喧嘩部道場
高校の喧嘩部道場にて。
ここまで追いつめられていたとは。
意識が朦朧とする中、
後輩にもっと目を配る事ができたはず。
ここまで追いつめられていたとは、思いもしなかった。
すまない。
雅也は後輩の名を心中で呟いてのち、謝罪をしては、これからの事を考えた。
畳敷きの床に横たわらせられている身体には、顔を除いて、ポリエステルロープでぐるぐるに巻かれていて身動きが取れない。
しかし果たしてそんなのは問題ではない。
ポメガバースの不調に加え、怪しげな薬を嗅がされて身体を弱体化させられ、強度性に優れたポリエステルロープでぐるぐるに巻かれたとはいえ、こんなものはすぐにでも打ち破る事ができるのだ。
問題は。
(この人間を甚振る事にしか興味がないこいつらをどうすればいいのか?)
悲しかった。
心が挫けた。
交流を図る為の喧嘩を、一方的に嬲る事にしか悪用していない高校生たちに、それだけではないのだと伝えられない事が、歯がゆくて、歯がゆくて、仕方なかった。
あんな、極悪非道な、すんごくひん曲がった方法でしか、自己を伝えられない、想いをそれだけでしか伝える術を知らない高校生たちが、
(可哀想。では。ない。憐れみの感情を向けたい訳ではない。ただ、)
今の所、ではあるものの、自校の喧嘩部以外に暴力を振るっているわけではないのだ。
これが俺たちの喧嘩の仕方だ、楽しむ方法は人それぞれだと高校生たちに言われれば、そうだと頷くしかないが。
ないのだろうが。
そうだ喧嘩は一択しかないわけではないと、広い心で受け入れるしかないのだろうが。
(あ~~~むしゃくしゃするううううう~~~!!!)
自分の土台に乗せられず、かと言って、高校生の土台に乗れないというのならば。
一旦、土台を全部、ぐっちゃんぐっちゃんに破壊して、自分と高校生、それぞれの土台を形成する境界線を失くしてしまえばいいのではないか。
ひょっこりむっくり。
全部凸凹にしてしまおうぜイエーイ。
そう、踊っては歌いまくる己が姿を現した。
そんな時だった。
『んだあ。元部長さんよお。またサンドバッグになりに来てくれたのかあ?』
二種類の軽快な足取りの駆け込み音が道場内に入って来たかと思えば、道場のぶら下がり照明の光に当てられて姿を露わにしたのは、対面した事はないが存在は知っている元喧嘩部部長、
(
先ほど家で別れたばかりで、しかも、別れ際には人間の姿だったが今は、ポメラニアン化している乙葉だった。
(2024.7.15)
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