第43話 とりあえず、お茶会
お腹の底がねじ曲がるような感覚のあと。私たちは無事王都へと転移したのだった。
正確に言えば、王都すぐ近くの街道側。
いきなり王都内に転移しては謀反の疑いをかけられてしまうし、なにより王都には転移魔法を禁じる結界が張ってあるからね。
≪いえ、現在のマスターであれば王都の結界をぶち抜くことも可能だと思われますが≫
さらっととんでもないことをのたまうフレイルだった。かつての大賢者様が張ったという結界をぶち抜くってどういうことですか?
フレイルに突っ込んでもスルーされそうなのでこの辺にして。セナちゃんたちは獣人の領事館に事件の説明をしに行くらしいので、私も聖剣アズベインや
と、私が通い慣れた王城に足を迎えようとすると、
「お姉様! 複数人を伴っての転移ではお疲れでしょう! 今日はもうゆっくり休むべきかと! セナ様たちも是非!」
ずいっと。ミアが私の肩を掴んでそんな提案をしてきた。いや提案というかもう半ば強制っぽいけど。
う~ん。
魔力には(アズのおかげか)余裕があるし、体力精神力も問題なし。別にこのまま王城に向かっても何の問題もない。
ただ、ミアからの圧力が凄かったし、セナちゃんたちも休ませてあげた方がいいかなとも思ったので、ここは大人しく提案を受け入れることにした私であった。
「そうと決まれば! さっそくわたくしの屋敷へとご案内いたしますわ!」
あぁ、そういえば、シャペロン(介添人)を引き受けたからミアの屋敷に滞在してー的な話になっていたんだっけ?
ちょっと申し訳ない気もするけど、貴族としては客人や家庭教師をもてなさない方が恥となるので、ここは大人しくミアの屋敷へと移動することにした私だった。
≪……このマスター、ちょっと流されやすすぎじゃないですか?≫
≪別に、不満があるならさっさと契約を打ち切ればいいだけでしょう?≫
≪いや不満というほどじゃないですけど……≫
なにやらアズとフレイルがそんなやり取りをしていた。
◇
「爺! 爺!」
屋敷に着くなり、ミアが爺――執事長さんを呼び出した。
「はっ、ここに」
音もなく現れたのはアイルセル公爵家の執事長さんだ。執事というのは家政を司る人なので肉体を鍛える必要はさほどない。だというのにアイルセルの執事長はプロレスラーかってくらい筋骨隆々だった。今にも執事服のボタンが弾け飛びそう。
「すぐにお母様に先触れを! 一号案件ですわ!」
「ほぉ! 一号案件! ではリリーナ様が!」
「お母様からの呼び出しならばお兄様もすぐさまこちらにやって来るでしょう!」
「御意に!」
ばぁんと胸を叩く敬礼をしてから執事長さんは二階へと駆けていった。その姿はまるで走り高跳びの選手のよう。ほんと、昔から知っているけど相変わらず執事には見えないわよね。
これから昼食の準備をしてくれるというので、それまでは中庭の庭園でお茶会をすることになった。……これからお昼なのにお茶会? と突っ込んではいけない。貴族令嬢とは暇さえあればお茶会をし、隙さえあれば誰かの悪口を楽しむものなのだから。
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