10話 究極で完璧なゼロスタイル
「何これ?」
「それはドロップアイテムだね。それを手に取ると、アイテムとか、場合によっては装備とか色々出てくるね」
「おお! いいの出るといいな!」
「そうだね。ただ、スライムだしあんまり期待しない方がいいかも」
確かに、スライムと言えばRPGでは弱いモンスターと扱われる場合が多い。
ドロップアイテムも期待しない方が良いだろう。
「なんだろう、この液体!」
この前の黄緑色の液体は、確かポーションだったハズだ。
これは何だろうか? 丁寧に瓶に入っている。
「これは【スライムエキス】だね。そのままだと使えないし、飲んでもマズいから売った方がいいかもね」
「売る?」
「うん。ゴールドを手に入れる為にも売るのをおススメするよ」
「ゴールドって、なんだっけ?」
「ダンジョン内のお金だよ」
「なるほど!」
RPGのように、ダンジョン内の通貨が存在するらしい。
ただ、都合よくモンスターがお金を落とすということはないらしい。
◇
スライムを倒しながらしばらく歩いて行くと、大きな扉の前まで来た。
扉の前には、【冒険者ギルド】と書かれたTシャツを着ている男性が立っている。おそらく、スタッフの人だろう。
「ボスに挑戦しますか?」
「ボス?」
ボスという意味は分かるが、念の為エムに聞いてみた。
「ボスって言うのは、この場合、階層のボスのことだよ。この扉を開けると、ボスに挑戦できるんだよ! 挑戦してみる?」
やはり、ゲームと同じようなボスを指すようだ。
「うん! 勿論!」
「よし! じゃあ一緒に行こうか! 2人で挑戦します!」
スタッフにエムが言うと、スタッフは扉の前から退いた。
ノナとエムは、扉を開き、中へ入ると自動的に扉が閉じた。
「ガアアアアアアアアッ!」
すると、粒子がモンスターの形となっていき、それは赤い大型の鬼の姿となった。
「ここのボスは【レッドオーガ】だよ! 頑張ろう!」
「なんか強そうだなぁ。初心者の私でも大丈夫?」
「大丈夫! 私がついてるからね! 究極で完璧なアイドルの私がねっ!」
ウインクをして、目の横で横向きのピースを決めた。
「へぇ! それは凄いね!」
ノナは拍手をエムに送る。
「あ、あの……い、今のはボケというか、ネタだから!///」
エムは顔を赤くして、両手を目の前にして顔を左右にブンブンを振る。
「なんかのネタなんだね? 恥ずかしがらなくても大丈夫だよ! 私の友達もかみ殺すとか、色々言ってるから!」
そういえば、この時代の友達はどうしているのだろうか?
もし会えたら、昔話としてかみ殺す連呼していた話をして盛り上がるとしよう。きっと、懐かしくてたまらなくなるに違いない。
「ガアアアアアアアアッ!」
「よそ見をしている場合じゃないみたいだね!」
レッドオーガを無視して話をしていると、レッドオーガは叫んだ。
「いっくよおおおおおおおおお!」
「ノナ!? いきなり突っ込むの!?
ノナはレッドオーガを斬り付けた。
「ガアアッ!?」
「効いてる!? まだスライム数匹倒しただけなのに、ここまで成長を!?」
エムがノナを褒めると、ノナは少し照れながら言う。
「そうかなぁ! いやぁ! もしかして私探索者の才能があったりして?」
「才能は間違いなくあると思うよ! よし! 私も探索者の先輩として頑張ろう! 【ファイアボール】!」
エムは杖を振ると、火球がレッドオーガに向けて飛んで行く。
「ガアアアアッ!?」
「ふふん! ノナにいい所を見せられて良かった!」
流石、究極で完璧を自称するだけはある。
「凄いねぇ! いやぁ、凄い! さっすが、アイドルだねぇ!」
「ありがとう! 恥ずかしいけど……」
レッドオーガはフラフラしている。
そういえば、ここは初心者向けのダンジョンだ。ということは、レッドオーガもあまり強くないのかもしれない。
「ファイアボール!」
「トドメは私がっ!」
「ちょっ! 危ないって!」
ノナは、発射される前の火球の目の前に背を向けて立つ。
火球に押される形で、レッドオーガに向かって吹っ飛んで行く。
「見せてあげよう! 【ダブルインパクト】ゼロスタイル!」
ノナはドヤ顔で叫びながら、剣をレッドオーガの額に刺し、追加でもう一撃分のダメージを与えるスキル【ダブルインパクト】を発動させた。
レッドオーガは体力がなくなったのか、粒子になり消滅した。
「ぐはっ!」
ノナは火球のダメージもあり、地面に叩き落とされる。
「大丈夫!?」
「あ、うん!」
ノナは立ち上がると、照れくさそうに笑う。
「いやぁ! いい勝負だったね!」
「そうだね! でも、あんまり危ないことしないでね?」
「まぁ、別に普通に攻撃していれば、勝てたしね! でも、それだと飽きちゃってね! 私飽きっぽいからさぁ! あっはっは!」
「気を付けてね? 私まだまだノナとダンジョン探索したいんだから」
ダンジョン内で死んでしまうと、ダンジョン外の体は無事だが、2度とダンジョンへは入れなくなってしまう。
そして、あくまでも無事なのは体だけだ。1度死というものを経験してしまえば、どうなるのか? 精神面は無事じゃ済まない。廃人になってしまう者もいれば、案外死は怖いことじゃないと考え、少し嫌なことがあっただけで、命を絶ってしまう者もいるらしい。
これらは今日ネットを調べていたら、それらのまとめ記事が見つかったので、ノナも知っていることだ。
「大丈夫だって! えへへ!」
「不安だ……」
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