その年の七夕!
崔 梨遙(再)
1話完結:1000字
7月7日。修太郎が日本に帰ってきた。栞は、例年通り修太郎を迎えに空港まで来ていた。
「久しぶりやな、栞。また背が伸びたか?」
「この年で伸びへんわ。私達、もう22歳やで」
「変わりはないか?」
「ないよ、修太郎が帰ってきたことが変わったことかも」
「毎年、夏は長期滞在してるやんか」
「でも、遠距離は寂しいわよ。やっぱり毎週会えるくらいの方がええなぁ」
「高校を卒業するときは、遠距離でもええって言うてくれたやんか」
「でも、どうせ止めたって留学したやろ?」
「いや、栞が本気で止めたら、僕はアメリカに留学はしなかったで」
「まあ、ええやん、4年も前の話。ほな、食事に行く?」
「うん、もう高級ホテルの最上階の店を予約してるねん。勿論、ホテルもダブルで予約してるで」
「珍しいなぁ、そんなにテキパキとデートコースを考えてくるやなんて」
「たまには、な」
「めっちゃ良い店やんか」
「ワインも美味いな」
「修太郎は、この店に前にも来たことがあるの?」
「無い。初めてや。ネットで高評価の店を探した」
「ほんまは夜景がキレイなんやろなぁ」
「そやなぁ、曇ってるからムードが無いなぁ」
「なんか、修太郎、いつもと違う-!」
「そんなことはないで」
「もしかして別れ話?」
「ちゃうわ、これや!」
修太郎はテーブルの上に青い小箱を出した。
「何、これ?」
「開けてくれ」
「うわ、指輪や。っていうか、ダイヤが大きいんやけど」
「婚約指輪や」
「給料3ヶ月分?」
「僕がこれから入社する会社の初任給の3ヶ月分」
「うわ、私達、とうとう結婚するの?」
「お互いが卒業したら、式を挙げて一緒に暮らそう。アカンか?」
「ううん、アカンことないよ。私、めっちゃ嬉しい」
「ついでにこれも買っといた」
またテーブルに小箱。今度は赤い。
「また指輪やんか、あ、なんかシンプル。これって……?」
「うん、こっちは普段身に付ける結婚指輪。お揃いやから、今から2人でつけようや。これがあったら、“既婚者や!”っていう実感が湧くやろ?」
「ほんまや、実感が湧くわ」
「今日は七夕やなぁ。七夕が婚約記念日って、おぼえやすくてええよな?」
「でも、今年は曇っていて星が良く見えない。織り姫さんも彦星さんも、今年は会われへんのかなぁ?」
「大丈夫、雲に隠れて会ってるよ。僕達みたいに」
その年の七夕! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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