寝てもサメても
秋乃晃
遭遇
目が合った瞬間にびびっときた。
ボクは今日、この子を連れて帰るためにIKEAに来たのだと。
「パパ!」
日曜日。朝の特撮番組を見終わってぽけーっとしていたボクは、首根っこを掴まれて助手席に座らされた。家具なんて見ていてもつまらない。だから、目的もなくふらふらと売り場を歩き回っていて、――運命的な出会いを果たした。
いちばんかわいいサメのぬいぐるみを抱きかかえてパパのところに駆け寄る。けれども、パパは無情にも「戻してきなさい!」と言い放った。周りの他のお客さんがびっくりして、こちらを見る。
「で、でも、」
「わかったわかった。今日はやめよう。な?」
そう言ってパパはボクの持っていたぬいぐるみを取り上げると「すいません……」と店員さんに渡した。
それからパパはボクを肩車してレストランまで連れて行く。一個百円のホットドッグが三個、ボクの前に並べられた。ホットドッグを一度に三個も食べたのは初めてだ。
サメの記憶はホットドッグに上書きされて、車に乗る頃にはサメのことをすっかり忘れてしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます