~耳垢~(『夢時代』より)

天川裕司

~耳垢~(『夢時代』より)

~耳垢~

 幻想(ゆめ)と乱心(こころ)が謎に依る時「未知の空間(すきま)」が小敗地(アジト)を報せて、個録(ころく)の初めに未開が発(た)つのは向日の思乱(あらし)の真逆(まさか)であった…。幻(ゆめ)と大児(こども)が概(おお)きく成り果て未解(みかい)の個録(ころく)を遅延(スロー)で観る時、身欲(よく)の狭間で失神するのは暗(やみ)に狭まる不解(ふかい)であった。…男性(おとこ)と女性(おんな)の虚無の盛(さか)りに宙(そら)に動ける不乱の初めは、幻想(ゆめ)の初歩から孤独に言動(うご)ける不浪に集まる独創(こごと)であって、

      *

 Listen to me…!Listen to me…!

      *

粗大に散り舞う〝初歩(はじめ)の孤独…〟は仮死に息衝き扶養の程度で、明日(あす)の枯渇を肴に据え置く不浪続きの朝日に向いた。

 自己(おのれ)の未知から無謀に降(お)り立つ「自由の瞳(め)をした英国紳士」は、孤高を肴に呼吸を静める「浮遊続きの悪義(あくぎ)」に徹して、男女(ひと)に鎮まる滑稽(おかし)な曲には幻覚(ゆめ)の独気(オーラ)が散々飛び出て、暗(やみ)に休める滑稽(おかし)な描理(びょうり)は白雲(くも)に望める不解を射った…。未憶(みおく)に従う孤独の主観(あるじ)は固陋に始まる無垢を手にして、脆弱(よわ)い四肢(てあし)を基(もと)に収める不養(ふよう)の音頭を感覚(いしき)に置き去り、桃色して居る滑稽(おかし)な悪魔は、予日(よび)の自然(あるじ)を逆さに振った。「死んだ作家」に傅く〝旧差(ふるさ)〟は幻想(ゆめ)の仄かを忘れた儘にて、白亜(しろ)い翁に帳尻合せる「不意」を宿した狡い悪夢を、耳鳴(おと)を気にする心地の陰(かげ)から不要を落とし、分厚(あつ)い空気(もぬけ)を渡る迄はと…、陰府(よみ)の許容(うち)から驚く人影(かげ)など幻覚(ゆめ)の身重に透かして行った…。無音に羽ばたく無知の欠片(かけら)も未憶(みおく)の許容(うち)へと吸収され活き、呼吸を識(し)らない不安の体位に〝粗末な悪魔〟を一匹飼った…。野暮用から出る滑稽(おかし)な孤独に情事(こと)の概(おお)くは意味を見忘れ、得てして効かない能力(ちから)の結界(かぎり)に無応に大きく文句(ことば)を操り、暗い夜路(よみち)に具体(からだ)を観る儘、無音の奥地へ退(さ)がって行った。女性(おんな)が空転(ころ)がる無機の道標(しるべ)に文言(ことば)の家族が活命(いのち)を立て生き、明日(あす)が見得ない滑稽(おかし)な孤独を男女(ひと)の寝間から程無く絶えた。白亜(しろ)い弄(あそ)びが奇遇を保(も)ち寄り、暗い弄(あそ)びを覚えた頃には、宙(そら)に朗(あか)るい極度の旨には一人(ひと)の活き地が通って在った…。明るい自主(あるじ)が奇妙に裂かれる「無穏(むおん)に瀕した家屋の末(はて)」には、分厚(あつ)い夜雲(よぐも)が生気を逸する不在の自然(あるじ)を情事(こと)に取り添え、無機の家屋に涼風(かぜ)を染(し)ませる有名無実が加減を見て居る…―――。不覚の程度に自主(あるじ)が固まり旧い気色が真命(いのち)を仰ぐと、安い形象(かたち)は物々しく成り、不義の要局(かなめ)を概(おお)めに見て取り、分厚(あつ)い小言を抜きに流離う広い荒野(こうや)の自信を識(し)った。苦労ばかりの人生(みち)を絵にして脆弱(よわ)い形成(かたち)に孤独を辿れば、未知の集成(シグマ)に悪態吐(づ)き生く夢想の主観(あるじ)を大事としながら、漆黒(くろ)い亘(わた)りを努力(ちから)に見て生く素人(ひと)の孤憶(こおく)が鋭く成った。分厚(あつ)い景色を感覚(いしき)に据え保(も)ち「幻想(ゆめ)の目下(ふもと)」で従者を引くのは、旧来独語(むかしがたり)の密(みつ)に合せる不浪の成果(はて)での未業(みぎょう)とも成り、緩む宙(そら)から孤独が堕ち生く「不頼続き…」の教裏(きょうり)に在った。分厚(あつ)い信義(しんぎ)が理郷(くに)を換えつつ旧い木馬の固陋を手にして、明日(あす)に倣える独理(ドグマ)の際(きわ)には幻(ゆめ)に見送る業者が立った。無意識(いしき)の裾に「落葉(おちば)」を掬える未活(みかつ)に澄み得た滑稽(おかし)な毒には、独り語(がた)りが堂々辿れる幻想(ゆめ)の一男(おとこ)の浅い語りが、密(みつ)に静まる未活(みかつ)の長(ちょう)にて「旧い回顧(レトロ)」を上々好(よ)くした。〝区切り〟を見知らぬ「不毛」の長(ちょう)には既知が寝そべる寝台(ベッド)が在って、朗(あか)るい自然(あるじ)が興(きょう)に覚れる「不幸の左翼」の源さえ在り、光る無知から胸裏を観るのは向かい仕立ての苦慮の傘下で…、易い行為に〝好意〟を憶える不頼の従者は魅惑を識(し)った…。真白(しろ)い独語(かたり)は延々近付く…。

 「不毛」に具わる旧(むかし)の自然(あるじ)は孤独ばかりに新調され活き、片言三言(かたことみこと)を呼吸に合せる旧い幻覚(ゆめ)から無牢(むろう)を遠退け、漆黒(くろ)い自主(あるじ)は現(うつつ)に冷め生く太い樹(みき)からその実(み)を投げ出し、夜半(よわ)の目下(ふもと)に落ち着く間際が朗(あか)るい調子をより明るくした。人間(ひと)に望める神秘(ふしぎ)の気色を固い〝法(ほう)〟から回顧(レトロ)に引き出し、幻想(ゆめ)の亘(わた)りを概(おお)きく見守る不幸に見守る巨輪(きょりん)の空間(あいだ)は、幻(ゆめ)に窄める不惑の相図(あいず)に段々逆上(のぼ)せる情(じょう)を按じて…、一人(ひと)の温床(とこ)から家督を譲れる不論の辛気(しんき)を傍聴して居た―――…。既知の空間(あいだ)に裾を見てから歯向かい続ける人間(ひと)の腕力(ちから)は、幻想(ゆめ)の孤独を紛れる真理(しんり)と、不毛の小敗地(アジト)に撤退し始め、相(あい)せる両眼(まなこ)に巨躯を牛耳る〝不論〟に活き尽(き)る具足(ぐそく)を識(し)った…。幻想(ゆめ)の文言(ことば)と滑稽(おかし)な体躯は浮浪に省ける独理(ドグマ)を得ながら、器用に基づく不安の木の根を未充(みじゅう)に燃やして慌てて行った。白亜(しろ)い景色が御殿に添うのは陽気ばかりの安泰ながらに、幻想(ゆめ)の巨躯から虚無に対せる「不安続きの独房」から成り、漆黒(くろ)い小敗地(アジト)の向うの方(ほう)には、脆弱(よわ)い撤廃地(アジト)の欠落さえ在る…。不安に基づく不頼の相(そう)から無闇に息衝く孤憶(こおく)が活き出し、幻覚(ゆめ)の初歩(はじめ)に遠退く「小敗地(アジト)」は責任逃れに努めて行った。過去の耀華(ようが)に燦々降(くだ)れる不倫を画(え)にした模造の佳日は、情事(こと)の無機から孤独を追い生く不浪続きの傘下を生育(そだ)てて、闇雲乍らに鬼畜を描ける不利を転じた〝矢庭〟を採った。旧(ふる)き好(よ)き日の「不相(ふそう)に駆られた事実」の陰には、暗(やみ)の日々から絡み始める〝夢想〟の概(おお)くを疎外して居た―――…。旧い〝蹴鞠〟の上手(じょうず)の裏には「暗(やみ)に転じた私想(しそう)」が窺え、分厚(あつ)い結界(かぎり)が孤高に吠え得る未開の四季(きせつ)が横行して居る…―――。

