天職は魔王様

@hachidaime

第1話 最後の願い

ー某国秘密刑務所独房ー


そこには史上最恐と言われた連続殺人鬼がいた。


「どうせ死刑になるならもっといっぱい殺しとけば良かったなぁ……」


男は元某国国防軍特殊部隊、退役後は傭兵として戦地を転々としながら現地人を虐殺していた。


その数はたった6年間で200人以上にも上った。


傭兵を引退した後も母国に戻り、殺人を続けた。


被害者総数はわかっているだけで600名、長年証拠すら殆ど出てこなかったのもあって、実際は1000人ほどだと裁判では主張した。


新聞やらテレビでは『生きる死神』やら『魔王』なんて異名を付けられてしまった。


正直これらの異名には少し厨二病をくすぶられてしまった。


判決は当然ながら死刑なのだが、俺の殺しの才能を国が認め、俺に暗殺の依頼をすることを条件で実質的な無期懲役となった。


依頼を受け、テロリストやら敵諜報員やらを殺したり、拷問したりもした。


そうして刑務所に入ってから何十年も生きてきたが、国家の闇を知った俺を寿命で死ぬまで生かしてはおけないと結論が出たらしく、契約は破られ、結局は死刑となった。



これが一度目の人生だ。


===


二度目の人生は一度目より酷いもので魔法が存在する世界だった。


生まれたのは某国の生体兵器研究所だった。


俺には名前すら与えられることなく、番号で呼ばれた。


俺は遺伝子操作で兵士として最適に調整された特殊改造人間だった。


3歳で動物を殺させられ、6歳で魔術師を殺した。


それから20歳するまでの14年間は訓練と殺人の繰り返しだった。


魔法戦、魔法格闘戦、近接戦闘術、精密射撃、狙撃、偵察、銃器や爆発物の扱い方、ロッククライミングや隠密作戦、空挺降下、森林戦、ゲリラ戦、拷問などの様々訓練を受けた。


他にも戦術論や魔法学、軍用魔法に関する知識なども学ばされた。


この人生で唯一の救いは肉体が改造人間であったことだ。


魔法攻撃、物理攻撃、毒、ウイルスなどの殆どの攻撃に高い耐性があり、尚且つ肉体強化や自己修復、並列思考などの魔法が生まれた時から肉体に刻まれている為、この肉体には何度も訓練中死にそうになっても救ってもらっている。


魔法を使うために必要な魔力も、人間が魔力を蓄積する魔臓という臓器を無理やり魔力量が多い犯罪者などから移植しているおかげで多い。


20歳になり、実戦に出されてからもその肉体に刻まれた魔法に命を救われている。


俺が元々人殺しが好きな人間であったこともあって、俺にとって戦場は天国だった。


どれだけ人を殺しても咎めれることなく、むしろそれが推奨されるような職場なんて,夢のような場所だった。


自由は殆ど無く、同じ改造人間たちは笑えるくらいバタバタと戦死していったが、俺を含めた数人は最後まで生き残った。


捕虜をぶっ殺して憲兵に捕まってたことも一時期あったが、俺の体自体が軍事機密の塊であった為、憲兵と言えど長くは拘束できなかったらしく、不問とされた。


その後は30歳までは軍でそのまま働き続けたが、肉体を遺伝子操作して無理やり創りかえた弊害か急激に肉体の衰えを感じ、現場を離れ、教官として後方基地で働かされた。


この時期が2度目の人生の中で最もめんどくさい時間だった。


自分に何のメリットもないのに他人に自身の今まで学んだ知識や技術を教えることの意味が分からなかった。


40代まで来ると、殆ど体を動かせなくなり、軍病院のベッドの上に過ごすことが多くなった。


軍病院では体が衰えても、リハビリ施設の筋トレマシーンでひたすら肉体を維持することに徹した。


それも長くは続かず、かつての上官やら教官時代の生徒やらとこっそり病院を抜け出して、酒を飲む日が多くなった。


結果だけは出していたので俺が思っている以上にそうした奴らは俺を慕ってくれた。


後輩からの勧めでアニメや漫画を見てみたり、ゲームをしてみたり、小説を読んでみたりしたが、俺にとっては人を殺すことよりはとんでもなく退屈だった。


40半ばまで来ると、軍医から余命宣告をされた。


寿命にしては早いと言われるかもしれんが、同じ遺伝子操作された特殊改造人間の兵士たちは20代半ばで急死していったので、同じ肉体にしては長く持った方だった。


寧ろ同期より20年弱も長く生きれたことに納得して自身の死を受け入れた。


死ぬ間際、俺は思った。


(もしも………もしも3度目の人生があるとしたら、俺が好きなだけ殺人ができる世界でありますように…………)




―――そして、神は俺の願いを聞き届けた。














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