第12話 義姉がちょっとだけエロい。

 夜の23時頃。

 隣の部屋から聞き慣れない音が聞こえてきた。


 なんだろ。

 俺は壁に耳をつける。


 「んっ、ん。……あん、ん」


 凛らしくない、甘ったれた声。


 これって。どう考えてもアレだよな?

 俺はベッドを凛の部屋側に押し付けて、聞き耳をたてる。


 5分ほどで「あっん。……れんくん」という少し苦しそうな声になって静かになった。しかも、なんか俺の名前を呼んでたぞ?


 ちょっと、あいつ大丈夫か?

 興奮しすぎて心不全とか。まじめに心配なんだが。


 俺に助けを求めていたのかも。


 凛がいなくなったらイヤだよ。

 凛がいない生活なんて考えられない。



 俺は本気で心配になってしまって、凛の部屋をノックしてみる。


 すると、ドスンと何かが落ちた音がして、「わぁぁ」という叫び声が室内から聞こえた。


 ほんと、部屋で倒れてるのかもしれない。


 「わりぃ。勝手にはいるぞ」


 俺は扉を開ける。

 すると、ベッドから落ちて毛布にくるまっている凛と目が合った。


 そして、俺と凛の間には、パンツが落ちている。例の脱衣所事件の時と同じパンツだ。

 

 ただし、あの時と違うのは、パンツが裏返しなことだ。そして、そのパンツは少し湿っているように見えた。


 「凛。おまえ、何して……」


 俺の言葉が終わる前に。

 俺は右側頭部に強烈な衝撃を感じた。


 一瞬、目の前に火花が散った。


 どうやら、化粧ポーチを思いっきり投げられたらしい。


 「おまえ。ふざけるなよ。死んだらどうすんだよ!!」


 すると、凛は毛布にくるまって、がるるーと獣のような顔で俺を睨んでいる。怒りにわなわなと震え、顔はプチトマトのように真っ赤だ。


 「しね! お前はいますぐ死ね! 死なないならわたしが殺してやる!!」


 そういって、手当たり次第に物を投げつけられた。俺は命の危険を感じて、凛の部屋から逃げ出した。


 俺が部屋からでて扉をしめると、ダダダと凛がこっちに駆けてきて、5センチくらい扉をあけた。


 そして言った。


 「この変態!! ありえない!! ほんとしね。そして生き返るなー!!」


 直後にバタンと扉がしまった。


 そして、しばらくすると何かを叩く音や「わぁぁ」という奇声が聞こえてきた。


 どうやら、俺は開けてはいけないパンドラの箱をあけてしまったようだ。


 明日の事を考えると頭が痛いけれど、明日の苦難に備えて寝ておくか。


 


 チュン。チュン。


 (楽しげに歌い合う雀の鳴き声)


 次の日になってしまった。

 俺は、憂鬱な気分で下の階にいく。

 

 

 階段を降りると、凛と目が合った。


 どんな誹謗中傷がくるんだろうと身構えていたが、リンは俺の顔をみると、どこかに行ってしまった。


 それから何度か顔を合わせたが、凛は俺の目を合わせようとしない。



 無視はきつい。

 無視は誹謗中傷よりきつい。




 それから3日経ったが、凛の様子は変わらない。


 心のどこかで俺は、いつものように2、3発殴られて罵倒されて終わるのかと思ってた。


 でも、もしかして、本気で嫌われちゃったのかな……。そう思うと、胸がぎゅっと苦しくなる。すごく寂しい。



 そして、それから1週間後。


 凛の様子は変わらない。

 同じ家の中だから、本当に気まずいし、辛い。


 今日は登校日とかで、凛は朝から外に出ている。俺は、どうしようかな。何もする気がしないし部屋で寝るか。



 そう思って階段を上がろうとすると、インターフォンがなった。


 誰だろ。


 モニターを覗くと女の子が立っていた。



 「突然すみません。わたしは一宮……。凛のクラスメートの、葉山ほのかといいます。蓮さんはご在宅でしょうか?」




 

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