      *

 ―――…硝子器の破片で、右掌(みぎてのひら)を怪我した老婆が居た。結構その傷は深かった。その怪我した右手を左手で抱えながらその老婆は、やがて直ぐに遣って来た俺の元職場の上司のような若い男に解放されて居た。この老婆を俺は知って居り、確か、老人施設で働いて居た時に利用者として来て居た老婆である。名前を高岸と言ったかも知れない。その硝子器の破片とは、その塵箱(ごみばこ)が置いて在る家の居間で出た不要物であり、「要らなくなったから」と俺が捨てた。何か要る物を作って居た時に偶然出来た大鋸屑(おがくず)みたいな硝子器の破片だった。

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 未来(さき)に死に逝く孤独の活命(いのち)が矛盾に咲き得る未亡を掌(て)にして、田舎の悪魔を宙(そら)へ返せる苦慮の脚力(ちから)を振奪(ぶんど)り始めた。少女(おんな)の宝を孤高に預けて幻想(ゆめ)の一男(おとこ)に口説ける朝日は、幻覚(ゆめ)の清閑(しずか)に具体(からだ)を仕留める徒労の恋から女性(おんな)を引き出せ、分厚(あつ)い夜霧を暗(やみ)へ遣るのは矛盾に仕立てる労苦であった。苦行の好(よしみ)を人間(ひと)へ吐き出す日々の憂慮の脆(もろ)い不思議は、男女(ひと)に詰め寄る滑稽(おかし)な神秘(ふしぎ)を孤独の角(かど)から段々追い駆け、明日(あす)の朝陽に揚々知れない「旧い表情(かお)した独理(ドグマ)の姿」に、幻(ゆめ)の労苦は段々透れる未活(みかつ)の進歩を通じて行った…。男性(おとこ)の界(かぎり)を御殿に覗ける虫の息など日々に埋れて、退屈凌ぎに寝相くすねる日々の憂慮は機嫌を盛(さか)らせ、幻(ゆめ)の仄かに緊張して生く「退屈凌ぎの場末の門(もん)」には、男性(おとこ)と女性(おんな)の微かな寝息が唐突崩れ安泰して居た…。苦労を高める使途の仰ぎは無垢の調べに落ち度を揺らして、男性(おとこ)の孤憶(こおく)を連想(ドラマ)に返せる「素人(ひと)に落ち着く文言(ことば)」と並べて、暗(やみ)に徹する孤独の蝶には、幻想(ゆめ)の在り処を群散(ぐんさん)して居た。白亜(しろ)い四季(きせつ)がどんどん晴れ生く気楼に崩れた旧(むかし)の旧巣(ふるす)は、幻覚(ゆめ)の身辺(あたり)で呼吸(いき)をして居る浮浪の思乱(あらし)の経過(ながれ)に立った。幻覚(ゆめ)に始まる四季(きせつ)の流れは男女(ひと)の孤憶(こおく)を夢情(むじょう)に徹して、分厚(あつ)く流れる人間(ひと)の展開(ながれ)を孤踏(ことう)の初歩(はじめ)にずんずん置き遣り、幻(ゆめ)の寝間から「紐」を解(と)くのは殊に大きな憤(むずか)りでもある。一女(おんな)の容姿に従順(すなお)が飛び交い暗(やみ)に纏わる〝打ち出の小槌〟は、孤独と遠叉(えんさ)に遠退き始める幻(ゆめ)の律儀に棺を観た儘、不能に名高い枯渇の動義(どうぎ)を隈無く捜せる理解を識(し)った…。朝に纏わる不動の煩悶(なやみ)は起死に寄り着く不動を観た儘、阿呆の〝奈落〟を美味に翻(かえ)せる旧い掟をそのまま観た儘、蒼い四季(きせつ)を情(じょう)に任せる不頼続きの悪義を識(し)った…。一人(ひと)に覗ける無謀の千夜(せんや)は「幻想(ゆめ)の初歩(はじめ)」に孤独を見た儘、真白(しろ)い景色を既視(おおめ)に見て行く浮浪の一種を詰問しながら、朝な夕なに一人(ひと)を統(たば)ねる虚空(そら)に対する身元を知った。男女(ひと)の脆味(よわみ)を時計に計れる与奪の神話を街へと誘(いざな)い、明日(あす)の高嶺に未来(さき)を託せる浮浪続きの芥(あくた)の揺れには、天に代わりて悪魔が従い、幻想(ゆめ)に護れる女性(おんな)の揺らぎは人間(ひと)の走馬を程好く恋して、分厚(あつ)い途切りにその実(み)を隠せる旧い夜空を追い駆け始めた―――。

 白雲(くも)に眺める孤高の四季(きせつ)は未知の既憶(きおく)に悶絶した儘、幻想(ゆめ)と神秘(ふしぎ)と蝶の欠片(かけら)を未物(みぶつ)に与(あず)けて人間(ひと)を安らげ、一人(ひと)に初まる未活(みかつ)の意味には私闘に湧かせる表情(かお)など手懐け、明日(あす)の夜霧に憤悶(ふんもん)して生く固陋の小敗地(アジト)を概(おお)きく識(し)った…。

 無像の思乱(あらし)に毛玉が出た時、無心の木の葉は散々散らされ、盗賊紛いの一人(ひと)の悪魔に「刈り入れ時」から空虚を報され、未知の具体(からだ)を景色に見惚れる幻想(ゆめ)の盲下(もうか)の灯(あか)りの許容(うち)では、端正(きれい)に流れる不幸の水面(みなも)が女性(おんな)の孤独を上手(じょうず)に描(か)いた…。無知の調べに奥義(おくぎ)を知らされ不幸の相図(あいず)に形象(かたち)を観た時、幻想(ゆめ)の目下(ふもと)に見守る優雅は未知を携え不惑を掌(て)にして、男性(おとこ)の生憶(きおく)を勝手に象る無論の不和には幻(ゆめ)が活き着け、不幸を想わす不慮の初歩(はじめ)は未知の宙(そら)へと弾けて入(い)った…。幸福ばかりに身躍(みおど)りしながら錯乱して生く気楼の仄香(ほのか)は、夢限(むげん)に仕留めた幻想(ゆめ)の許容(うち)での分厚(あつ)い展開(ながれ)の呼吸の仕業で、白亜(しろ)い気色が浮(ふ)んわり跳び生く無陋(むろう)の孤独に文言(ことば)が成らずに、幻(ゆめ)の感覚(いしき)が固く立つまま思牢(しろう)の分野は活性して行く…。初老に漕ぎ出す不死の進化は身音(みおと)に歪める軽音(おと)など育てて、女性(おんな)の育児を揚々絶やせる旧い明日(あす)から児(こども)を排して、安い景色を漆黒(くろ)く語れる旧い千夜(とばり)は感覚(いしき)に成らずに、一人(ひと)の数多を地上に敷け得る「見積もり上手(じょうず)」を私運(しうん)に採った。奇妙に流れる固陋の一種は無刻(とき)の鳴るまま白雲(くも)に隠され、未知の寝音(ねおん)に歯軋りして生く浮浪の一種と同様にて成り、分厚(あつ)い宙(そら)から進化を象る不穏に名高い孤独の文言(ことば)は、幻想(ゆめ)の小町に上々懐ける未来(さき)の生憶(きおく)の温味(ぬくみ)でもある…。一女(おんな)の片手に一男(おとこ)が縛られ、夜目(よめ)の肴に男性(おとこ)が散るのは、向い合せの桜(はな)の寝音(ねおと)の〝潺(せせらぎ)〟から成る空虚に通じ、明日(あす)の孤独を二性(ふたつ)へ転じる「無想の奈落…」を枯渇へ遣った…。生死に刻める旧(ふる)びた柔裸(やわら)は無為の要局(かなめ)に未来(みらい)を先取り、安い形象(かたち)に未完(みじゅく)を配せた「幻(ゆめ)の人頭(どくろ)」は道理を報され、自滅(ほろ)びる熟慮は未来(さき)を識(し)らない不穏続きの生気を観る時、幻(ゆめ)の無様を自活(かて)に採るのは無闇矢鱈の節操だった…。一人(ひと)の生気を精気に観る内、日照り続きの具体(からだ)の跡には、幻想(ゆめ)の軟裸(やわら)が仄かに揺らげる未応の景色に基づき乍らも…、分厚(あつ)い奈落のその実(み)を迷わす不義の説明(しらべ)をそのまま呈して…、幻(ゆめ)の孤独と人体(ひと)の枯渇を運好く見積もる大手を振った…。分厚(あつ)い展開(ながれ)に空壁(かべ)を想わす不良続きの御託の目前(まえ)では、安い八頭(おろち)が身悶えしながら、天空(そら)の前から気牢(きろう)を費やし、幻覚(ゆめ)の初歩(しょほ)から未来(さき)へ始まる〝向い合せの愚弄〟を採った…―――。

