第二章 阿福人形
第二章 阿福人形 1
「おえぇっ」
そこは城というよりは街のような広さで、碁盤の目のようにきっちりと区画整理された土地に
「ここは
「は、はい……」
そんな外城の中で最も人が集まっていたのは、巨大な市場だった。
その市場では、多種多様な食品、布、装飾品、薬、それから遠い異国の美術品など、様々な業者が店を開き、人でごった返していた。
「うえぇ……」
霊気に当てられ吐きそうな私にかまわず、
「これからもう一つの門をくぐるとその先が内城だ。内城には皇宮や、お前が住むことになる後宮がある。
「はい……おえぇっ」
「
膝の上に乗っている
うごめく霊気で視界はゆがみ、匂いがまざって気持ち悪い。
背中を丸めてうずくまる私に、長雲様は言った。
「もう少しの辛抱だぞ。人混みもこのあたりまでだ」
「……ぇ?」
「人が多いのは市場の周辺だけだ。内城には基本的に、皇族の関係者か官吏しか入れないからな」
長雲様の言葉の通り、次第に内城へと続く大路を歩く人の数は減っていった。通りすがる人々もどこか洗練された雰囲気のあるお役人様ばかりになった。
ふぅ、と息を吐く。このくらいなら、
「あれが栄安城内城の正門、大龍門だ」
長雲様が前方を指さす。
顔を上げると大通りの先に、龍の飾りがあしらわれ、朱色に塗られた巨大な門が建っていた。その門の両側には、見上げるほどに高い城壁が延びている。
「す、ごい」
私は気分が悪いのも一瞬忘れて、その光景に見入ってしまった。
手続きを済ませて大龍門をくぐり抜けると、ひときわ大きな建物が見えてきた。
ここはまだ後宮ではないのだろうか? 首をかしげた私に長雲様が言った。
「あれは皇宮だ。今からさっそくあちらに向かう。陛下から謁見の許可が出たのでな」
「もう、です、か……」
ようやく吐き気が収まったばかりで、まだ何も心の準備ができていない。
「まあそう緊張することはない。お前は陛下の話にただうなずいていればいいだけだ」
「え、え……」
そう言われても、緊張しないわけがない。
ただ、この現実離れした壮麗な栄安城の中で、私の意識もふわふわと現実から離れていくような感覚がしていた。
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