第13話 彼女を自宅に招いて……
「よし、決めた!」
3年前の回想を思い出した俺は、ベンチから勢いよく立ち上がると……缶コーヒーを一気に飲み干してごみ箱に捨てて――そのまま自宅へと帰って湯船に浸かっていた。
(信楽……アイツがまた俺の前に現れるまでは、橘のことは考えないようにしよう)
「じゃねぇと、頭がパンクしちまう……」
そして俺はしばらくの間、湯船に浸かりながらボウッと天井を眺めていたが、やがて逆上せそうになってきたので湯船から上がることにした。
風呂上がりには冷えたコーヒー牛乳を飲み干すと、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、これも一気に飲み干した――そして俺は布団にダイブして眠りについたのだった。
☆★☆★
翌日、大学の講義を終えた俺は帰宅するなり、布団の上に横になってボーッと天井を眺めていた。すると突然、俺のスマホが鳴りだしたので慌てて画面を確認すると……そこには、れのちゃんの名前が表示されていたため、通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「あ、坂柳さん……」
「どうしたの?」
「その……坂柳さんに会いたくて……」
「え?」
俺は突然のことに驚いて固まってしまった。すると、れのちゃんが慌てて弁解してきた。
「あっ! ごめんなさい! 急に変なことを言ってしまって……迷惑ですよね?」
(れのちゃんにめっちゃ会いてぇ……)
「いや、大丈夫だよ」
「本当ですか!?」
「うん。それでどうしようか……俺ん
「坂柳さんの家にお邪魔してもいいんですか!?」
「ああ、いいよ」
「ありがとうございます! それじゃあ早速向かいますね!」
電話が切れてから2分後――。
『ピンポーン』
とインターホンが鳴ったので、玄関に向かって扉を開けると――そこには私服姿のれのちゃんが立っていた。
「こんばんは、坂柳さん」
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
(ああ、可愛すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうう……!!)
俺は思わずニヤけてしまいそうになったため、慌てて表情を引き締める。
「あの……何かありましたか?」
俺の様子が変だと思ったのか、れのちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。その仕草が可愛くてドキッとしたことは言うまでもないだろう。しかし、ここで動揺を見せるわけにはいかないと思った俺は、冷静を装って返事をした。
「いや、なんでもないよ」
「そう、ですか……良かったです!」
(マジ天使! 可愛すぎるッ!!)
俺は心の中でそう思った後、れのちゃんをリビングへと案内する。そして、ソファーに座ってもらうように促した後、飲み物を用意するためにキッチンへと向かい――冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぐと、それをトレイに乗せてリビングへと向かった。
「はい、これどうぞ」
れのちゃんは俺の差し出した麦茶を受け取ると、ゆっくりと口に含んだ。そして、ホッと息を吐き出した。その姿がまた可愛らしくて見惚れてしまったことは、言うまでもないだろう。
「ありがとうございます。美味しいです」
「それはよかった……」
それからしばらくの間、沈黙が続いたのだが……れのちゃんは意を決した様子で口を開いた。
「坂柳さん……」
「ん?」
「その……私たちって付き合っているんですよね?」
(何を言ってるんだ、れのちゃんは?)
俺はれのちゃんの言ってる意味がよくわからなかった。
「そうだけど……それがどうかしたの?」
「いえ、その……私って、坂柳さんからしたら子供っぽいのかなと思って……」
俺はれのちゃんの言葉を聞いて思わず笑ってしまった。どうして笑うのか理解できないといった様子で首を傾げるれのちゃんの姿も、また愛らしいと思ったことは言うまでもないだろう。しかし、いつまでも笑っている場合ではないので咳払いをしてをしてなんとか気持ちを落ち着かせた後、こう言った。
「そんなことないよ」
「え?」
れのちゃんが驚いた表情で俺のことを見つめてきた。その瞳からは不安の色が窺えたので、安心させるために頭を撫でてあげる。すると、最初は驚いていたようだが、徐々に目を細めて気持ちよさそうな表情に変わるのがわかったため、嬉しくなった俺は、もっと頭を撫でてあげることにした。
しばらくして満足するまで頭を撫で続けた後、手を離すと名残惜しそうにしている様子のれのちゃんと目が合ったため、思わずドキッとしたことは言うまでもないだろう。しかし、いつまでも見惚れている場合ではないので、話を戻すことにした。
「星宮さんは十分大人だよ」
「本当ですか?」
れのちゃんは不安げな表情をしていたものの、俺の言葉に安堵した様子でホッと胸を撫で下ろしているのがわかったため、少し安心することができた。
(ああ、もう……可愛すぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいい!!)
俺は心の中で叫び声をあげた後、深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせたところで、れのちゃんが質問してきた。
「あの、坂柳さん……」
「ん? どうしたの?」
「その……キス、してもいいですか?」
その言葉を聞いた瞬間、俺の心臓は激しく脈打ち始めるのを感じた。
そして、無意識のうちに唾をゴクリと飲み込む音が部屋の中に響き渡ったのだった――。
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