      *

 ―――…流石に危ないから、塵箱(ごみばこ)に捨てようか否か俺は迷ったが何気に黙って捨てて仕舞い、その所為で老婆が怪我をした、俺には全くその様(よう)に思え、申し訳ない気持ちであったが、その高岸氏の「痛(いた)っ!!」と言う可成り大きい声に反応してその上司のような男が少々険相を以て犯人を問い詰めて居るように見えた為、俺は周りの者達に自分の失態が破(ば)れて、群れのルールにより浮上出来ぬ程のレッテルを貼られた上で虐められる事を恐れ始め、自分が犯人だ、と名乗り出る事を辞め、その高岸氏が怪我した時点から、一番最近にその塵箱(ごみばこ)の近くに居た別人がその名を上司に呼ばれて居るのを目にし、俺は仕方無く〝この場は、その別人の所為に成れば良い〟等と心中で言いつつ、同時に―即座に―直ぐ破(ば)れるやろうな…だってその別人は本当にあの硝子器を入れてないし、入れた犯人ここに居るんだもん。それに結構、プライド高そうだし…〟等と又思い返して居て、自分が捕まる事を恐れて居た。が、実際、俺があの硝子器を塵箱(ごみばこ)に捨てた現行・現場を見た(知る)者は誰も居ないし、犯人が俺に辿り着く可能性は無い、として、俺は案外平気を装って居た。怖がったが、そうして居る事が出来た。

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 無像に先取る宙(そら)の両眼(まなこ)は呼吸(いき)に挟める未来(さき)を剥ぎ取り、身欲(よく)に目掛けた一女(おんな)の末路を初春(はる)に象り文言(ことば)を失くせ、暗(やみ)の最中(さなか)に悪魔を牛耳る一夜(よる)の小敗地(アジト)は機嫌を忘れて、分厚(あつ)い展開(まなこ)に孤高を読み取る無為に過せた男性(おとこ)を識(し)った…。幻想(ゆめ)の無知から歯車(くるま)が追い掛け「孤踏(ことう)の音頭」にその身を成すのは、取手付(とってつ)かずの白亜(しろ)い生気が初春(はる)の息吹を感じて居ながら、幻(ゆめ)の周りの女性(おんな)の脚飾(かざり)は具体(からだ)知らずの無戒(むかい)を保(も)った…。幻想(ゆめ)の規矩から白衣(ころも)が破けて私闘に付き添う暗(やみ)の周囲(まわり)は、分厚(あつ)い空壁(かべ)から身塵(みじん)を束ねる苦労ばかりの栄華を気にして、未来世紀(みらいせいき)に落ち度を尋ねる旧い活気を静かに保(も)った…。幻想(ゆめ)の成果(さき)へと八股(やまた)を観るうち疲労に尋ねる不問の一座は、危険を歪める現代人(ひと)の緩みに〝悪意〟を忘れて無断を発され、白亜(しろ)い生気を具体(からだ)に仕留める不意の盲者(もうじゃ)は朗(あか)るく成れども、好(よ)くも悪くも未活(みかつ)の長(ちょう)には「柔い生命(いのち)」の灯(あか)りが在った。漆黒(くろ)く束ねる未開の労途(ろうと)に夜分を鎮めた連れ日(び)の果実は、寒い途切りの世界へ目掛ける蒼い果実の凡庸ばかりで、人間(ひと)の生果を宙(そら)に手向ける扶養の温味(ぬくみ)は定かでない儘…、女性(おんな)の感覚(いしき)が未来(みらい)を見守る不利の要局(かなめ)は意識を保(も)った…。夢遊に拡がる漆黒(くろ)い軟裸(やわら)は未開の知(ち)に咲く凡庸(ふつう)を掌(て)に取り、軟い奥地の真心(こころ)を見抜ける私牢(しろう)の兆しを鈍(くも)りに観ながら、端正(きれい)に盛(さか)れる浮浪の主観(あるじ)は消耗しながら世間を独歩(ある)き…、無知の日(ひ)の輪(わ)を潜(くぐ)って見抜ける脆弱(よわ)い要局(かなめ)を未来(みらい)へ負った…。男女(ひと)の要局(かなめ)が悪しきに酔う時「未完(みじゅく)の者」から悪義が放たれ、幻想(ゆめ)の文言(ことば)と美識(びしき)を仕留める不和の寝床を好(よ)く好(よ)く得ながら、女体に蠢く不通の主観(あるじ)は人煙(けむり)に盛(さか)れる行為を示し、白亜(しろ)い結界(かぎり)を余程に保てる無尊(むそん)の概句(おおく)を逸して在った…。漆黒(くろ)い盛(さか)りが夜毎に吠え往き「端正(きれい)」に集まる私頭(しとう)の容姿は、幻想(ゆめ)の言霊(こだま)を連日見抜ける固定に刻める不倫を呈して、白亜(しろ)い果実に身重を与(あず)ける広い宙(そら)には一体(からだ)が蹴上がり、呼吸(いき)を呑むのに余所を見て居る不浪の佳日を女性(おんな)に識(し)った…。男性(おとこ)の華美(かび)から涼風(かぜ)が現れ未知の肴を幻想(ゆめ)に追う時、不相に操る無尽の人陰(かげ)には脆弱(よわ)い人陰(かげ)など無純に仕上がり、幻想(ゆめ)の白亜(しろ)さに未活を統(たば)ねる未知の目下(ふもと)は光沢(ひかり)に流行(なが)され…、脆弱(よわ)い佳日を連日観て居る不毛の自然(あるじ)をじんわり識(し)った…。虚無に働く無想の許容(うち)から旧来独語(むかしがたり)が鈍(にぶ)く成り立ち、不意に撓(たわ)める未活の従途(じゅうと)は人物(もの)の思乱(あらし)に従順(すなお)に仕上がり、果(さ)きを見知れる不類(ふるい)の小敗地(アジト)は〝未知〟に引き立て主観(あるじ)を知った…。

      *

 …その家が夢の舞台であって、何故か人がわんさか居た。知る者と知らぬ者とが入り混じってわんさか居た。俺の元職場の気持ちの繋がらない同僚から、俺の両親(おそらく居たように思う)、永作博美扮する処の歯科女医(マッサージも出来る)、その永作博美に肖るようにして別の医療に携わる知人の女、俺の元職場の上司、結果的に俺に濡れ衣を着せられる事に成ったまるで一つの事に博識な白縁眼鏡を掛けた男、その他大勢である。

      *

 未完(みかん)の挿話(はなし)を我信(エゴ)に引き込み無重の圧力(ちから)で後光(ひかり)に安堵を観た時、一人(ひと)の腕力(ちから)に物憂い独走(はしり)が野獣を目掛けて盲進(もうしん)して活き、未知の私運(はこび)にその名を得たまま私動(しどう)に扮する我信(エゴ)の女性(おんな)は、幻想(ゆめ)の駆逐に追われながら未来(さき)を牛耳る色香(いろか)を彩(と)った…。美女(おんな)の気色に白亜(しろ)さが浮き出し、未完(みじゅく)の羽衣(ころも)を懐(うち)に観る時、無重に集まる脚力(ちから)の黄泉(いずみ)は未知に扮して悪魔を象り、幻(ゆめ)の一男(おとこ)の小手の許容(うち)から柔裸(やわら)に集めた無感の欠片(かけら)は…、幻覚(ゆめ)の宙(そら)から無味を失くせる浮浪(ふろう)の悪事を孤独に遣った…。幻覚(ゆめ)の内へと端正(きれい)に見定(さだ)まる不解(ふかい)に「堕ち生く哀れの輪廻(ロンド)…」は、大海(うみ)の側(そば)から大きく生育(そだ)てる不浪の縛りが空気(もぬけ)を感じて、陰府(よみ)の道から端正(きれい)に仕留める「未解(みかい)の音頭」を久しく保(も)った…。無機物から成る女宴(うたげ)の孤独に夜半(よわ)の褥が呆(ぼ)んやり翻(かえ)り、明日(あす)の旋律(しらべ)が無知に遊泳(およ)げる気楼の目下(ふもと)は概(おお)きく成った…。幻想(ゆめ)を精神(こころ)が宙(そら)に在るうち私牢(しろう)の読破は呆(ぼ)んやり象(と)られて、浮浪の牙城(とりで)を悠々活き尽(き)る不意の温度を凌いで行った。幻(ゆめ)と浮惑(ふわく)は無知を安転(ころ)がる不老・長寿(ふろうちょうじゅ)の水面(みなも)を欲しがり、明日(あす)の文言(ことば)を自由に掲げる幻覚(ゆめ)の思乱(あらし)は如何(どう)でも切なく、優しい身辺(あたり)に女性(おんな)を識(し)るのは精神(こころ)の独理(ドグマ)の栄養だった。比較され行く不装(ふそう)の一種が幻(ゆめ)と独創(こごと)を同じに観る時、換えの利かない旧い挿話(はなし)は曇寄(どんよ)り鈍(くも)れる震えを象り、白亜(しろ)い悪魔に弓を引き生く無活の初歩(はじめ)は腕力(ちから)に在った。漆黒(くろ)い秋空(そら)から無言に羽ばたく「思想」の結界(かぎり)は約束され活き、不装の連想(ドラマ)の未完(みじゅく)の辺りは意固地に敗けない不得手を気にして、一女(おんな)の具体(からだ)を頂戴して生く不論の華には生果が降りた…。起死に纏わる旧(ふる)びた寝言が旧来(むかしから)観た既憶(きおく)に寝そべり、頑なから観た端正(きれい)な葦(あし)には夜毎の女宴(うたげ)が用意され得た…。規則正しく役目を了(おわ)らす旧い寵児は暗(やみ)を報され、生憶(きおく)の内(なか)から身重を生育(そだ)てる幻(ゆめ)の着物は加減を識(し)り行き、虚空を舞うのは個人(ひと)の体裁(かたち)で好(よ)く好(よ)く働く文言(ことば)を操り…、男女(ひと)の枯渇を無闇に保てる酷い悪義は恰好(かたち)を避けた…。

