は後でゆっくりと確認するとしよう。


「た、助かった……?」

「どうしたのミソギ?」


 ミソギは地面にゆっくりと腰を下ろした。


「結構心配性なんだね!」

「ノナは、よくこんな時でも元気でいられるよね……。恐れを知らないと言うか……」

「照れるなぁ!」






「ねぇノナ、聞きたいことがあるんだけどさ」

「何?」

「最近ノナが変わったのって、中学時代のノナが乗り移ってるからだったりしない?」

「え!? ええ!? 的確過ぎない!?」


 割と完璧な答えで、思わず叫んでしまった。


「そ、そ、そ、そんなことないけどね! というか、どうしてそんなことを急に!?」

「聞こうと思ってたけど、中々タイミングが見出せなくてね。それに、違ったらなんか失礼でしょ? けど、今のを見て確信した」

「か、か、か、確信って、そんなことある訳ないじゃん!」


 と、なんとか誤魔化そうとしていると。


「グオオオオオッ!」


 またしても、1匹のドラゴンが現れた。

 よく見ると、虹色のダンジョンゲートのような所から出現しているようだ。


 1匹ならなんとかなる。

 ノナは、ドラゴンを何発も斬り、粒子化させる。


「どうしてここからモンスターが? というか、この虹色のゲートなんだろう?」


 ノナが首を傾げていると、その虹色のゲートは宙へと浮かび上がり、大きさを変えた。

 やがて、それは形を変え、6枚の翼を持つ黄金のドラゴンへと変化を遂げた。

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