第四章 兎児爺 3
蘭淑妃様の住まう青龍宮は、緑の
「失礼いたします」
女官に通され、長雲様に続いて広間に入室する。するとそこには既に蘭淑妃様のお姿があった。お昼寝中だったのか長椅子に横になっていて、私たちが来たのを見てゆっくりと体を起こした。
ふわりと結った髪とほっそりとした体つきが印象的なお妃様。体調が万全でないからなのか、衣服や装飾品は魏徳妃様ほどの豪華さではない。だが淡い色調の襦裙や柳のようにしなやかな手足、長いまつ毛とけだるそうな表情がなんとも言えず美しく、思わず目が
だが寝不足のせいなのか、目の下にはうっすらとクマができている。
「淑妃様、例の人形師が来ましたよ。さああなた、こちらへ」
女官の一人が私を呼び寄せ、近くで挨拶をするように促してくる。
「こ、こう……んぅで……す」
名を名乗ろうにも、緊張で口が回らない。そんな私を眺めながら、蘭淑妃様は不思議そうに首をかしげる。
「猫の、お面……?」
「申し訳ございません。この者は極度に人を怖がる性質ゆえに、お面で顔を隠さねば人前に出られないのです。会話も、私が補助させていただきます」
長雲様がそう説明すると、蘭淑妃様は明るい顔をされた。
「あなた、人間が怖いのですね。それならお話が合いそうです」
「……ぇうっ?」
思わず小さく声を漏らした。私と、同じ……?
「というか、他人が人間を怖がっている様子を見るのって、とっても面白いものですね」
「は、はあ……」
クスクスクス、と口元を
その魂は優しげな色をしているが、感情の霊気は不安定で、色とりどりの霊気の波が湧き出しているのが見えた。
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