 魔導(まどう)を象(かたど)る暗(やみ)の樞(しかけ)を無意味矢鱈に強調して活き、汗に悴む寂れた孤独は無幻(むげん)を掌(て)にした意固地を装い、気楼の意味から〝域〟を忘れて幻想(ゆめ)の砂暦(されき)は鈍々(どんどん)上乗り…、安い孤独に惑い始める一女(おんな)の自覚(かくご)は奔放だった―――。苦労して生く未活の小敗地(アジト)は鯨の眼(め)をした孤高を気にして、素人(ひと)の独理(ドグマ)を意味に与(あず)ける素人(ひと)の活き血を段々素通り、優しい独理(ドグマ)に虎を飼うのは自己(おのれ)の意固地の算段だった…。幻想(ゆめ)に始まる夢想の枯渇は男女(ひと)の人生(みち)から道理を引き抜き、脆弱(よわ)い兜を自体(おのれ)に被(かぶ)せる女性(おんな)の手に載る予兆を按じて、過去の繁みに孤独を培う気楼の手に依る未完(みじゅく)を問うのは…、幻覚(ゆめ)の傍(そば)から無根を取り出す幻想(ゆめ)の独走(はしり)の只中だった。過去に阿る未活の愛露(エロス)が私闘の旧巣(ふるす)を如何(どう)でも退(の)く打ち、寡の一体(からだ)は故郷を堕とせる旧い反義を古注(こちゅう)に据え遣り、虚空(そら)の身元が段々近付く不応の朝日の潔白等には、無頼に始まる旧い出足の身欲(よく)の在り処が散漫だった。桎梏(かせ)が成るのを夢遊に観るうち孤独の概(おお)くは「夢中」を知らされ、安い根堀りに幻(ゆめ)を託せる一女(おんな)の一糸(かたち)を推奨して活き、幻想(ゆめ)に破(ば)れ生く孤独の蝶には「旧い既憶(きおく)」の朝日が飛んだ…―――。

      *

 ―――…多くの者は、大体、家の居間に集まり、博識の男が何か他愛無い実験のようなものをして居たのを眺めて居り、その他は、自分のその時しなければ成らないとした仕事に就き、緩く軽やかに右往左往して居た。永作博美も始めその右往左往して居た者達の一人だったが、俺の歯が悪い事に俺と周りの皆が気付いた時点から俺の為に一寸した担当医のように成って、俺の為にいろいろと工夫を凝らした治療をしようと自分のテリトリーと俺の側(がわ)とを行き来して居た。俺はその永作博美歯科女医の、程好く慣れてテキパキとした手腕が嬉しく、また女特有の男を溶かしてくれそうな雰囲気の構築が嬉しく、又、周りの者がその歯科女医と俺とが成す場面を見てくれる事が嬉しかった。その永作博美女医に釣られて、永作博美女医に肖る女はよく俺の傍(そば)まで来て居た。

      *

 美声(こえ)に従う無情の日蓋(ひぶた)は白亜(しろ)い景色に憤慨しながら、漆黒(くろ)い夕日に独歩(あゆ)み寄るのは無屈の精(せい)から固展(こてん)を拡げて、日々の負い目に近付く不屈は日々の幻妄(ゆめ)から零れる無形(かたち)で、自由に阿る幸先(さき)の連想(ドラマ)は孤高に煩う思案を消した。幻想(ゆめ)の初歩(はじめ)に孤独が差すのは不尽(ふじん)に長け得る浮浪の結界(かぎり)で、明日(あす)の両眼(まなこ)に空転(ころ)がる空(すき)には私闘に迷える労苦が発(た)った。幻想(ゆめ)と精神(こころ)の空想(ロマンス)から観て空気(しとね)ばかりの暗(やみ)の殻には、一女(おんな)の感覚(いしき)が丁度好く立つ無限の日(ひ)の粉(こ)を瞬く間に消し、幻想(ゆめ)と翼(つばさ)の概(おお)きな一声(こえ)には夜音(ねおん)に関する一連(ドラマ)が在った。苦労ばかりに飛び退(の)く幻想(ゆめ)には不通の表情(かお)など間際に翻(かえ)して、白亜(しろ)い四季(きせつ)の文言(ことば)の許容(なか)から不論に始まる怒りは冷め往き、不意に阿る未活の小敗地(アジト)は乱声(こえ)に乱れる景色を保(も)った…。白亜(しろ)い古式に自由を想わす旧い独語(かたり)は幻見(ゆめ)を飛び去り、架空の両眼(まなこ)に四肢(てあし)を添え得る旧い独語(かたり)は無言を消し去り、分厚(あつ)い展開(ながれ)に羽音(はおと)を詠むのは一幻(ゆめ)の根暗(ねくら)と同じであった。幻想(ゆめ)の許容(なか)から未来(さき)を見守る不遊(ふゆう)の景色は流行(ながれ)を観た儘、幻想(ゆめ)の過憶(かおく)の未知に編むのは宙(そら)に届かぬ表情(かお)の辺りで、白亜(しろ)い四季(きせつ)に悠々気取れる「不快を想わす精神(こころ)の自活(かて)」には、暗(やみ)に逆上(のぼ)せる不倫の自覚(かくご)と悠々自適の弄(あそ)びであった。未来(さき)に空転(ころ)がる無屈(むくつ)の日(ひ)の掌(て)は暗(やみ)の孤独を無純に期し活き、白亜(しろ)い両刃(もろは)を孤高に発する浮遊仕立ての論議に組みして、分厚(あつ)い空壁(かべ)から自覚(かくご)を画(え)にした溶解混じりの純度を保(も)った…。

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 …俺は彼女から歯の治療を受けながら、〝俺も何かしなければ成らない〟等と思い、自分の左目の掃除を何時(いつ)も使用して居る耳搔きを以て始めた。すると、わんさかわんさか耳垢が取れて、目前のテーブルに拡げたティッシュの上には、目を見張るような俺の大きな耳垢が一杯溜まった。俺はその時、嘗て、耳垢が溜まり過ぎて耳が聞えなくなった母親の惨事を思い出し、母親もきっとこんな風(ふう)だったのかな、なんて考えて居た。そう考えながら俺はずっと耳掃除を続けた。掘っても掘っても耳内(みみうち)の壁にへばり付いた耳垢の感触が残って居て、詰められた耳垢の一部に耳掻きが当たるとその耳垢全体にその突かれた感覚が行き渡り、今突いて居るその耳垢が可成り大きい物である事に俺は自ず気付かされるのである。

