2009年の女子中学生が、2024年の自分を乗っ取った。えっ!? この時代には【ダンジョン】があるの!? ~見た目は大人でも、中身は平成の中学生なので、あらゆる常識が通用しません~
5話 上司に退職を却下されたけど、無理やり退職してみた!
5話 上司に退職を却下されたけど、無理やり退職してみた!
☆吉永 ノナ
「なんとか到着した……」
あの後、ノナはダンジョンを出た。
そして、自分の住んでいる場所の情報をスマホなどで確認し、この時代の自分が住んでいるアパートへと、やっとの思いで辿り着いたのだった。
「明日学校だしなぁ。早めに寝ないと」
初の一人暮らしだが、家では家事を手伝っていたということもあり、そこはなんとかなりそうだ。
だが、とりあえず今日の所はコンビニ弁当を買ってきたので、それを食べよう。
と、ここでノナはあることに気が付く。
「学校……?」
ダンジョンに入っている間は元の姿になれたということもあり、すっかりと現実を忘れていた。
ダンジョン外のノナは、今も変わらず大人の姿なのだ。
そして、行くべき場所は学校ではなく、職場だ。
「でも職場にはうるさい人がいるみたいだし、あんまり行きたくないなー。仕事のやり方とか全然分からないし」
正直、3年くらいであれば、節約すればニートできるくらいの貯金はあるのを確認できたので、怖い人がいるのならばやめた方がいいのかもしれない。
貯金がそこそこ貯まっている理由は、部屋に必要な物以外ないことから、お金をほとんど使わなかった為だろう。
「でも、あの上司ただアニメキャラの真似してただけかもしれないし。悪い人じゃないかも? ただ、最後携帯投げ付けたっぽいのが、どうも本気っぽかったんだよなー」
現実世界の大人が叫んだり暴力的なことをしているのは、どうにも信じられないが、もしそうだとすれば、今の仕事は早めにやめた方が安全だろう。
「どうしよっかな?」
と、ここでノナは部屋にある、一冊のノートを見つける。
「日記かな? って、何このホラーアイテム! コスプレする時の小道具かな!?」
そのノートを開くと、「死にたい」とだけ書かれていた。
物凄い量の「死にたい」が殴り書きされていて、非常に怖い。
「コスプレの小道具じゃなさそうだ……。怖っ! この時代の私、どんだけ中二病なの!?」
とここまでは、ただの中二病だと思っていたのだが、ページに挟まれた封筒に目を通すと、ノナは叫ぶ。
「なんだこれ!!」
その封筒には「遺書」と書かれていた。
「ちょっとちょっとー! ネタが不謹慎なんですけどー! いくら中二病とは言え、限度を超えてるって!」
本気で悩んでいる人に失礼だ。
ノナが自ら死を選ぶとは考えられない。
つまりは、ネタ。
不謹慎なネタである。
「うそーん」
と思っていたのだが、内容がしっかりと書かれていた。
「今日の日付だし! 何これ!?」
その遺書には、親に向けての文章と共に自殺方法が書かれていた。
その自殺方法とは、本日駅で電車に飛び込むという内容だった。
「まっさかー! 本気じゃないよね? ……そんな風に考えていた時期が私にもありました」
ノナは思い出す。
自分がこの時代に来た時のことを。
「もう少しで死んでたってことか。やばいね」
ノナはスマホを手に取る。
「会社に退職の電話しておこーっと!」
明らかにやばそうなので、退職をすることにした。
「というか、この時代の私よ。なぜこんなことになってしまったんだぜ?」
スマホを操作しながら、ノナは呟いた。
「連絡がつかないなぁ」
仕方がないので、明日会社で退職することを伝えることにした。
◇
「おはようございます! あ、昨日の上司! 昨日はごめんなさい!」
「吉永か。昨日は好き放題言いやがって、お前本当に覚えとけよ?」
「何をですか? まぁ、努力はします! でも、今日はそれ所じゃないんです!」
「テメェ……」
拳を握りしめる上司。キレているのだろうか?
