躾の良い会社
おもながゆりこ
第1話
会社勤めしていた頃の事。
女子社員は五十人ほどいました。
外線が鳴ると我先に受話器を取り、これ以上出来ないくらい丁寧に対応しておりました。
社長は取引先の人にこう言われて褒められたそうです。
「御社は躾が良いですね。特に女性社員の皆さんは。いつ電話して、誰が出ても丁寧な対応で、感心します。いったいどんな社員教育をしているのですか?」
社長と同行していた副社長、専務、三人とも
「はあ…」
と言って返事が出来なかったそうです。
なんて事ありません。
我が社の女どもは「電話応対ごっこ」をして遊んでいたのです。
電話が鳴ると、我先に受話器をつかみ、なるべく丁寧に対応し、受話器を下ろした途端に
「今週は私がダントツよー!」
と言いながら、壁に張ってあるグラフに走って行ったものです。
優勝者には他のみんながアイスクリームを奢る事になっていました。
私も何度か優勝し、デカいアイスをおごちになり、ご満悦でしたわ。
みんな、アイスごときで無我の境地で電話争奪戦を繰り広げちゃっていましたの。
若きおもながゆりこ、アイスの為に電話に駆け寄るの図。
躾の良い会社 おもながゆりこ @omonaga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます