CIA要員黒竜国の女帝になる

銀月の波

第1話 竜族

CIA要員黒竜国の女帝になる


竜族


冷たい風が吹く。

私はこうやって死ぬんだ。


任務遂行中に太ももの大動脈が貫通した。 うまく急所を突かれた 急いで止血をしてみたが、これはもう駄目だった。


「···く」


水道の蛇口をひねったように太ももから血がどくどく流れ出る。


同僚はすでに命を失った。 任務は失敗している。 失敗の原因は入手した情報そのものが間違っていた。 テロ組織の残党が待ち伏せしているとは。

敵陣に乗り込んだも同然だった。


「……裏切り者がいたのか。はぁ…」


裏切り者がいた、どうせ全部終わった。 意識は遠のき、体は麻痺したようで、まったく動けなかった。


過多出血で死んでいくところだ。 我が軍は一人もいないこの倒れていく廃墟で死にかけている。


-ジジジッ。ここは本部。聞こえるか。-

無線が聞こえるが、話す元気もなかった。 視力を喪失した それさえも見えていた廃墟が薄くなって、まったく見えなかった。


呼吸もまともにできなかったし、目が覚めることもなかった。 本当にこうやって死ぬんだ。


[武帝との契約であなたを主人にする]


何の音だろう?

あの世でエスコートしてくれる音かな?


[希望事項があるのか?]


...希望? 死んで行くのに希望事項なんて当然死なないこと。

[不死の身を与えることはできないが、 不老長生を約束する]


聞き入れるはずがないだろう。

あの世から来たのに助けてくれるはずがない。


訓練と作戦遂行だけで死ぬなんて、悲しい人生だ。


- トーマス!ジェームズ! バッグ!応答せよ! -


僕は···訓練と作戦遂行だけで全身が傷だらけだよ。 後悔はしないが.. 来世ではとてもきれいな女として生きてみたら…

[黒竜の絶世美人を約束する]


高い年俸をもらってもまともに使ったことがないね... まともに恋愛一度もできなくて死ぬんだな...

[富貴栄華と天生縁分を約束する]


悔しいね。自分の職業を選択したことは後悔しない。 祖国のために献身するのは名誉なことだから。


しかしこんなに早く死ぬのは嫌だ。

お母さん、お父さんが悲しむだろう。 母は私が軍人になることを嫌がった。 ごめんね、お母さん、お父さん。


神様がいるなら、魔法のような奇跡で私を助けてください。

[黒竜の地水風火の能力を約束する]

***


私が目を覚ました時には、全然分からないところだった。


「ほんとにおれが死んだな。」


いちばん最初に目に入ったのは夜空にかかっている2つの月。

決してここは地球でないことだけは分かった。


淡い銀色の月と金色の月が夜空を掌握していた。



私は全く知ることができない森の中に横になっていた。起き上がろうと上体を起こすと、全く見たことのない衣装が目に入った。全身は血に溺れたようだったが、痛みは全くなかった。


「私の血じゃないのかな?」


不思議なことに,私は超然とした。あの世はこのようにできたんだ。


無駄に長い袖とチマの裾が体を動かすことには,ゴワゴワした。生きて一度も着てみたことのない総総としたお姫様ワンピース。いや、ウェディングドレススタイルなのか。


「はあ。きっと死ぬ前に何の声を聞いたような。エスコートしてくれるのではなかったの?」


死んだことが今回が初めてなので、どうすればいいのか分からない。


映画やドラマを見れば、大半が死神が来て案内してくれるが、実際は違うようだ。


「まあ, 私は死んだことがないから」


私は立ち上がってここが一体どこなのか知りたくて周りを見回した。 首を横に振っていると、いつもと違う重みが頭から感じられた。


「はあ?」


これまで一度も伸ばしたことのない髪の毛が腰まで伸びていた。

妙に銀色の月光を受けた髪は青銀色に輝いていた。


銀を溶かして作っても、このような色合いはなさそうだった。 柔らかさは絹のようにとても柔らかいものだった.


