UNDEAD
成田要
第一話 屍との夢
「いやはや、生きているとは面白い。本当に面白い。興味深いとも言える。そうは思わないか?僕達のように死んでもいない、だが、生きてもいない、屍のアンデットは君を実験体にしてしまいたいほどに君が愛おしい。
「ん?いやいや、本当に実験体にはしないよ。笑わせないでおくれ。単なる冗談。君たち人間みたいに言うにはジョークというのかな?そうでもない?おお、そうか、それは失礼。
「僕とこうして話しているのが夢かって?そんなわけないじゃあないか。だってこうして通じて…ああ、君たちがみる夢もこうしてリアルに会話ができるのだね。すまない、僕達アンデットは夢をみなくてね。いや、僕がみたことないだけなのかな?それすらもあやふやだね。
「まぁ、大丈夫。君は毎日が退屈で仕方がないらしいが、すぐにその退屈は終わる。ああ、違うよ。最近、人間の間で流行っているらしい転生やら勇者やら魔王やら等の楽しい冒険が待っているわけではない。残念なことにね。
「でもこれから起こることは、君が心の底、君ですら認識していない深淵の願いが叶うんだ。だが、叶ったぶん君はとても後悔することも苦しいこともあるだろう。?。…後悔するくらいなら叶わなくて良いって?残念だ。君はもう少し冒険心があると期待していたんだが。まぁ、楽しみにしていてくれ。
「僕は、待っ、て…いる、、よ…。」
…
……
………
なにか、俺の人生を大きく変えられる選択の夢をみたような気がする。気のせいだろうか。内容が思い出せない。だが残酷なことに[忘れてはいけないなにか]があることは覚えているんだ。サラリとしたロングヘアのどこかの制服を着た女性と話していた気がする。
…。いやいや、単なる夢だし、忘れよう。思い出せないということは大抵どうでもよいことだ。
田原真治郎、高校一年生。今日は高校の入学式だ。俺もついに憧れの高校生に…。というなんとも言えない感情、新しい毎日が始まるという事にとても胸が高鳴る。
まぁ、中学の頃は教室でずっと読書をしているようなやつだったんだけども…。でも友達はいたし、授業は楽しかったし、充実した毎日…。………?
?なんだ?この違和感。楽しかったはずなのにな。何かが胸の何処かに引っかかる。
「やべ、時間。」
時間が迫ってきていた。俺はまだ着慣れていないパリッとした制服に手を通し、急いで着替える。通学カバンを肩にかけ、玄関に行き靴を履き、外に出た。
まだ4月だというのに外は少し暑かった。でも新しい毎日が始まることが何よりも嬉しく、足取りは軽やかだった。
「友達、できるといいな〜。」
そう言った俺はまだ知りもしない。
屍になるまであと三時間。
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