第三章 徳妃様の瞳
第三章 徳妃様の瞳 1
夕刻、
卓上には酒に合いそうな珍味が並び、陛下は既に一人で
「長雲、でかしたぞ! あれはホンモノの
陛下はごきげんな様子で、
酒で人生を失敗したくない。それが長雲の考えだ。彼は生きていく上で、なるべく危険性を排除して生活をしていくことを信条としているようなところがある。
その表情はいつも通り、覇気がなく幽鬼のようだ。
「私を
「それでも大事な任務だからこそお前に任せたのだ。余にとって、
「そんなことをすれば陛下の信頼が地に落ちますよ。やる気のない
陰鬱な顔を近づけて念を押す長雲に、陛下はため息を漏らす。
「己の出世話を断るやつなんか、お前くらいなものだぞ……。まあ、左丞相は冗談だから安心するといい。それより今は、後宮の問題があるからな」
「証拠を
「ああ、国家の安泰が脅かされるような事態になりかねん。そもそも先代の無駄遣いが
「はい」
相変わらずの無表情で、長雲はうなずいた。大国を治める
「まあ、あれだけの
「命を……」
また一層、瞳の色を暗くした長雲の肩を、陛下はポンポン、と励ますように
「まあそう暗い顔をするな、長雲。あんなかわいらしい猫面美少女と一緒にいられるのだから、良いではないか」
「猫面美少女、ですか」
「ああ、そうだ……。あれはな、お面があるから、いい。想像を
「陛下には既にお美しい
眉をひそめた長雲にそう
「わかっておる、わかっておる。余はあれの神がかった特別な力にも、その技術力にも、敬意の念を抱いておるのだ。妙な心配をするな!」
ガハハハと笑いながら、陛下はまた酒をあおった。
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