将来を約束した幼馴染は小悪魔な新人女優。
鮎川 晴
第1話 始まりの日。
「お義父さん、お義母さん、白梅高校卒業までの三年間お世話になります」
国民的美少女の天野サヤカは僕の両親へ三つ指をつき、深々と頭を下げて挨拶した。
「こちらこそ宜しくね、サヤカちゃん」
そんなやり取りを呆然と眺める僕に天野サヤカは、
「ほら、裕人君もお義父さんお義母さんに『サヤカの事を宜しくお願いします』って挨拶してよ」
意味不明なお願いを求める。
「え?どういう事」
何の疑いも無く発した僕の言葉に当人のサヤカは、
「だって、いくら婚約者の私でも入籍前にご両親と同居するなら、夫になる裕人君も一緒に挨拶した方が良いと思う、でしょう」
天野サヤカは可愛い顔をして理路整然と言うが、無茶振りされた僕はイマイチ腑に落ちなく言葉に詰まった。
その場の空気が淀む前に、
「そうね、サヤカちゃんの意見は尤もね、さあ裕人も『お願いします』と挨拶しなさい」
母が僕を急かして追い詰める、これは世間で言うナントカ・ハラスメントでは無いのか、上手く言い返せない僕にサヤカは更に、
「裕人くんは私の存在が迷惑なのね、悲しい」
そう言って手にしたハンカチで目頭を押さえた。
その姿に驚いた僕は急いで、
「違うよ、全然迷惑じゃ無いから、母さん父さん天野サヤカさんを宜しくお願いします、ね、ちゃんと挨拶したからもう泣かないで」
目頭を押さえるサヤカの機嫌をとる僕に、
「私 泣いてないよ、目に逆睫毛が入って痛かっただけよ」
僕の勘違いも有るがタイミングが良すぎるし、目元ぱっちり美少女の長すぎる睫毛に文句の一つも言いたい。
「裕人、既にサヤカちゃんの尻に敷かれているな、恥じる事は無い、かかあ天下は家内安全、平和の象徴、俺もそうだからこれは遺伝と思え」
朝早くから働くパン職人の父を尊敬しているが、今の僕は未だ父の様な悟りの境地に達していない。
ここまでに至る経緯は、
童顔イケメンのパパ、光一さんが急な上司の病気療養で代役のロスアンゼルス支社長へ赴任、異国で身の回りを心配するママのエミリさんが同行する事に、既に白梅高校芸能科に合格していた幼馴染で元モデルの天野サヤカがこの家に同居する事になったが、ほんの数日前まで僕は聞かされてなかった。
令和*年、四月二日、前々日と前日は白梅高校の退職離任式と新任着任式で生徒は登校禁止、中学バスケットボール全国大会準優勝の石川拓実に誘われて、合格発表翌日から高校バスケ部に参加していた僕は、この数日間を自宅で天野サヤカと春休みの課題テキストを消化していた。
「裕人君、課題テキストの範囲で入学式当日から実力テストが有るって知っているでしょう?」
え、それは初耳と言うか、単純に驚きしかない。
「そんな事を僕は聞いて無いよ」
同居する白梅高校芸能科一年の天野サヤカへ正直な気持ちを告げてみるが、
「実力テストの事は私も聞いて無いけど、配布された入学案内に記載されていたよ」
話を聞いた聞いてないのレベルじゃなくて、僕が書類を読み落としていたと気付いた。
小悪魔なサヤカに文句を言いたいが、大きな瞳の可愛い顔に何も言えない。
*
次回エピソード更新は気紛れの不定期です、あしからず。
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