パンドラの箱は開かれた

当時東寺

プロローグ

 あの日俺は天才になった。

 それでも俺の取るべき選択は至ってシンプルで二つの諦めだった。

 かっこいいを諦めること。

 天才を諦めること。


 固執した結果確かに俺は他とは違う何かになっただろう。

 けどそれは誰にとってもプラスにはならなかった。


 それでもここ最近は何者かになれた気がしてそれなりに楽しかった。

 夜風に当てられながら、遠くのマンションの光を見つめてぼんやりとこれまでを振り返った。

 それはまるでこれから自ら終わらせるこの命のエンディングのように。


 天才天才天才天才天才天才天才天才天才天才天才天才。

 やはりまだ捨てるには勿体なかった。

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