しかし、もう辞めるので、大丈夫だろう。
「私辞めようと思います! 辞表も書いてきました!」
急ぎだったので、コンビニで買った用紙に手書きで書いた物である。
「テメエエエエエエエエエエエエエッ! 前も言っただろ! 却下だ!」
「フハハハン」
ノナはニコ動のMADで使用されている、カードゲーム主人公の真似をして、得意げに笑った。
実は、退職についてスマホで勉強をしてきたのだ。だからこそ、この余裕がある。
(上司は多分、知らないんだろうな!)
そう、勉強してきたのだ。
おそらく、却下と言ってきたので、知らないのだろう
「先輩! お得な情報なんで、覚えておいて欲しいんですけど、退職って2週間前までに伝えれば、その効果は無効にならないみたいなんです! なので、私はこれから二週間休みたいと思います!」
「いや、それ受け取らねーから」
上司はノナの辞表を指差して言った。
「なぜ!?」
「分からねーのか? 社会人の常識っつーもんがよ! お前何年生きてんだ? それくらい分かるだろうが!」
「ええ!?」
「お前何年生きて来た? 言ってみろよ! 仕事もできねーくせに、無駄に年重ねやがってよぉ!」
受け取る前に、それを聞きたかったのだろうか?
それなら答えるのは簡単だ。ノナは一安心した。
「もう少しで14年です!」
「は?」
「あ、そうだった! 違うんだった!」
ノナは照れながら、右手で首の後ろをかいた。
「もう少しで、29年だと思います!」
「ついに狂ったか!」
「えへへ! 色々ありまして!」
と、ここでコソコソと話す社員の声がノナの耳に入る。
「なんか、今日の吉永さんおかしくないか?」
「いつもあんなにハキハキ喋らないし」
「吉永さんが上司に、それもあの上司に意見するだなんて、雪でも降るんじゃないのか?」
「辞めるからじゃないのか? まぁ、前も一度却下させられてるし、辞めさせて貰えないんだろうけど」
照れるしかない。
「まぁ、ということで辞めます!」
「受け取らねーつってんだろ!」
「ええ!? 困りましたね……う~ん。ま、いっか!」
ノナは辞表を強引に上司の机に置いた。
「では、皆さん! 今までありがとうございました!」
「受け取らねーっつってんだろーが!」
「渡しましたので、多分大丈夫でしょう! 今までありがとうございました!」
「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおいっ!」
こうして、もう2度と会社に来ないで済むようになった。
仮に辞表を捨てられたとしても、渡したので多分大丈夫だろう。
「テメェラアアアア! 追ええええええええ!」
「嫌です! というか、私もやめます!」
「俺も!」
「ぼ、ぼぼぼぼぼ僕もっ! と、というか、前僕のことぶん殴ったこと、あの時は泣き寝入りしましたが、これ以上同じようなことをするのなら、う……訴えますよ!それに今の僕は、スイッチのフィットネスボクシングで鍛えましたからね。リングフィットネスアドベンチャーも100週以上しました。ま、訴えるのは辞めてやる。ここでケリつけようぜ! 見せてやるよ、スイッチのゲームソフトの力をな! それと皆気を付けろ! 今の奴は右手に武器を隠し持っている。己の器の小ささに相応しい、カッターナイフという名の
「テ、テメェエラァァァ!」
何やら声が聴こえてきた。
喧嘩のようで恐ろしい。
「まぁ、こういうのは私の役目じゃないし。私学生だし」
色々問題のあった上司だったのだろうが、それを罰するのはノナの役目ではない。
「暗いことは忘れよう! というか、なんか疲れたし、今日はもう帰ろーっと!」
ノナは叫ぶと、前かがみになり、右手と左手を後ろに流すようにして走って帰宅した。
★★★★★
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