縄文人の系譜 運命的と人間的 V.2.1

@MasatoHiraguri

第1話 運命の民 アメリカン・インディアン

 偉大な精神文化(文明)を残したアメリカン・インディアンは、運命の民であった。人間的に濃い・薄いとか、存在感がある・ないではなく、神の目線・運命という観点から見て、濃い・存在感のある人間・民族でした。


→ ポーラ・アンダーウッド、星川 淳訳「1万年の旅路」翔泳社https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784881356074

→ ミッシェル・ピクマル「インディアンの言葉」 紀伊國屋書店https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314007375


<引用開始> 

   私たちの西洋では、文明の独自な価値や重要性を、その文明が残していった遺物の大きさで計ろうとしてきた。そこでは、記念碑や教会の建物や城砦などが価値の基準になってきたのである。このような判断の基準にたてば、インディアンの文明などには、大した価値を見いだせない、ということになるのかも知れないし、またその文明がたとえ滅び去ってしまったとしても、そんなことは「世界史」のささいな挿話にすぎない、いう扱いを受けてしまうのかも知れない。

  しかし、この人々は、徹底的に征服しつくされる以前に、たくさんの言葉を残しておいてくれた。私たちが今日手にすることができるのは、そうした声のいくつかの断片にすぎないのだが、それらの断片がかいま見させてくれるものからだけでも、私たちは、彼らがいかに高度な精神性を実現していた人々であったかを知ることができる 。じっさい、私たちは今日でも、そのことに驚嘆を禁じえないのである。


  インディアンたちは、巨大なピラミッドも荘厳なカテドラルも建造しなかった。そのかわりに、彼らは宇宙の中に、つまりは彼らが尊敬し、驚嘆し、畏敬の気持ちをいだいている「自然」のふところに、人間である自分たちの正しい居場所を見いだしてきた。

  彼らは富を蓄積しようともしなかったし、物質生活の快適さを追求したりもしなかった。そのかわりに、彼らは世界との調和をつくりだすことのできる強勒な魂を、自分の内部に育て上げようとしてきたのだ。森や平原を尊敬をこめてみつめながら、その世界と一体となることができること、生活のささいな断片の中にさえ、聖なるものの輝きを認めることのできる精神をつくること、これがインディアン哲学の本質である。

  ヨーロッパから襲いかかってきた征服者たちをつき動かしていたのが、とめどもない食欲さであったことを思うとき、人生の意味について、ほとんど正反対の考え方をいだいているインディアンと彼らとの間には、およそ対話などというものが、不可能だっただろうということは、よくわかる。

  それにもかかわらず、アメリカ・インディアンたちは、入植者たちの容赦ない侵略に直面しながらも、古くからの彼らのやり方にしたがって、両者が平和のうちに共存していく道はないものだろうかと、たえずたがいの調停点をみいだそうと、努力を重ねたのである。


  ところが、白人にとっては、インディアンをどこかに強制収容してしまうか、さもなければ滅ぼしてしまうか、二つに一つの道しか考えられなかった。白人にははなから、調停のことなど念頭になかったのである。この本におさめられた、インディアンたちの言葉にこめられたまことに悲痛な現実は、まさにそのことに関わっている。  本書におさめられているのは、他人の声に耳を貸そうともせず、すべての権利を独り占めしようとするために、倣慢にも「われわれは文明人だから、お前たちよりも優れているのだ」と主張する者たちを前にして、意をつくして説明し、相手の理解を求めようと努力した「(真の)人間たち」の発する声の記録にほかならない。

  犯罪(虐殺、略奪、調印されてはすぐに破棄された条約・・・)は、たえまなく引き起こされた。そして、今日では、どの犯罪行為が、両者の抗争に火をつけることになったのか、だいたいのことはわかってきている。


  しかし、今はインディアンの世界が、物質的に壊滅してしまったことを嘆いたりしている時ではない。また、おぞましくも愚劣なこの大虐殺に声高な怒りを発していればすむ、という時代でもない。今大急ぎでやらなければならないのは、彼らの精神性(この本におさめられた、彼らの言葉をとおして、私たちはそれを生き生きと感じとることのできる)が、人類の未来に確実に贈り届けられるための道を必死で模索することである。

  物質主義の西洋社会が今日陥っている混迷を前にしたとき、インディアンの知恵は、いつまでも新鮮な水を湧きださせる泉のように思えてくる。本書におさめられた、わずかな数の「言葉」を手掛かりとして、これから私たちは、残されたインディアンのあらゆる言葉を収録した、さらに大きな書物を将来につくりだしていく作業にとりかかろうと思う。それは、永遠のみずみずしさと生命力をたたえた人類の精神力を、未来に開く鍵をあたえてくれるだろう。


  ミッシェル・ピクマル「インディアンの言葉」 紀伊國屋書店<引用終わり>



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る