Fランク人類最弱の二類覚醒者は、ババですと言われた学習スキルでむしろ無双する。

燦田黒主

第0話 誰かが見た世界

 子供のころ夢に描いた世界の姿は、幻想的で希望の景色だった。


 しかし、ひとたび社会に足を踏み入れれば、人間というものがいかに欲深いかを思い知らされる。


 息苦しさと胸を引き裂くような痛みの中で、本当の自分を見失う日々。少しずつ少しずつ私の精神は穢されていった。


 清らかさは常に誰かに利用され、抜け目なく欲を追う者が力を握り利益を貪る。どんな小さな共同体でも利を求める者は無垢な新人から容赦なく奪い尽くす。

 

 ましてや、それが巨大な社会ともなれば、その利得は巧みに隠蔽され、底知れぬ闇に紛れてしまう。

 

 やがて私がその醜さに慣れた頃、世に大きな変革が齎された。


 SNSなどで自らが情報を選べるフェーズに踏み込んだのである。次なる時代は資本よりも人々の評価こそが物を言うと囁かれていたのは、少し前の話題である。私にもその意味が理解できそうだった。

 

 貧困が深刻な場所から、人々は豊かさを求めて立ち上がった。真実を掴み取る術を手にした民衆は、世界各地で巨大な抗議やデモを巻き起こし、それまで秘匿されていた数々の不正や歪みが白日の下に晒されたのである。


やがて民衆が本当の意味で平等に力を持つ時代が訪れる。評価が社会を動かし、世界が浄化されていくのだと感じていた。


 そんな予感が私だけでなく誰の胸にもあった。


 あらゆる権力は崩壊し、人々の豊かさの上に新しい社会や新しい秩序が生まれる。


 

 そして、ついにそれは現実と……………………ならなかった。


 

 新たな世界の到来を目前に

 

 世界は「ダンジョン」と「モンスター」の脅威に晒された。


 

 突如としてモンスターという脅威に晒され、静かに滅びへの鐘が鳴る。


 私は、私を穢した彼等のことを思い出す。でも、この時は嫌な気分はしなかった。


 日本は自給自足への備えが不足していた。他国よりも遥かに深刻な食糧危機に見舞われた。日本人が知らない世界の予想は的中し、モンスターによる被害を大きく上回るくらいの人数が餓死した。

 

 奇しくも、前時代の形をそのままに、事実は政府に隠蔽され、日本の危機を救った覚醒者と冒険者協会の美談だけが人々の記憶に残る。






 


―― 8年後 ――

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