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 孤独の人陰(かげ)から未婚が移ろい幻(ゆめ)の神秘ががたがた言う頃、身欲(よく)の四肢(てあし)は御託を振舞う無想の日(ひ)の掌(て)を保身に採った。初めから在る理屈の最中(さなか)は白亜(しろ)い毛筋(けすじ)に身悶えして行き、幻想(ゆめ)の四肢(てあし)を孤独に詰め得る夢想の無形(かたち)を暗(あん)に仕留めて、速い四季(きせつ)に孤独を射止める夢遊の空気(しとね)を一気に突いた…。男女(ひと)の御託を岐路に迷わす旧い要(かなめ)は密(みつ)に生く儘、下降に伴う茶色い日暮れは一人(ひと)の足出(あしで)を怒涛に採り活き、日々に纏わる愚弄の総てを幻想(ゆめ)の本意に仕留めて置くのは…、男女(ひと)の孤独の概(おお)くを惑わす旧い門出の仕来りだった…―――。女性(おんな)に纏わる精神(こころ)の暗(やみ)には未知に留(とど)まる景色を幻見(ゆめみ)て、所々に留まり続ける浮浪の景色に乱心(こころ)を観た儘、明日(あす)と今日とが純心(こころ)に置かれる夢想の揺らぎに通底して居る。一女(おんな)の揺蕩(ゆらぎ)に無口を装い「幻(ゆめ)の日暮れ」が都会を知る頃、手厚(あつ)い結界(かぎり)が夜半(よわ)を観るのは「無想・奈落」の界(かぎり)の間際で、透明色した精神(こころ)の許容(なか)では「一重(ひとえ)に咲き尽(き)る温度」が調い、逸れ続ける歩合の功(こう)には「幻(ゆめ)の年輩(やから)」が独走して居る…。不意に宿れる楔の文字には「幻(ゆめ)の空気(しとね)」に悶絶する内、精神(こころ)と未完(みじゅく)が分厚(あつ)く被(かぶ)れる不相(ふそう)の順序を肯定しながら、旧い一形(かたち)に行進して生く不浪の小敗地(アジト)を脚色して生く…。旧い連想(ドラマ)の頼り無さから司徒(しと)に集まる不快の生途(せいと)は、「分厚(あつ)き両眼(まなこ)」に開眼して行く不装(ふそう)の効果を無き者ともする、不理(ふり)の律儀を垣間見て居る―――。幻想(ゆめ)と乱心(こころ)の思想の精華(はな)には冷(さ)め冷(ざ)め凍える無口が跳び出て、幻想(ゆめ)と一心(こころ)と魔法の総てに「現行(いま)」を見取れる無暗(むあん)が閃き、返り咲き得る卑屈の勇者は人陰(かげ)に始まる「見積もり」だけ観て、男女(ひと)と栄華と鈍(くも)る両眼(まなこ)を、夢想の許容(うち)より吟味した儘、旧い自覚(かくご)に「白紙」を借り生く微動だにせぬ空気(もぬけ)を買った…。不論に見詰める孤独の自覚(かくご)が未知に努めた朝陽に生くのは、幻想(ゆめ)と神秘(ふしぎ)に孤踏(ことう)を統(たば)ねる〝未来世紀〟の阿りだけにて、明日(あす)の自覚(かくご)が傍(よこ)を観るのは不義に固めた未想(みそう)であった。―――…

      *

 …―――ティッシュの上に本当に可成りの量の可成りの大きなの耳垢を耳を掻きながら見詰めて居た所に、永作博美女医に肖る女が他者と何かふざけて居た拍子に俺の方に凭れて来て(正確には、俺が見詰めて居たティッシュに黒髪が付く位に体を凭れさせて来て)、「うわあ!」と声を挙げ、俺の耳垢の量と大きさに驚いた様(よう)だった。「辞めとき、あんまり近付いたら耳垢が付くで!」と冗談半分のように俺は言い、その女の事、永作博美女医の事でいろいろ考え、その二人や周りの者達に伝える事が結構沢山在るのを感じながらも俺は、今して居る耳掻き掃除に夢中に成ら去るを得なく、生来の性格が奏(そう)する、一つの事に尽力する癖への執着を、その時も俺は踏襲させられて居た。

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 精神(こころ)の中身を四方(よも)に亘(わた)らせ白雲(くも)の千切(ちぎ)りを大海(うみ)に見るのは、暗(やみ)の刹那に孤独を称する旧い千夜(とばり)の四肢(からだ)を象り、意味の咲かない旧い孤独は乱心(こころ)の内(なか)へと透って行った。成人(おとな)の女性(おんな)と成人(おとな)の男性(おとこ)が巨躯を眼(め)にして佇みながらも、辛(から)い四躯(しく)から文言(ことば)を迷わす旧い水面(みなも)は余韻を据え置き、鈍(くも)った両眼(まなこ)に四季(きせつ)を感じる旧い大手は独理(ドグマ)を配して、安い乍らに虚空に出で立つ不信の快無(オルガ)を女体(にょたい)へ遣った。追従(ついしょう)して生く朗(あか)るい両眼(まなこ)は虚空に燃え立つ旧巣(ふるす)を画(え)にして、男女(ひと)に概(おお)きな孤独の人渦(うず)には未知を報さぬ〝魔除け〟を据え保(も)ち、暗(やみ)の彼方へ呼吸(いき)を呑むのは初歩(はじめ)に幻見(ゆめみ)る活命(いのち)であった。幻想(ゆめ)の体躯で造語を象る「旧い暗(やみ)」での暴途(ぼうと)は悦び、明日(あす)に突き出る浮浪の自主(あるじ)は未活(みかつ)に延び生く苦労を鑑み、白亜(しろ)い四季(きせつ)に意味を仕立てる女性(おんな)の沃土は昼下がりに見て、精神(こころ)の目下(ふもと)で感覚(いしき)を掲げる不幸の自主(あるじ)は減退して居た。男女(ひと)に交わる一局(ひとつ)の文言(ことば)は幻想(ゆめ)の孤独に暴露を介して、虚空に呑み込む優しい主観(あるじ)は暗(やみ)の許容(うち)より思乱(あらし)を置き去り、昼と夜との総括ばかりは無言の日(ひ)の掌(て)を罵倒して居た…。真昼(ひる)の最中(さなか)に四季(きせつ)を忘れて減退して生く孤独の一夜(いちや)は、安い〝千夜(とばり)〟に四季(きせつ)を彩る夢想の体裁(かたち)を段々気取らせ、若い日(ひ)の手(て)に〝安み〟を奏でる浮浪の感覚(いしき)を掴んで在った…。幻想(ゆめ)と一人(ひと)との無想の孤独は「文言(ことば)」の結界(かぎり)を詠(うた)にする儘、幻(ゆめ)の未知から気楼を立たせる旧い梯子を断絶し乍ら、鉄に燃え行く孤踏(ことう)の女宴(うたげ)を虚空(そら)に観たまま演戯を買った…。無心に生育(そだ)てる不夜の一座は仔細を通じて泥沼から成り、分厚(あつ)い空壁(かべ)から枯渇を騙せる旧い平野(へいや)は理屈を退(しりぞ)け、不訴(ふそ)を置き遣る白亜(しろ)い感覚(いしき)の体の内(なか)には、意味を展(てん)じて無想を酔わせる旧い意識の独理(ドグマ)を採った。漆黒(くろ)い弄(あそ)びに通底して生く日中(ひなか)の小敗地(アジト)は人間(ひと)に採られて、旧(ふる)びた主観(あるじ)に未開を保(も)たない「幻(ゆめ)の主観(あるじ)」は宙(そら)へと歯向かい、幻想(ゆめ)と孤独の無知の信途(しんと)を精神(こころ)の傍(そば)から乖離させても、病める乱心(こころ)は無情を識(し)らない不足の正義を概(おお)めに観て居た…。

      *

 …永作博美女医は小声で、「はぁーい…(俺の首に濡れタオルを巻きながら)…こうしとくと大分(だいぶん)楽になりますよォ、これは生姜を温(あ)っためたもんだから、肩凝りにも良くて、歯痛も抑えられるわ」と小さな笑顔を以て話してくれた。耳垢の事には余り触れなかった。まるで、俺が困るからと、態と関心を寄せないようにも俺からは見えて居た。

