第62話 求婚(即答)
翌日。
「――やぁ、リリーナ嬢。久しぶりだね」
めっちゃキラキラしたイケメン男性が私の宿泊先・アイルセル公爵家にやって来た。
輝く金髪。
輝く瞳。
輝く相貌。
まぁつまり、内部に電球でも仕込んでいるんじゃないかってくらいキラキラ輝いている若者だった。
年の頃は18歳くらい? いや、落ち着いた雰囲気で騙されそうになるけど、顔つきだけなら15~16歳くらいだろうか?
見覚えは……ある。
最後に見たのは4年ほど前なので、その間の成長を加味すると……たぶん、この国の第二王子にして現在の王太子、カイン殿下だ。
「あぁ、久しぶりだから分からないかな? リリーナ嬢の義弟になるはずだったカインだよ」
「……殿下におかれましては」
「いや、いや、そんな堅苦しい挨拶は不要だよ。私と君の仲じゃないか」
「はぁ」
いったいどんな『仲』だというのか。私と彼の関係は、主君として仰ぐべき国王陛下のご子息で、私の義弟になるはずだった子というだけ。
義弟ならば親しい交流があったのかと思われるかもしれないけれど、私の元婚約者とカイン殿下は王位継承権争いをしていたので、第一王子の婚約者である私とカイン殿下は敵のようなもの。定型文の挨拶以外の交流なんてほとんどなかったのだ。
いやまぁさすがに王子様&年下の少年だから話しかけられたら無下にはできなかったけど、それだけの関係であるはずだ。
しかしカイン殿下はとてもとても親しげであり。なにか『裏』があるんじゃないかと疑ってしまう。
「リリーナ嬢。ギュラフ公が亡くなられたそうだね? 私からも冥福を祈らせて欲しい」
「……お心遣い痛み入ります。王太子殿下からの哀悼の意をいただき、夫も浮かばれることでしょう」
「リリーナ嬢は公爵家から追放されてしまったそうだが、これからどうするのかな?」
「…………」
何でそんなことまで知っているのやら。レオみたいに人を忍び込ませていたとか? いやでも政界を引退したギュラフ公はそこまで警戒するべき人材ではないはずだし……。
≪鈍い≫
≪鈍い≫
なぜかアズとフレイルから呆れられてしまった。まるで私を監視していたみたいな物言いじゃない?
……まさか、元王太子と合流して、再び婚約者になるのを警戒していたとか? そうすればカイン殿下の地位も少しだけ危うくなるかもしれないし。
≪いや、鈍っ≫
≪いえ、ある意味では警戒していたかもしれませんが≫
ある意味ってどういう意味よ?
「リリーナ嬢。教会に確認したところ、公爵家を追放されてしまった君は離縁状態であると解釈されてしまうそうだ」
「あ、はぁ」
わざわざ「離縁状態でーす。残念でしたー」と伝えてくるとは……喧嘩売っているのだろうか?
≪悪手≫
≪イケメンで女には困らなかったでしょうし、細やかな気遣いもしなくてよかったのでしょうね≫
今度はカイン殿下が呆れられていた。まぁ是非も無し。
「――リリーナ・リインレイト公爵令嬢」
片膝を突き、私を見上げてくるカイン殿下。嫌な予感。ここ数日で人生数回分は経験してしまったアレの予感。
「心優しい君とならばこの国をより良い方向に導くことができる。――私と結婚し、王妃となって欲しい」
「え、無理」
思わず即答してしまう私だった。
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