ゲーム的異世界
天星 水星
第1話
「異世界転生とかマジかー……」
教会で祝福を受けている同い年の子供を見て独りごとを言う。今日は5歳になる子供が教会で祝福を受ける日だ。そこで様々な加護を受け取ることができる。周囲の親子が話していたのを盗み聞きしたが、オーソドックスな剣士の加護や魔法使いの加護から、建築士や薬剤師、果てには管理職の加護なんかもあるらしい。
管理職の加護は数年前に出て珍しくて記憶に残っていたようだ。他にも珍しい加護があるようだ。
そして俺にも珍しい加護が発現した。さらに同じくらい珍しい、複数の加護が発現した。
まず1つ目は転生者の加護だ。これには前世の記憶が思い出せること、さらに前世で持っていた加護を発現するとある。といっても知識として思い出せるだけで、具体的には思い出せないが。例えば前世の名前や家族の名前なんかは思い出せない。だがなんとなく加護を得る前と比べて、頭の回転が良くなった気がする。隠し効果か?
次に2つ目は分身の加護。これは2人以上に分身することができる。シンプルで分かりやすいが強い。数は力だ。
そして最後は供物の加護だ。これは供物を捧げることで対象を強化できるとある。例えばだがこの世界には経験値がある。これを捧げることで対象を強化できるのだ。
そして多分だがこれが前世の時に持っていた加護だと思う。といっても前世では加護が一般的ではなかったし、調べる方法もなかった。それでも一時的に体力を消費して握力を強くする、なんてことはできるとわかっていたからたまに使っていたみたいだ。
「まさか前世でも加護があるとは。法則が違うから加護はないと思ったんだけど」
この世界と前世の世界では法則が違う。例えばだがこの世界では病気がない。あるのは毒状態や麻痺状態なんかのゲームのような状態異常だ。
他にも排泄物がなかったり、HPやMPがあったりする。他にも成長が速かったりなど上げればきりがない。今まではそんなこと気にならなかったけどどうなってんだ?
そして極めつけはこのメニュー画面だ。
ステータス
装備
アイテム
スキル
意識するとこの画面が現れる。試しにステータスを開いて見る。
ハイドラ 男 5歳
レベル 1
状態 正常
使用可能武器 剣
使用可能防具 布
属性 無
HP 100/100
MP 100/100
STR 10
INT 10
VIT 10
MIN 10
AGI 10
DEX 10
ステータスポイント 0
スキルポイント 10
所持金 1000Z
加護
転生者 分身 供物
こんな感じで現時点での情報が見れる。そしてこのステータス通りの力をいつでも出すことができる。前世なら体調の不調好調があったが、この世界ではそんなのは無い。
続いて装備を見よう。
頭 なし
胴 始まりの服
腕 始まりの服
腰 始まりの服
脚 始まりの靴
右手 なし
左手 なし
こんな感じで表示された。どうやら『始まりの服』はセットになっていて、胴、腕、腰の欄を使うようだ。そういえばこの服を洗った覚えがない。というか服を洗う文化がないような。というか汚れるのかこの装備は?
なんとなく気になったがアイテムだが、これはまあアイテムボックスだ。一応容量があって、1000×1000のアイテムが9999個入れられる。まあ埋まることはないだろう。ないよな?
そしてスキルだ。これが一番肝心といっても過言ではない。まず大前提だがスキルはステータスにあったスキルポイントを使うことで使えるようになる。そして取れるスキルは人によって異なる。正確に言えば加護と才能によって異なる。
といってもわかりやすいが。剣士の加護なら剣に関係するスキルが取得できる。さらにステータスの使用可能武器欄にあった関係のスキルを取得できる。これは才能だ。そして属性にあったスキルも取得できる。
そして俺の場合だが、まず転生者の加護。これには取れるスキルがない。だから考えなくていい。
次に分身の加護。これには分身の数が上がる『分身上限増加』、分身できる時間が増える『分身時間増加』、分身のクールタイムが減る『クールタイム減少』などなどいろいろある。
最後に供物の加護。目につくのは、HPを捧げるときの代償が減る『HP代償減少』、そのMP版の『MP代償減少』だったりがある。どうやら『供物』はHPやMPも代償にできるようだ。
それで後は剣や布鎧や無属性のスキル関係があるのだが、実は他にも槍盾弓杖の武器スキルや軽鎧と重鎧、各種属性のスキルが見れる。だがスキルポイントを振ることはできないようだ。
そして見れる理由だがどうやら供物の加護のせいのようで、経験値を犠牲にすることで各種適正を増やせるみたいだ。
「供物の加護はメニューにも干渉できるのか」
もっとじっくり見たかったが、どうやら続々と周りの子どもたちが自分のステータスを見終わったようで帰っている。だから俺も同じように一旦切り上げて帰ることにした。
「さて親にどこまで言うべきか」
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