そら豆と蛙

ゐさ

そら豆と蛙

晴れた空から雨が降っている

中身の無い授業の帰り道

アスファルトに映える黄緑色のそら豆が

湿った路側帯に散らばっていた

僕にはそれが蛙が死んでいる風に見えて

少し驚いた後で可哀想だと口にした

けれども蛙で無いと気付いた時

なあんだ、と思った

思ってしまった、という方が正しいのかもしれない


道路脇にばらばらと散らばったそら豆

跳躍する蛙と見紛う程の生命力が

そこにはあったはずなのに


灰色が支配する空気の中

そら豆も蛙も僕が殺してしまったみたいで

降り頻る雨は透明の血となり、水溜りを作っては溢れて排水口へと流れ出す

無意識に呟いた「ごめんね」と共に


その晩、煩いほどよく響く蛙の鳴き声と

塩の効いたそら豆がひとつ

僕の中にじわりと溶け込んだ

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そら豆と蛙 ゐさ @b41eine

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