      *

 夢限(むげん)の自然(あるじ)が両手を失い精神(こころ)に乱れる焔(ほむら)を観た時、幻想(ゆめ)への感覚(いしき)が体躯を拡げて、都会の飽きから乱心(こころ)を燃やせる浮浪の孤独を提灯(あかり)に置いた。精神(こころ)の何処(どこ)かで既憶(きおく)を齎す「幻(ゆめ)の自覚(かくご)」は独談しながら、器用に晴れ得る未知の概(おお)くは向かいに咲き生く不覚を識(し)るのは「明日(あす)の誉れ」の息衝きだった。夕(よる)に成らねば感覚(いしき)を介せぬ精神(こころ)の行方は生地を練り活き、水を想わす旧い自覚(かくご)は無理を通せぬ悦びから成り、分厚(あつ)い生憶(きおく)を寝耳に遣るのは歩行の人影(かげ)への額付(ぬかづ)きだった…―――。女性(おんな)の孤独を体に湿らす「旧い一体(かたち)」に費養(ひよう)を見ながら、白亜(しろ)い生絆(きずな)は一体(からだ)を表す旧い意識を文言(ことば)に投げ掛け、明日(あす)の生命(いのち)を訓(おし)える肴は〝人物(もの)の活命(いのち)〟の発狂だった。一幻(ゆめ)と孤独の枯渇を観た時「不意に想える過録(かろく)」の範囲は、意味を変じて一心(こころ)を養う扶養の感覚(いしき)の顕れだった。―――男性(おとこ)と一女(おんな)が孤高に発する未来(さき)の生憶(きおく)は初春(はる)を待ち活き、奇想に呼び得る感覚(いしき)の不得手を無為に運べる連想(ドラマ)を投げ掛け、白亜(しろ)い景色に意識を幻見(ゆめみ)る無為の孤独を柔軟にもした。幻想(ゆめ)の元(もと)から始まる連続(ドラマ)は無知の日下(ひもと)を段々和らげ、開拓して生く滑稽(おかし)な独理(ドグマ)を夢想に発する不倫を妨げ、分厚(あつ)い空壁(かべ)から漆黒(くろ)さを先取る不良続きの天(そら)を見て居た。人間(ひと)の枯渇を生命(いのち)に催す旧い正義は固く成り活き、相撲を取り生く二性(ふたつ)の制覇は男女(ひと)を先取る根拠に跨り、幻想(ゆめ)の許容(なか)へと酷く固まる「浮浪を失くせる目下(ふもと)の長寿」は、幻想(ゆめ)と精神(こころ)を無断に繋げる固陋の小敗地(アジト)をすっかり裂いた…。初歩(はじめ)に息衝く一人(ひと)の快無(オルガ)は無想に発する孤独を打ち上げ、〝ピカリ…〟と光った孤独の情緒を女性(おんな)の柔裸(やわら)へ非常に訴え、分厚(あつ)い途切りを奥に隠せる〝不倫続き…〟の小雨(あめ)を唄った…。一人縋りの夜半(よわ)の自活(かて)から左往に適する活命(いのち)を観た時、無残に飛び散る無言の悪魔は孤独を逸して独創(こごと)を吐き付け、幻想(ゆめ)に解(かい)する浮浪の乱心(こころ)を「研ぎ澄ませて生く未知」へ送った…―――。無謀に落ち着く日向談話(ひなたばなし)は幻想(ゆめ)と精神(こころ)の強靭味(つよみ)に従い、自己(おのれ)の残骸(むくろ)を情事(こと)に従え、暗(やみ)に従う未憶(みおく)の業者は洗練され生く孤独を買った…。我儘ばかりが横行して生く旧い信途(しんと)は小言を突き出し、幻想(ゆめ)の主観(あるじ)へ透り始める旧い行者(ぎょうしゃ)は小声を発し、行方知れずの女性(おんな)の小窓(まど)から身軽(かる)い調子が段々素通り、明日(あす)の肴を商いして生く不浪の人種が増え始めて居た。白亜(しろ)い毛物(けもの)に未完(みじゅく)が萎え出し暗(やみ)の空気(しとね)へ未活(みかつ)を問うのは、森羅万象…、分厚(あつ)い空間(すきま)に活命(いのち)を燃やせる不等の主観(あるじ)を玉手(たまて)に採って、白亜(しろ)い具体(からだ)を感覚(いしき)へ返せる不為(ふい)に息衝く独理(ドグマ)を識(し)った…。自体(おのれ)の無意味に漆黒(くろ)さが表れ暗(やみ)に先立つ不孝を観るのは、邪乍らに先人(ひと)を見限る素人気取りの仙人ばかりで、漆黒(くろ)い景色にどよめき始める幻想(ゆめ)の活命(いのち)は無言を着飾り、安い身重に乱心(こころ)を牛耳る不当の哀れを逆手(さかて)に取った…。真白(しろ)い空壁(かべ)には無残が活き出し分厚(あつ)い界(かぎり)の門戸を識(し)るには、幻想(ゆめ)の相場を網羅して生く旧い身活(みかつ)を採らねば成らなく、孤高の元気に枯渇を合せる不装(ふそう)の準備は宙(そら)へと返り、安い葦(あし)から太宰が死に生く不老の信途(しんと)の総崩れが要る。透明色した七つの小敗地(アジト)は未活に釣れ行く不渡りから観て、陽気な叔父との精神(こころ)の節度を暗(あん)に紐解き繋げるもので、安い〝家畜の美声(こえ)〟など聴いては、孤高に漏れ生く不当を煩い、幻想(ゆめ)と孤独の盲下(もうか)を知るのは幻(ゆめ)の吟味の挿話(はなし)であった…。旧く流行(なが)れる不相(ふそう)の幻(ゆめ)には女性(おんな)の魔の手が段々揺れ浮き、明日(あす)に遮る不倫の孤独を文言(ことば)へ換え生く見積もりさえして、安い精神(こころ)に「明日(あす)」が在るのは未知に迷える不快でもある…―――。自体(おのれ)の快楽(らく)から児(こども)が野晒(のさば)り安い暗(やみ)には暗空(そら)が拡がり、男性(おとこ)と一女(おんな)の孤独の結路(けつろ)は身近に集まる不当を働き、安(やす)まる神秘(ひみつ)を自体(おのれ)に飼うのは無形に固まる独理(ドグマ)と成った。幻想(ゆめ)の虚無から不論が跳び出る不快続きの妄想癖に(もうそうへき)は、安い精神(こころ)が都会を織り成す不平の独理(ドグマ)を連想(ドラマ)に化(か)え出し、幻覚(ゆめ)と活命(いのち)と自体(パン)の交響(ひびき)を無想に掲げる臣人(おみと)を投げ遣り、…幻視(ゆめ)の不惑へ自己(おのれ)を導く不解(ふかい)続きの身重の成果(はて)には、暗(やみ)に静まる夢想の限度が孤独に捕まる哀れを識(し)った…。幻想(ゆめ)の身近に落ち着く日(ひ)の掌(て)は孤独の空間(すきま)に律儀を見て取り、分厚(あつ)い要局(かなめ)を未知に投げ生く不和を象る無心を追い駆け、蒼い日(ひ)の掌(て)を好(よ)く好(よ)く飼うのは「無言」に吠え尽(き)る悪魔であった…―――。鏡の前では己が吠え出し、幻想(ゆめ)の人渦(うるか)は幻想(げんそう)だった…―――。

      *

 ―――…元職場の同僚(天然竹てんねんだけのような、行く行く愛想を示さず喜怒哀楽の焦点が合わない、家畜のような男)がそんな俺達と他のやんやと燥ぐ者達が居るそのキッチンへ遣って来た。狭いので「遣って来た」と言うより、不意と立ち寄った、と言う方が適切だった。その同僚は、日頃からそのがっしりした風貌と朴訥な性格とで少々周りの者達を威圧し、その威圧によって信望と服従心とを得て居た処が在って、その時でもその威圧感は役に立って居た様子で、周りの者達はその同僚を怒らせまいとして同僚の言動に注意を這わせて居た様(よう)だった。

