TV番組「私たちにも言わせろ!」第18回 文字起こし

略)


司会者がひな壇にいる女性ゲストへ話を振る。話を振られた女性は待ってましたと言わんばかりに、身を乗り出し、鼻を膨らませながら話し始めた。


―私もそういう経験あります。私、グラビアやるまでは普通に昼職で働いてたんですけど、(ここで司会者からどんな仕事をしていたか問われる)雑誌記者でした。それで私は、大学のころ経済学を専攻してたので、そっち方面の仕事が希望だったんですけど、なぜかスポーツの方に回されてしまって。まぁでも仕方ないなと思いつつ働いてたんです。でも私スポーツのことなんてなんにも知らないから、ミスばっかりしちゃって、いつも怒られてたんです。(同情するような相槌)それである時、上司から「女なんだから身体でも使ってスクープ取ってこい」って言われちゃって。


司会者がそのエピソードと現在の彼女の職業との矛盾を指摘し、会場に笑いが起こる。言われた本人も、そのことには概ね同意するように微笑んだ。笑いが収まるころ、反対のひな壇に座っていた一人の男が口を開く。


―我々はそういった事象を解決するための研究をしているわけです。はっきりいって、多種多様なハラスメントを根絶することはできませんが、もし実現までたどり着ければ、そんな事象は意味を成さないものになるでしょうな。


司会者がもっと簡潔に具体例を混ぜながら話すことを要求する。


―良いでしょう。例えばさっきの彼女の例。どうすれば問題を解決できるでしょうか。ハラスメント禁止の張り紙を社内に貼りましょうか。それとも月一回の聴講会を義務付けましょうか。あるいはそれも効果はあるでしょう。しかし、我々の考えは違う。彼女が最初から経済部に配属されていればよかったのです。もっと言うならば、その上司をもっと相応しい部署、あるいは仕事に移動させればよかったわけです。


それができたら…と会場全員が頭に思い浮かべたのを感じ取ったのか、男はこう断言した。


―出来ますよ。我々ならね。


以下略)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る