第6話 唐突の告白

 ゲームを開始して2時間が経過し、現在の時刻は16時を過ぎた。


「坂柳さん、すいません! 私だけがゲームをプレイしてしまって……」

「いいや、全然いいよ。むしろ俺はれのちゃ――ゴホン! 星宮さんがゲームをしている姿を見れて幸せだった」

「そうですか……って、え?」

「あっ……」


(しまった! つい本音が……!)


 俺が慌てて口をつぐんでいると、れのちゃんは頬を赤らめながら口を開いた。


「あの……坂柳さんは私のこと、どう思っているんですか?」

「そ、それは……」


 俺は思わず口ごもる。すると、れのちゃんは更に追い打ちをかけるように言ってきた。


「正直に言ってください!」

「うっ……わ、わかりました……」


 俺は観念して自分の気持ちを伝えることにした。そして、ゆっくりと口を開く。


「お、俺は星宮さんのことが……ずっと前から好きだ……」

「そ、そうなんですか!?」


 れのちゃんは驚きの声を上げると同時に、嬉しそうに微笑んだ。そして――俺の手を握ってくる。その手はとても温かくて柔らかった。俺は心臓が爆発しそうなほど高鳴っていた。そんな俺に対して、れのちゃんが口を開く。


「嬉しい……」

「えっ?」


 俺が呆然としていると、れのちゃんは言葉を続けた。


「私も坂柳さんのことが好きですっ!」

「へっ?」


(今、なんて言った……!?)


 俺は混乱していた。しかし、れのちゃんは全く気にする様子もなく話を続ける。


「だから……これからもよろしくお願いします!」


 そう言って彼女は微笑んだ。その笑顔はとても美しく、思わず見惚れてしまうほどだった。そして同時に幸福感に包まれる。


(ああ、幸せすぎて死にそう……)


 そんなことを思っているうちに、俺の意識は遠のいていったのだった――。


 それからどれくらい時間が経っただろうか? 気がつくと俺は、ベッドの上で横になっていた。隣を見ると、れのちゃんがベッドの上に座っているのが見える。どうやら意識を失ってしまったらしい。時計を見ると、時刻は18時を過ぎていた。


「あ! 坂柳さん! 目を覚ましてよかったです!」


 れのちゃんは嬉しそうに微笑んだ。どうやら彼女はずっと俺の側にいてくれたらしい。俺は素直に感謝の言葉を述べた。


「ありがとう、星宮さん」


 俺がお礼を言うと、れのちゃんは大きく首を横に振る。そして、こう答えた。


「いえ! これくらい当然のことです!」


 そう言ってニッコリと笑うれのちゃんはとても可愛らしかった。その笑顔を見ていると、胸の奥が熱くなるような感覚に襲われる。それと同時に、ある衝動が込み上げてきた。


(抱きしめたい……)


 そう思った時にはすでに行動に移していたようだ。気がつくと俺は、れのちゃんを抱きしめていた。


「ふえぇっ!?」


 突然のことに驚いたのか、れのちゃんは素っ頓狂な声を上げる。しかし、すぐに俺を受け入れてくれたようで、抵抗はしなかった。それどころか彼女も俺の背中に腕を回してくる始末である。


(ヤバい……これ、想像以上に幸せすぎるッ!)


 そんなことを思いながらしばらく抱き合った後、俺はゆっくりと体を離した。そして――れのちゃんの目を見つめながら言う。


「あのさ、星宮さん……」


 俺が言葉を発すると、彼女は首を傾げるようにして俺を見つめている。その表情はとても可愛らしい。俺はそんな彼女を見つめながら言葉を続けた。


「実は、俺……星宮さんの大ファンなんだ」

「それって……」

「うん。出会う前から星宮さんが声優だってこと知ってた。でも、それを言う勇気も自信もなかった……」


 俺がそう言うと、れのちゃんは少し考える素振りを見せた後――納得したように首を縦に振った。


「そうだったんですね。私の大ファンですか……なんだか照れますね」


 そう言ってれのちゃんは頬を赤らめた。そんな彼女の表情を見ていると、また抱きしめたい衝動に駆られるが、なんとか抑え込むことに成功する。


「それでさ、いきなりで悪いんだけど……」


 俺がそこまで言うと、れのちゃんは黙って話の続きを促してくれた。その優しさに感謝しつつ、話を続けることにする。


「俺と付き合ってほしいんだ!」


 そう言って俺は頭を下げた。それと同時に心臓の音が激しくなっていくのがわかる。数秒間の沈黙が続いた後――れのちゃんが口を開いた。


「私なんかで良ければ喜んで!」

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