隣の部屋
天川裕司
隣の部屋
タイトル:隣の部屋
俺はここ都内から少し外れた民営アパートに住んでるが、
隣の部屋がとにかくうるさい。
30代半ばのOLが住んでるはずだが、
俺はそいつが嫌いだったから
まったくしゃべったこともなく
顔をまともに見たこともなかった。
ただ朝、すれ違う程度。
そいつは会社から帰ってきたらまずテレビをつけて、
しかもそれがバラエティー番組だったらしく
とにかく夜中まで大笑い・バカ笑いして
うるさすぎる存在なのだ。
「もうイイ加減にしろよあのバカ!」
こんな事を何度心の中で唱えてきたことか。
でも俺は生来、奥手な性格で人見知りで、
面と向かって文句は言えないタチ。
それに相手は女性だしなおさら。
でもうるさい。
正直、静かな生活がどちらかと言うと好きだった俺は、
ある時から本当にたまりかねて、
引っ越しまで考えるようになってしまった。
「なんであんな奴のために引っ越さなきゃなんないんだろ。お金もかかるし労力も要るしさ…」
そんなある夜のことだった。
いつものようにあの女が帰ってきて
またテレビをつけてバカ笑いし、
その日はレコードも一緒につけ、
さらには長電話してる女の声まで聞こえてきた。
「くぅ〜〜うるせえなあ〜!アイツどんな生活してんだよ!」
もともと派手派手なアイツの生活だったから、
時によってはこんな何重にも音が重なるような
普通なら耐えられない、わけのわからない
生活もしてくるのか!?
なんて俺自体もワケわからなくなっていた時…
「……あれ?」
急にそれら全部の音が鳴りやんだ。
ちょっと壁に耳をあてて聞いてみても
さっきまで聞こえていたあの騒音は聞こえない。
「やっと静かになったか…」
そう思いつつも、いつ又うるさくなるかと
懸念もあったので、
俺はもう隣の部屋のことを考える事はせず、
自分の生活に戻り、
自分の身の周りの事だけに集中するようにして
ビールを飲み、その日は久しぶりに静寂の中、
ゆっくり眠ることができた。
それから数日後。
隣の隣の部屋の男が逮捕された。
その男の部屋にはレコードと、部屋の押し入れの中に
カセットデッキがあったと言う。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=zVcGnO56VLo
隣の部屋 天川裕司 @tenkawayuji
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