「まったくお姫様だね。 これが本当に私なの? 死んだらみんなこうなるのか。 もどかしくてたまらない。」


頭を動かすたびに銀色の髪の毛が行ったり来たりして邪魔した。


「もどかしくてたまらない。 髪を結ぶようなものはないの?」


私は全身捜索をしたが,広い袖には何も入っておらず,ポケットすらなかった。


着ている服は中国映画で見るような服だった。 袖先とスカートには妙にレースと刺繍があって西洋の歴史に出てくる女王の服のように見えた。 一言で言って、「根本のない服」だった。


邪魔で実用性のない服装だった.


「まあ、きれいだね。 今まで一度も着たことがないからといって、死んで着せてくれるのか?」

いくらきれいでも頭が不便でいらいらする。私はやっとのことで服を調べ,アクセサリーのように付いているひもを見つけた。


ラップワンピースのように閉める構造だったが、また、あれこれと様々な紐で装飾もしてある。 実用性ゼロの服だ。


バラの花なのか分からない花が刺繍されていて、細かい宝石がちりばめられた紐を私は髪を束ねるのに使った。


リボンを結ぶのも不器用だから、ただ髪が解けないように結んだだけだ。



「どこに行けばいいんだろう?」


身分を知らせるような物も私は持っていなかった。 死んだ割にはあまりにも肉体的感覚がよく感じられるのは不思議だったが、生きていると思うのがもっと変だった。


私は寝転んでいるあたりを歩き回った。 道も分からないのにむやみに歩き回るのも心配ではあった。


「私が最初横になっていた場所から間もないところに、素敵な剣が落ちていた。


「素敵。」


私は上手に剣を抜いた。


幼い頃、剣道を習って真剣まで使うことができた。 鋭い刃がただ者ではないように見えた。


手にフィットする剣はまるで私のために作ったような安定感が感じられた。


素敵な刃物に感嘆していたとき、剣から真っ黒な光を放ち、何かが私の顔の前に突き出た。


「ああっ!」


私は驚きのあまり、剣を投げつけた。 ホログラムかな?

[ひどいだな ご主人よ]

「主、主人?」

[私、黒竜。武帝との契約であなたを選択した]

「黒竜?武帝?」


頭が痛くなってきた。 私の目の前の奇妙な形象は、中国映画ではよく見られるような竜に見えた。


「あの世には竜もあるみたいね。 へえ」

[竜だけか。鳳凰もある]

「何のファンタジーか。 そういえば、私が死ぬときにあなたの声を聞いたような気もするし。」

[覚えてるみたいだな]


「黒竜」と自称して紹介したおかしな形状は、無愛想極まりない言葉遣いだった。 まあ、言い方で言えば、私も感情を表に出すことができないので、不便ではなかった。


「どこかで聞いたような声だと思っただけだ。 黒竜って言ったよね? 一体ここはどこなんだ? 私は死んだの?」

[ここは黒竜国の東にある銀林だ]

「黒竜国?銀林?」


初めて聞く単語だった。 ぼくは、まったく知らない世の中に来たことだけは確かだった。



「どうして私をしきりに主人だと言うんだ。 ここはあの世じゃないの?

「主人は死ななかった。 追撃隊が組み付いて死ぬところだったが

「追撃隊?私は確かに任務を遂行中だった。 トーマスを救出できず、待ち伏せしていたテロ犯に太ももの大動脈を痛め、出血過多で死んでいく途中だったが?”

[何を言ってるのかさっぱり分からないな。 ただ、それなら主人は転生者だね]

「転生者」

[異世界からここにやって来る者たちのことをいう。 魂だけが越えてくる者もいれば、肉体とともに越えてくる者もいる。 主人は何方かね。]


私は黒竜の話を聞いて、思い切ってスカートの裾を掘り、太ももを見た。 全然傷あとがなかった それほど血を流した太ももではなかった。 いや、なんだか他者の体のようだった。 私の肌はこんなに軟らかくて真っ白ではなかった。


度重なる訓練と任務で銅色と言えるほど日焼け肌だったからだ。 しかし、この体は、白玉のように白く妙に、桃のようにピンク色の生気があった。


「どうも霊魂だけ来たようだ。 それでは、この肉体の主人は?」

[死んだんだろうな。正確なことは僕も分からない。そんなことは神様だけが知っている]


ひどく気まずい思いをした。 全然知らない女の体に私が憑依されていると言うのか? 私は幽霊なのか?

