第四章 兎児爺
第四章 兎児爺 1
朝晩の涼しさに夏の終わりを感じ始めていたある日のこと、また陛下からのお呼び出しがあった。
「はあ、どんなご依頼かな……」
着替えを済ませた私は工房の椅子に座り、
「だいじょーぶ
私を落ち着かせるようにそう繰り返しながら、毛毛は気持ちよさそうに丸くなり、目を
「すーはー、すーはー」
深呼吸して息を整える。
心をおだやかにー、おだやかにー。
「よしっ」
気合を入れ、猫のお面を
緊張しすぎて手の小刻みな震えが止まらない。
「陛下、
「面を上げよ」
おそるおそる顔を上げる。陛下は今日も広間の椅子に腰かけ、陽の霊気をまばゆいばかりに放っておられる。
──うっ。
やはり陛下の霊気は強い。普段霊気が特別に薄い長雲様とばかりお会いしているせいか、陛下の霊気が余計に強く感じる。
「鈴雨、先日の美女を
「あ……がとぅ、ござぃます」
小さな声でそう答え、再び頭を下げる。自分の作った人形を褒められた喜びに、思わず口元がゆるむ。特に、陛下が人形の襦裙の柄をお褒めくださったことが
「それでな、またお前に人形作りの依頼をしたいのだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます