第34話 裁きの雷?


 私のツッコミは聞こえなかったらしく、ミアと獣人さんはいい感じに盛り上がっていた。


「――その装飾! その刀身の美しさ! かつて獣人と人間が協力して造りあげたという聖剣、アズベインか!?」


「あら、粗暴な見た目の割に見る目はあるようですわね?」


「……驚きだ。まさか伝説に謳われるアズベインが女子供をマスターに選ぶとは……。だが、面白い。数百年ぶりのマスターの力、この俺が確かめてやろう!」


 なんだ、この、なんだ? 私って実はバトル漫画の世界に転生していたのかしら?


 端から眺めている私はドン引きしているというのに、当事者であるミアはノリノリだ。


「ふ、何を愚かな。わたくし程度が、かの聖剣アズベイン様に選ばれるはずがないでしょう?」


「なに?」


「わたくしはあくまで剣を借りただけ! 真のマスターであるお姉様の力を確かめたくば、まずはわたくしを倒してみせなさい!」


 おーい。

 私はどこのラスボスだー? いくらなんでも自分の前座として年下の女の子をけしかける趣味はないんだけどー?


「……面白い。強大な力を持つ聖剣を簡単に貸し出すとは……。よほど腕に自信があると見える」


 いや勝手に持ち出されただけですが?


 なんかもう二人とも楽しそうだし、放っておくべきかしら?


 いやいや、ミアだって一応は少女。一応は貴族令嬢。一応。いくら社交ダンスより剣舞の方が得意系令嬢とはいえ、獣人相手が分が悪いはず。ケガをされては夢見が悪い。回復魔法で治るとはいえ、痛みは感じるのだから。


「……そこの獣人さん。もしかして誘拐された子供を連れ帰りに来たのですか? そうであるならまずは話し合いを――」


「――人間の言葉など信じん!」


 バッサリと交渉決裂してしまった。う~ん、こういうときは一度痛い目を見せて、聞く耳を持たせるべきかしら?


≪さすがはマスター。脳筋ですね≫


 フレイルからの言葉がグサッと心に刺さったけど、まぁ聞く耳持たない獣人の無力化を優先しましょうか。


「――雷よ、我が敵を討てトニトルス!」


 先ほどの山賊たちのように獣人を制圧しようとすると……。


「ぬぐあぁあああああぁあ!?」


 私の予想よりも大きな雷が獣人の男を撃ち、


「みゃあぁあああぁああぁ!?」


≪避雷針ぃいいいいん!?≫


 なぜか同様に雷を喰らうミアとアズであった。


 あれ? なんで? あの二人は狙ってないのに……。本人というか本剣が口にしたように避雷針的に雷を引き寄せちゃったのかしら? わ、私は悪くない……はず?



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