青春のバイト清掃
黒猫
青春のバイト清掃
高校生のみよは、放課後の大半を生命保険会社のオフィスビルでの清掃バイトに費やしていた。週に五日、同級生のヒロミと共に、オフィスの5階と6階で2時間ほど掃除機をかけ、灰皿の灰を集め、ゴミをまとめるのが彼女の日課だった。
地下の事務所からバイトリーダーのおじいさんの指示を受けて、制服に着替え、挨拶を済ませると、みよとヒロミはそれぞれの階へ向かう。5階のオフィスでは、会議中や仕事中の社員たちの間を縫うようにして、掃除機をかける。社員たちの邪魔にならないように気をつけながら、ただ下を見て無我夢中で掃除機をかけていく。
時折、掃除機のコンセントが届かなくなると、近くのコンセントを探して差し直すのだが、それがまた一つの難関だった。1人1人の机の下を掃除する際に、PCのコンセントを掃除機に絡ませてしまうことがあり、「プシュン…」とPCが突然シャットダウンしてしまうこともしばしばだった。
「あっ!…あっ〜ご、ごめんなさい!すいませんでした!」と謝るみよに、「…参ったな〜。」と呟く社員。そんなトラブルも日常茶飯事だったが、ヒロミと二人で協力し合いながら、何とか業務をこなしていた。
しかし、ある日、ヒロミがどうしてもバイトに来られないと言ってきた。「みよ、今日どうしてもバイト行けないから、悪いけど、バイトリーダーに休むこと伝えておいて!」と頼まれたみよは、一人で倍の時間をかけて業務を終えた。ヒロミが休んだ日の助っ人はおらず、一人での作業は思った以上に大変だった。
次の給料日、ヒロミは休んでいた日の分の給料が振り込まれていたことに驚いた。彼女は正直にバイトリーダーに申告したものの、「貰えるものは貰っておいていいんじゃないか」とバイトリーダーに言われ、苦笑いをしていた。しかし、みよは心の中でちょっぴり不満を感じていた。なぜなら、その日は二人分働いたのは自分なのに、その努力が報われない気がしたからだ。
「せめて、ヒロミにだけでも言えたらよかったのかもしれない…」そんな思いがみよの胸に浮かんだ。愛嬌たっぷりに「その分、わたしが頑張ったんだからケーキで許すよ!」とでも言ってみれば、もっと楽しく笑い飛ばせたかもしれない。だが、その時はどうしても言えず、もやもやとした感情を抱えたまま過ごしてしまった。
青春の一ページ、ヒロミとのバイトの日々は、今でもみよの心に残っている。あの時の後悔も、今では甘酸っぱい思い出として心に刻まれている。
青春のバイト清掃 黒猫 @tanokuro24
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