[確かなのは、その体は主人のものだということだ。 一日も早く即位する任務が主人にはある。]

「即位?」

[主人はこの黒竜国の主人だ]


私は無表情な顔で話す黒竜をしばらく呆然と眺めていた。


おれが国の主だと。 王にでもなるというのか。


「おれが国の主だって?」

[そうだ。主人は黒竜国を治める皇帝だ]


「それはどういう意味なのか」と問い詰める前に、遠くから何かが近づいてくるのが聞こえた。 数十人は馬のひづめの音に、僕は本能的に大きな木の後ろに身を隠した。


私の後ろを掠める まるで黒竜が話した追撃隊のようだった。


時代劇に見られるような古い兵器だった。


「まだ、銀林を抜け出せていないはずだ! 隈なく捜索しろ!」

「わかりました!」


兵を導くあの人が将軍だろう 俺が皇帝だって?でも追われてるのか? なぜ?内乱でも起こったのか?


不慣れな環境に落ちて怖がる本能より生きなければならないという本能がもっと大きく働いた。


それはどんな環境でも作戦を遂行した経験が作り出した本能だろう。


しばらく大きな木の後ろに身を隠し、彼らの気配が消えるのを待った。

全く気配がしない時になって、私は黒竜に声をかけた。


「黒竜、お前が言った追撃隊なのか?」

[そうだ]

「どうして追うの? 内乱でも起きたの? クーデター?」

[玉座の上に座った反乱王がすべての竜族を虐殺した。 その身の主も竜族だ]

「竜族?」

「竜族は皇位を継承する権利がある。竜族がすべて死んだら反乱王に権利が渡るから]


竜族が何か分からないが、皇位継承権者たちということだろう。 時代劇で毎度目にする「皇位争い」という言葉だった。


私が皇帝であることは信じがたいが、この体の持ち主が皇位継承権者の一人だったというのは、一理ある情報のように見えた。


誤った情報で簡単に死ぬことができるということは身に染みて学んだ。 皇帝であるかどうかはさておき、竜族であることをもう少し確認する必要があった。 唯一の情報員は正体不明のホログラム「黒竜」だったが、今追撃隊が銀林を捜索するという言葉から見て、完全に間違ってはいなかった。


少なくとも「銀林」に追撃対象が隠れている確率があるということで、それが「私」である確率も無視できない。


この血まみれの服が、なんだかなかなかよい証拠に見えた。


「どのように竜族なのか分かって捜索するのだろう? 「さっきの兵力から見て、まともな監視カメラもなさそうだけど?」

[竜族の特徴は黒竜国の象徴だ。夜空に似た髪色、 銀月の光を受けると青と銀の光が、金月の光を受けると紅と金の光が出る。]


私はふさふさと長い髪をわしづかみにした. つややかなこの髪!


この体の主人はどんな人なのか分からないが、竜族の証となる髪の毛をこうしてひらひらと逃げ回るとは、正気ではないだろうか。 だから死ぬしかない。


あきれた。


「これが竜族の特徴? そんなことならさっさと無くさなくちゃ!」


私はためらうことなく、黒竜剣で髪をばっさりと切った。


[やめろ!]


黒竜の悲鳴のような叫びとともに、青銀色の長い髪がばっさりと切り取られていった。


「なぜ?標的になりそうな髪を こんなに長くぶら下げているバカはどこにいる?」


黒竜は、私の言葉に答えることすらなかった。


「おい!なんで返事がないんだ?」


剣を叩いても黒竜は現れなかった。

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