もし、なくなっても

めんたい粉

プロローグ

 ある風景画を得意とする女性画家のテレビ特集で、彼女の一番の自信作を紹介するというコーナーがあり、それがネットで話題となった。

 その理由は単純。あまり美しいと言える絵ではなかったからだ。

 その絵は、一面に咲いた白い花の中心に、控えめに青色の花が開いている、というものだった。

 数々の彼女の絵とは似つかない細く不安定な線は美しさに欠け、色はシミのような広がり方をしている。

 この絵について彼女は、ニヤニヤと嬉しそうに説明した。

 「この一面に咲いた白い花。これはミヤコワスレと言って、花言葉は『しばしの別れ』。そして真ん中に咲いてる青色の花。これはワスレナグサと言って、花言葉は『真実の愛』なんです。」

 と、そこまでニヤニヤと説明していた彼女は、上がりきっていた口角を少し下げ、真っ直ぐな瞳でこう言った。



「これは素直になれない人の精一杯の愛の言葉を表現した、そんな絵なんです。」

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