魔王の祝福を間違いで受けてしまった賢者

犬時保志

第1話 プロローグ

 今生魔王は穏健派との事で有ったが所詮しょせんは魔王、積極的に侵略行為を行わないだけで魔族軍の侵略戦争は続いている、残念な事に人類との共存は穏健派魔王でも不可能であった。

 長く続いた魔族と人類との戦いが終ろうとしている。


 魔王軍四天王を順に倒して行き、ついに魔王城に私達は乗り込んだ。


「魔王軍との長い戦いに、これで終止符が打てる!皆、最後の戦いだ!死ぬなよ!」

 勇者アスカルが振り返り、私達に声を掛けた。

 何かと暴走するアスカルを上手く制御する、聖騎士ストフェルが無言でうなずいた。

 賢者の私ケンジャと聖女ウインも頷く。


 バレるのは早い方が良い、賢者である私の名前はケンジャ、私はケンジャ男爵家の嫡子として生を受けた訳だ、おまけに両親は私をダイと名付けた。

 笑える!私のフルネームはダイ・ケンジャ。

 この名前のため、私は必死の努力で55歳にしてやっと賢者になれたが、苦労が顔に出てしまい森の賢者オランウータン顔で醜男ぶおとこだ。

 従って、うら若き美女三人と共に5年の永き戦いの間、全く浮わついた話が無い。


 魔王の居城に、人間ごときがたどり着けるはずが無い、との慢心であろう守りは手薄で私達は魔王の王室に楽にたどり着いた。

 ここまで、数の暴力魔王軍に対し、騎士団傭兵団冒険者達の決死の戦いで多くの英雄が没して行った。

 無念だったで有ろう、彼らの意志を引き継いだ私達勇者パーティーは敗北する訳には行かん。


 先手必勝!私は魔王に三重バインドを掛け、聖女はバインドに聖属性を付与した。

 勇者が飛び込み、魔剣を持った魔王の右腕を切り飛ばし、聖騎士は聖短槍せいたんそうを深々と突き刺し魔王の心臓をつらぬいた。

 5年の修羅の旅で4人の戦いは迅速だ。


 聖属性の三重バインドの効果、難儀な魔王の再生能力を封じている、これ無くして魔王の完全討伐は有り得ない。

 魔王は憤怒ふんぬの形相で流れる己の血を左手に受け、素早く魔法陣を空中に描き呪いを込めて飛ばして来た。


「え?勇者でも聖騎士でも無く、私に?」

 断末魔だんまつまの魔王は私を睨んだ!!


 呪いの魔法陣は勇者聖騎士を巧みに避けて、私に向かって来た!!

❰きさまぁ!許さん!!きさまだけは道連れにしてやる!!!❱

 魔王の咆哮ほうこうに反応し、咄嗟に私は解呪結界を前面に貼った。

 魔王の呪いを込めた魔法陣は、私の結界を何も無いかの如くすり抜け私にまとい着いた!!

 圧倒的パワーを受け、私は後方に吹き飛ばされた。

「「「賢者!!!」」」

 三人の悲鳴の中、駆け寄る足音を感じながら私の意識は薄れて行った。

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