      *

 無謀の日(ひ)の粉(こ)に悪態吐(づ)き生く不尊の両刃(もろは)は色褪せ乍らも、幻想(ゆめ)の空虚に正体(からだ)を揺らせる旧い神秘(しんぴ)は堂々巡りに、安い形に自己(おのれ)を仕留める不応(ふおう)の安堵を事毎相(あい)した。女性(おんな)の体裁(かたち)に独理(ドグマ)を渡せる不浪の億尾に孤独が譲歩し、幻(ゆめ)の虚無(なか)までその身を照らせる不利の景色は相葉(あいば)を捜して、最寄りの精華(はな)から幾多を馴らせる不義の進理(しんり)を微動だにせず、幻(ゆめ)へ解(と)け込む精神(こころ)の両眼(まなこ)は鬼畜を忘れて鈍々(どんどん)往った…。徒労に終れる不利の要局(かなめ)は財産目当ての執着乍らに、白亜(しろ)い気色に仄(ぼ)んやり見取れる旧い形にその眼(め)を遣る儘、文言(ことば)の進理(しんり)をそのまま射抜ける見様(みよう)の小敗地(アジト)に撃退する内、悪しき孤独を道理へ具える浮浪の行方を事毎追った…。漆黒(くろ)い気色に呆(ぼ)んやり立つまま幻想(ゆめ)の無傷はぐんぐん併さり、自体(おのれのからだ)の白亜(しろ)い気色に〝小敗地(アジト)〟を呼ぶまま煌々明るく、真白(しろ)い景色に泡好(あわよ)くばを観る無想の歯切りは何処(どこ)でも拙く、幻想(ゆめ)の光沢(ひかり)へ段々問うのは夢想の八頭(おろち)の逆転だった。幻(ゆめ)と乱心(こころ)が乱転(らんてん)するうち速い孤独は人体(からだ)を訪れ、幻(ゆめ)の枯渇を夢遊に遣るのは夜半(よわ)の空気の賛嘆成らねど、相(あい)する両眼(まなこ)の「孤独と自覚」は、自体(おのれ)の無知から遠退き始めた…。一女(おんな)の自覚(かくご)を幻想(ゆめ)に採るのは夢遊に浸らす入体(からだ)の神秘で、明日(あす)の芽に発(た)つ旧(むかし)の暗さは陰府(よみ)の舟出(ふなで)を朗(あか)るくした儘、旧い葦(あし)から現実ばかりを夢想に這わせる脆弱(よわ)い進理(しんり)は、過去の要局(かなめ)に厭(きら)いを唱える不相(ふそう)の現実(リアル)にそのまま咲いた…。幻想(ゆめ)と孤独の箴言ばかりが拙い虚無からその実(み)を乗り出し、暗(やみ)の成就をその掌(て)に安(やす)める不義の論理を身近に置けども、現人(ひと)の体裁(かたち)を脚色(いろ)に採り生く不信の正義に明かりを観た儘、既応(きおう)に引かれる無理の進話(しんわ)は安い行李に収められ得た…。自体(おのれ)の未知から両刃(やいば)が飛び出し「孤高の思乱(あらし)」が人影(かげ)に生くには、安く始まる無理の輪廻(ロンド)が不応に働く理解を求めて、矢庭に履き生く人の概(おお)さに孤高を求めて成らねば成らなく、安き自覚(かくご)を自己(おのれ)に届ける不理(ふり)の〝初め〟は東楽(エデン)には無く、分厚(あつ)く掲げる陽(よう)の日(ひ)の粉(こ)の無利(むり)を失くせる独走(はしり)を識(し)った…。精神(こころ)の何処(どこ)かで生理を煩い「幻(ゆめ)の傀儡(どうぐ)」に明日(あす)を観るのは、以前(むかし)に好く観た向日の朝陽の局(きょく)に並べる孤独と相成(あいな)り、安い旧巣(ふるす)を何処(どこ)へ押し込む〝向日の勝手〟に段々逝った。苦労ばかりを女性(おんな)に携え幻想(ゆめ)の概(おお)くを軒端に付けるは、暗(やみ)の襖に相槌打ち生く人間(ひと)の連呼に程好く成り立ち、幻想(ゆめ)の休みに愛想良く在る以前(むかし)の橿鳥(かけす)は、運好く留(と)まって人間(ひと)を省み、暗(やみ)に蠢く静寂(しじま)の様子を精神(こころ)逝くまで堪能して居た…。不利に名高い生憶(きおく)の理郷(さと)には「暗(やみ)の百足」が徘徊して居り、安い精神(こころ)を旧(むかし)に見送る脆弱(よわ)い鼓動(うごき)をその芽に生やして、幻想(ゆめ)の身欲(よく)迄その実(み)を掲げる夢想の既憶(きおく)をすんなり撃った…。漆黒(くろ)い人陰(かげ)から平々(ひらひら)零れる不快の従者は既憶(きおく)に成り落ち、幻想(ゆめ)と生憶(きおく)の無産の人海(うみ)には思考に片付く物腑(ものふ)を上啄(うわば)み、安い孤独を勇気に換え生く旧い舵から「羅針」が跳び出て、人間(ひと)に片付く夢心(むしん)の日(ひ)の掌(て)は明日(あす)の流行(ながれ)にその実(み)を打った…。生憶(きおく)に傾く男・女(だんじょ)の概(おお)さは「解(と)け得る空壁(かべ)」から旧(むかし)を想わせ、痩せた人身(からだ)を駆逐して生く幻想(ゆめ)の焔(ほむら)が活退(かったい)させ行き、白亜(しろ)い気色を群像(むれ)に強いるは「旧(むかし)の精華(はな)」での落穏(らくおん)だった。白亜(しろ)い感覚(いしき)に女性(おんな)が片付く幻想(ゆめ)の意固地は何に対(たい)せど、明るい〝何か〟を私欲(よく)に任せる漆黒(くろ)い唾棄から生気を盛(も)り出せ、一幻(ゆめ)の路(みち)から「昨日」を導く「紐の勇者」を減退させ得た…。意固地に独走(はし)れる「旧い瞳(め)をした軒端の隼人」は、幻(ゆめ)へ傾く人体(からだ)の体裁(かたち)を宙(そら)へ返せる不頼(ふらい)を保(も)ちつつ、暗(やみ)の宮(みや)から居心地好い儘「不応に翻(かえ)せる人の活命(いのち)」を、幻想(ゆめ)の未完(みじゅく)と「怱忙」乍らに〝苦しむ生命(いのち)〟の未活を識(し)った…―――。揮える身寒(さむ)さは体裁(かたち)を知らねど、安い八頭(おろち)の孤独は交響(ひび)き、人間(ひと)の体と活命(いのち)が息(いき)する白亜(はくあ)は呼吸の道理を許容(うち)から返らせ、旧い火照りを加減と観るまま身欲(よく)の主観(あるじ)は加減を知られず、幻想(ゆめ)の活(い)き路(ぢ)と孤高の活(い)き路(ぢ)は舗道を想わす生気を飼った…。男性(おとこ)と一女(おんな)の美声(こえ)の行方は一方成(ひとかたな)らずも感覚(いしき)に遠退き、人体(ひとのからだ)を小声に透せる〝不為(ふい)に始まる擬音の盲者(もうじゃ)〟は、安い静寂(しじま)に局(きょく)を観るうち不快の静間(しずま)に降(くだ)って行った…。蒼い過去(かこ)から不渡りして生く不相(ふそう)に名高い教師の面(つら)には、人体(ひとのからだ)が孤独を識(し)り生く不義の局(つぼね)をそのまま追い駆け、女性(おんな)の世界(かぎり)に極(きょく)を見貫(みぬ)ける白亜(しろ)い一夜(とばり)の孤独を以て、分厚(あつ)い書物の人の孤独を独気(オーラ)に従い読破して居た…―――。―――、白亜(しろ)い霧から男・女(だんじょ)が跳び立ち「安い空間(すきま)」の未活の長(ちょう)には、…幻(ゆめ)の調子が段々傾く不意に集まる蝶を引き出せ、暗(やみ)に象る不浪の宮(みやこ)は不憶(ふおく)の連想(ドラマ)にその実(み)を巡らせ、分厚(あつ)い静寂(しじま)に愉快を観るのは私欲(よく)に発(た)たない悪義と識(し)った―――…。

      *

 …―――同僚は〝何してますのん?〟とでも言うように、他の女には見向きもしないで俺に近寄った。俺がその時言った面白い事に受けた様子で、仰け反るようにして散々笑って居た。何時(いつ)もの事だった。この同僚は、何故(なぜ)か俺に優しい一面が在り、俺と仲の良い演劇を講じる癖が付いて居た様子で、その時も雰囲気を白けさせまいとして大笑いをした、そんな塩梅だった。周りの者も釣られて笑った。しかし俺は、あの耳内の壁に屁張(へば)り付いた耳垢の一部から全体へ酷く耳掻きの感触が歯痒く忘れられず、その後も何度かその感触を覚えて寝削(ねこそ)ぎ取りたい気分に苛まれ乍らも、滅多に無いその感触に感動を覚えて居た様子が在った。

      *

 孤独の水面(みなも)で遠くを見渡せ暗(やみ)の何処(どこ)かで虚空を詠む時、見知らぬ〝案山子〟は幸先(さき)を観たまま旧い気色を堪能して居た。漆黒(くろ)く削がれる無心の合図はとかく平和に坪を置き遣り、未完(みかん)の景色に揚々棚引く不義の合図を即して詠み取り、明日(あす)の旧巣(ふるす)を欲へ目掛ける不浪の小敗地(アジト)を誤魔化し続けた…。未来(さき)に置き遣る不良の手紙が未知に死太(しぶと)い人体(からだ)を踏む時、安い片手に未憶(みおく)を統(たば)ねる浮浪続きの発破を掛け遣り、幻(ゆめ)の真摯にその実(み)を置き遣る無理の孤独を相図(あいず)にしたのは、蒼い景色の延命(いのち)を図れる不良の生き血を分断して居た…。文言(ことば)の陰から無理やり灯せる旧い年輩(やから)は規則を識(し)らねど、幻想(ゆめ)の未知から孤独を連れ生く分厚(あつ)い空壁(かべ)には御託が騒ぎ、幻想(ゆめ)の無知から枯渇を採るのは無想仕立ての焔(ほむら)であった。一女(おんな)の弱味(よわみ)が姑息に成り出し「一幻(ゆめ)」の蜃気に乱心(こころ)を問うのは、人体(からだ)の芯から見真似を発する無知の深化の偶像だった。四肢(からだ)を借り生く二性(ふたつ)の孤独は文言(ことば)の人陰(かげ)から無性(むしょう)を喫して、自己(おのれ)を掠めた無知の初歩(いろは)を無断に透せる不倫を投げ掛け、分厚(あつ)い枯渇に幻覚(ゆめ)を追うのは、無心に統(たば)ねる屍(かばね)であった。…男性(おとこ)の栄華を横目で観ながら女性(おんな)の八身(おろち)は界(かぎり)を識(し)らずに、暗(やみ)の集成(シグマ)を悶々観て居る不意の景色にその身を惑わせ、乱心(こころ)に残せる紅(あか)い仕種は陰府(よみ)に気取れる旧(ふる)きを身に付け、併せ鏡に未能(みのう)を逸する〝不倫続きの身許〟を識(し)った…。「記憶違い…」が明日(あす)を掌(て)に取り、柔い浮世に孤独を観たのは、幻想(ゆめ)の独創(こごと)と葦(あし)の独理(ドグマ)が速い四季(きせつ)にそのまま通され、暗(やみ)に遺れる孤独の仕種は人間(ひと)の幻想(ゆめ)から〝身重〟を遠ざけ…、一幻(ゆめ)の感覚(いしき)に身悶えして生く旧い四季(きせつ)の独創(こごと)は相(あい)され、軟い女性(おんな)は〝合図〟を識(し)らない「釣れない論下(ろんか)」を謳って在った…。呼吸に躓く不足の身重は呼吸を画(え)にして片付き始めて、「幻(ゆめ)に集まる夜露」へ逃れる孤高の論者は身軽を知れども、易い体裁(かたち)に苦労を知るのは夢限(むげん)の論破に相当して居た。白亜(しろ)い四季(きせつ)は人間(ひと)から流行(なが)れて、虚空の感覚(いしき)へ変更され得た…―――。

