第三章 徳妃様の瞳 4
麗冰……? どこかで聞いたような……。
そうか、確か前に食堂で、女官たちに
彼女が麗冰だったのか。
「聞こえなかったの? お面を外せと言ったのよ。手で押さえていては外せないでしょ!」
彼女の中から湧き出す
「うう……」
怖い! それに腕の力が強すぎる!
で、でも私だって、幼い頃から土を掘ったり
「ぐぐぐ……」
「ちょ、いい加減手を放しなさいよ!」
「む……り」
「放せって言ってんでしょ!」
とその時、背後から声がかかった。
「お前たち、何をしているのだ。騒がしい」
顔を上げた麗冰が、ハッと息をのむ。そしてすぐに私から離れて後ずさり、地面に膝をついて頭を下げた。
「
なにがなんだかわからないまま、後ろを振り向く。
そして私も、思わず息をのんだ。
──長老様の部屋に飾られていたお人形みたいに、美しいお妃様!
すらりとした長身の体を強調するように、肩から垂れる
人間離れしたそのお姿は神々しくさえあり、思わずぼーっと
彼女は幾人かの女官たちに囲まれていて、そのうち一人が前に進み出て私たちを
いけない、と気づいてすぐに膝をつき、頭を下げる。
「魏徳妃様の住まう白龍宮の前で、取っ組み合いの
女官にそう一喝され、隣の麗冰が慌てた様子で言い訳を始める。
「申し訳ございません。この怪しげな者に声をかけたところ、名も名乗らず、お面を取ることも拒否したものですから、つい」
「この者は……」
ゆっくりと誰かがこちらに歩み寄ってくるのと同時に、ふわりと柔らかな甘い芳香が漂った。装飾品をたくさん身に着けているからだろうか、一足歩くたびにシャランシャランと音が鳴る。
「顔を上げよ」
「……はい」
小さな声で答えながら、おそるおそる顔を上げる。するとあろうことか魏徳妃様が、私に顔を近づけていた。
「そなた、名はなんという?」
「こ、こ、こ」
ガクガク震えてまともに声が出てこない。しかしここで名を名乗ることもできなければ、正一品の徳妃に無礼を働いたとして処罰が下るかもしれない。
頑張って声を振り絞るが、極度の緊張で喉がしまり、声が出てこない。
「ぅ、り、ん、う」
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