青年期の夏の思い出

羽弦トリス

第1話シーブリーズ

夏と言えば制汗剤。

僕はドラッグストアでシーブリーズを買ってきて、朝、汗かくであろう所にべちょべちょ塗りたくる。

匂いは「石けん」。

シーブリーズは、この匂いが一番好きだ。

16歳の頃から、このシーブリーズは使用している。

と、思えばシーブリーズってロングセラーなんですね。

この匂いを嗅ぐと夏の記憶が蘇る。

彼女と、イチャイチャする時は汗臭いと嫌われるので、シーブリーズを塗りたくって、部屋でイチャイチャしていた。


彼女は彼女で、何かの制汗剤だろうが女の子の匂いは素敵だ。

初めて異性とキスしたのは、16歳だった。

嫌味の無いキス。

あの頃は夏でも、手を繋いでいたなぁ。

彼女は決まって左側で、彼女が掴んだ左手は良い匂いがした。

安っぽくて申し訳ないが、シーブリーズを朝塗る時、いつもあの時の彼女の顔を思い出すが、写真も何も残っていないので、段々忘れてくる。

卒業アルバムは持っているが、卒業アルバムの彼女の顔の写真は芋だ。


匂いで思い出す記憶ってありますよね?

好きなのは、蚊取り線香の匂い。

あの匂いは、田舎の夏の記憶がどんどん出てくる。

夏の匂いって、直ぐに嫌味が先走るが、制汗剤や蚊取り線香の記憶は良い思い出しかない。

彼女との初めてのキスの時は、順序を間違えて先に上の服を脱がしてしまった。

そして、彼女が言う、

「順序が逆でしょ?」

もうあれから30年が過ぎているので、女性とキスしたいとか、もう、性の対象として捉えていない。

もう女は、嫁さんでこりごりだ。


明日も使うシーブリーズ。

制汗剤としては、かなり優秀。

思い出に浸りながら、執筆してます。

あの時の彼女も、今はオバサンになっている事だろうが、たまには僕を思い出してくれてるのかなぁ?

別に興味はないが、初恋の人って心に残るよね。

9年間付き合っていたので、毎日ケンカ。

でも、別れた時はショックだったなぁ。

シーブリーズは青年期の匂いとして認識している。


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