      *

 ―――…夢から覚めて、俺は見た夢が正夢か唯の夢かを確かめようと、実際に耳掻きで左耳を掃除して見た。もしかすると、あの妙で、何とも言えない爽快感を期待出来る鈍(にぶ)い耳垢の感触を耳内で感じられるかも知れない、と期待したのだが、一向にその感触も期待も得られず、又右耳でも試して見たが同様であり、結局、唯の夢、と言う事が判明したのであった。

      *

 精神(こころ)の安歩(あんぽ)を条理へ採るまま無欲の規律(おきて)は乱心(こころ)を澄ませて、暗(やみ)の底から幻想(ゆめ)を立ち退く疲労の夜伽を放(ほう)って在った…。自己(おのれ)の無知から乱心(こころ)を紐解く夢遊の小敗地(アジト)は股間を彷徨い、旧い爺(じいや)に調子を合せる不論の刹那を欠伸に換え行き、幻(ゆめ)の孤独を悪しきに語らう「暗(やみ)の進理(しんり)」にその芽を観る時、自体(おのれのからだ)を按ずる〝目下(ふもと)〟は美声(こえ)を忘れて何処(どこ)かへ逝った…。幻想(ゆめ)の孤独と体躯を培う安い旧巣(ふるす)は逆(さか)さに振られて、蒼い雲から現行(ここ)を換え得る未知の生絆(きずな)を幻覚(ゆめ)に配させ、生く生く日の出る惨い安味(やすみ)は私闘に燃え立つ旧さに暮れ果て、幻想(ゆめ)の延びから発狂(くる)える男・女(だんじょ)は未知の総理(すべて)を鵜呑みにして居た…―――。孤高に暮れ生く無活の男・女(だんじょ)は〝私闘〟に感ける自活に流離い、暗(やみ)を肴に感覚(いしき)を繋げる「旧い政治」を何処(どこ)からともなく…、暗(やみ)の肴に発狂(くる)える男・女(だんじょ)を活きる画廊へそのまま据えた。孤独の紐から翌朝(あさ)にたえ得る未活(みかつ)の男・女(だんじょ)は耳垢から成り、暗い夜路(よみち)を堂々渡れる不装(ふそう)の孤独をそのまま捥ぎ取り、明日(あす)に盛(さか)れる孤独の真摯を根削(ねこそ)ぎ飾れる不倫を知った。普段から成る乱心(こころ)の病は幻想(ゆめ)と暴利へその芽を巡らせ、安い傘下にその実(み)を寄せ得る不幸の表情(かお)など純情(こころ)に投げ捨て、暗(やみ)を相(あい)する浮浪の自覚(かくご)は絶対零度をこよなく識(し)った。不満続きの未活(みかつ)の幻(ゆめ)から幻(ゆめ)と乱心(こころ)は身分を省み、幻視(ゆめ)に安まる自然の摂理は不感に阿る未来を仕留めて、幻(ゆめ)の夜半(よわ)から乱心(こころ)を透せる不相(ふそう)の自主(あるじ)を減退させ得た。幻(ゆめ)の鬼畜に女性(おんな)を宿せる旧い火月(かづき)は純心(こころ)の間(ま)に間(ま)に、幻(ゆめ)と律儀が交互に重なる人体(ひとのからだ)の家畜に陥り、不等に宿れる〝燈火〟ばかりは空虚に撓(たわ)める御殿を嘲り、…脆弱(よわ)い孤独に気性(きしょう)を荒げる不頼続きの夜半(よわ)さえ識(し)った…。白紙に撓める未来の概(おお)さは人間(ひと)の孤独に独理(ドグマ)を脱ぎ捨て、暗(やみ)を枕に悪態吐(づ)き生く「不相(ふそう)」を信じた夜霧を培い、小雨(あめ)の降る世に見境失くせた孤高の主観(あるじ)を絶対買った…―――。未遂

〈追回(ついかい)〉

 御手の許容(うち)から生憶(きおく)が飾られ旧い具体(からだ)が活命(いのち)を問う内、暗(やみ)に活き尽(き)る無想の肴(さかな)が孤独を画(え)にして人間(ひと)から成り立ち、脆弱(よわ)い乞食が世間に問うまま不覚を審(しん)じた好機を逸して、小言に問い生く男・女(だんじょ)の主宴(うたげ)は未活(みかつ)に埋れる瞳(ひとみ)を識(し)った。幻想(ゆめ)に乖離(はな)れる不思議の具体(からだ)を幻(ゆめ)の未知から上手(じょうず)に採り置き、安い〝逆手(さかて)〟は絶命(いのち)を知らずに都会の息吹を貴く見据えて…、暗(やみ)の主観(あるじ)に不覚を潰せる不浪の各地をそのまま幻見(ゆめみ)た。幻(ゆめ)の独創(こごと)を理屈へ並べて精神(こころ)の鬼畜は蒼差(あおさ)を切り抜け、脆弱(よわ)い撤廃地(アジト)を遮二無二相(あい)する旧い大樹(たいじゅ)が豪華に打たれて、黄昏(たそが)れ始める未活の男・女(だんじょ)が一幻(ゆめ)に白ける不論に生くのは…、不利を拝して不幸を掌(て)に保(も)つ新樹の葬儀に退屈して居た。未想(ゆめ)の永(なが)らう滑稽(おかし)な交響(ひびき)は自己(おのれ)の未知から紐を解(と)き付け、相(あい)せる両眼(まなこ)の両側から観て「安い空虚」を理性(はどめ)に刈るのは…、漆黒(くろ)い烏の生(い)け造りに観る私動(しどう)の空間(すきま)の経過(ながれ)に在った…。大口(くち)に呑み込む孤独の正味(あじ)には安(やす)む間も無く桎梏(かせ)が現れ、理想に解け込む不尊(ふそん)の自覚(かくご)と〝夜半(よわ)〟に適する私動(しどう)が遺棄され、幻想(ゆめ)の陰府(よみ)から担ぎを忘れた徒労の安堵を遂行して居る…。紅(あか)い人工照射(ランプ)の灯(とも)りに際して幻覚(ゆめ)の叫(たけ)びに活き尽(き)る独理(ドグマ)は、暗(やみ)の空間(あいだ)の経過(とき)へ際する男女(ひと)の独理(ドグマ)に結託して在り、生(い)き路(じ)を相(あい)する浮浪の孤独は「夜半(よわ)」に遺棄する透明だてらに、脆弱(よわ)い明日(あす)から後光(ひかり)が差し込む幻覚(ゆめ)の主観(あるじ)の極意と識(し)った…―――。経過(とき)の空間(あいだ)に暫く突(つ)っ立ち「暗(やみ)に対する無言」を探れば、安まる孤独が宙(そら)を観るうち胸中(むね)の震度は堂々拡がり、波紋を拡げて可笑しく嘲(わら)える夢想の日々から独理(ドグマ)を知り付け、幻(ゆめ)の交響(ひびき)に女性(おんな)を識(し)るのは夢想(ゆめ)の仕種の枯渇であった…。ながさくひろみは女性(おんな)に成りつつ、幻(ゆめ)の端(はし)にて概(おお)きく生育(そだ)ち、張り切る間際に人体(からだ)を凄める夢想(むそう)の進理(しんり)へ没頭して居た…―――。


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~耳垢~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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