07 寂しくて何もない部屋

「あ、もう22時だよ?

未成年は帰らなきゃいけない時間じゃない〜?」

「嫌です」

「てんりちゃんは我儘だね〜?

お姉さんのお家、来る?」

「‥行きたいです」

「あはは、いいよ。ついてきて。」


お姉さんはクスッと笑い、

私の手を握りしめ、歩き出した。

彼女の手が暖かくて安心する。


「ほら、着いたよ〜」

「マンションなんですね。一緒です」

「一緒なんだよ、全部〜」

「‥嬉しいです」


お姉さんは照れ臭そうにした。


「‥もう、この話おしまい!」


鍵穴に鍵をさしこみ、扉を開く。

扉が開いた先は、ダンボールだらけだった。


「‥どう思った〜?」

「どうもこうも、いつも見てる景色だなって」

「君の家もダンボールだらけなんだね〜」

「掃除してくれる人がいないので」

「掃除の仕方が分からないだけだと思うよ。

特別に、お姉さんが教えてあげよっか」

「掃除できるのに、

なんでこんなにダンボールだらけなんですか?」

「気力がないだけだと思ってくれたまえ〜」

「なるほど…」


靴を脱ぎ、部屋に入ると、

ダンボールが沢山あるだけで他は綺麗だった。


「ほら、言ったでしょ?」

「ダンボールさえ片付ければ、

めちゃくちゃ綺麗になると想うんですけど‥」

「君もそう思う?

私もそう思ったんだけど、めんどくさくてね〜」


「あ、そういえばさ、今日泊まるの?」

「良いんですか?」

「全然いいよ」

「じゃあ、遠慮なく、泊まらせていただきます」

「かしこまりすぎ〜」


お姉さんは、冷蔵庫を開き、

ペットボトルを取り出した。

ペットボトルの蓋をとり、グラスに注ぎ込む。


注ぎ終わると、ペットボトルを冷蔵庫に戻した。

グラスを慎重に机に置く。


「お茶、飲める?」

「毎日飲んでます」

「私も〜」


「なんだか、眠くなってきちゃいました」

「肩、貸したげる〜」

「そうします」


お姉さんの肩に寄りかかる。

お姉さんに触れていると、やっぱり落ち着く。

自然と眠くなり、目を閉じた。


「おやすみ、てんりちゃん」







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