殊
夕凪色音
零
とてもとても広い、通常学校の十倍以上はあるであろうグラウンド、その真ん中。
まだ慣れない特殊な隊服を身にまとった一人の少年が、緊張した面持ちで向かいに立つ人影を
対して、彼の視線の先には、二〇代後半と思われる凛とした顔立ちの女性が
両者ともに少しも動かず、相手の出方を
—―といっても、本当に窺っているのは少年のほうだけかもしれないが。
何せこの女性には、隙が
対する少年は、緊張した面持ちの頭の中では、様々な考えが渦を巻いて
つまるところこの少年は、先のことを余計なことまで考えすぎて、なかなか行動に移せない「優柔不断タイプ」なのであった。
隙が無く、堂々と少年を
無い隙を窺いながら、一歩も動けず固まっている少年。
二人の間には、まだ
そうして沈黙の時間は過ぎていく。
「……まだか?」
女性の方がしびれを切らして、呆れたように尋ねた。同時に少し
今にそう言われる、と半ば予想していた少年の肩がびくっと跳ねた。
「私は君から仕掛けてくるのを待っているんだが」
再びその低い声に言われた少年は、心の中で帰りたくなった。とはいえ、ここ以外に帰る場所もないので、もう一度、目の前の女性を
少年の名は、
相対するは、琉也の所属する〝
ちなみに琉也の強さは、どちらかというと下から数えたほうがはやい。
と、その時。
様々な迷いや考えを振り払い、覚悟を決めた琉也が、中崎へと突進していった。中崎は「
殊 夕凪色音 @B30D32A02
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