物事は唐突に


 俺は異能で出したライトボールあらため光球を眺めていた。

 明るい。凄い。

 そんな感想しか出ないが異能は異能、喜ぶべきだろう。


 いや、火だったら光源にもなるし火種にもなるとか、電気系とかなら、詳しくないけど電気代浮くのではとか、そんなバカな想像をしていただけに少し拍子抜けな感じがする。

 とは言え、念願がかなって満足した俺は何か食べようかと立ち上がる。


 現在中学三年生でありながら一人暮らしをしている俺には勝手にご飯がでてくるようなことはない。

 家の場合は作ってくれるのは父親だけど、親がご飯を作ってくれるわけではないから自分で何とかしなければならない。

 とは言え、何故そんなことを今更ながらに思っているかと言うと、忘れていたが俺はあさおんしているのだ。

 どちらかと言えば夜ではあるが、まあ、とにかく今の俺は幼女である。

 もろもろの問題から目をそらして見た目だけで言えば文句のつけようがない。

 とてもイケメンとはいえなかった顔だけに美少女になったことを比較的よくとらえている。


 しかし、そんな俺に目をそらしたはずのもろもろの問題が直面したのだ。

 簡単に言えば見た目だ。

 今の俺は、TSあるあるのダボシャツだ。

 つまり、この格好ではコンビニに行きにくい。

 なまじ美少女であるだけにパンツとシャツだけでは心もとない。


 だが俺には奇策がある。

 異能を使えば世のふしだらな目からこの身体を隠すことだ出来るのだ。


「いくか」


 小さく一人呟いて家を出た。








 某所、某コンビニ。

 俺の家からほど近いそのコンビニに俺は足を踏み入れた。


「い、いらっしゃいませ……」


 店員の声が引きつったようになるが俺は構わず入店する。

 驚くのも仕方がないと俺は理解している。

 俺の変わり果てたこの姿は人の目には毒と言ってもいい。


 だから、俺は無心で商品をレジに持っていき会計を済ます。


 そう無心だ。

 俺は何も知らない。

 少しして、光り輝く何かが買い物をしたと言う噂を耳にすることなんてないのだ。


 いや、俺もバカだったと思う。

 パンチラが怖いからと異能で全身を光らせるなんて。

 なんなら帰ってから持ってるのは長ズボンだけじゃないんだし短パンを限界まで上げて履けばよかったと気付いた。

 でも、仕方ないね。

 忘れよう。





 

 それから二日。

 俺がTSしたのが金曜だったこともあって次の日に学校に行かなければならないとかはなかった。

 問題を先延ばしにしたようなものだが、この土日で少しは体の変化に慣れてきたように思う。


 通販で適当にサイズの合う服を買って一応下着までそろえた。

 流石にスカートなんかは履く気はないが下着は女ものでも仕方がないと割り切った。


 まあ、形だけは整ったと言っていいだろう。

 だが、問題がまだ控えている。

 それはずっと頭にあって敢えて見て見ぬふりをしていたものだ。

 大まかに言うと俺の存在が社会的にどういったものなのかと言う事だ。


 この世に異能と言うものが現れて四年が経って俺の周りでは使えない奴を見たことがないと言うほどだ。

 だが、それだけ異能と言うものが世界各地で認知されている中、性転換の類は全く確認されていない。

 これは、俺の記憶だけでなくしっかりと調べた結果によるものだ。


 俺以外に事例がないとなると此処からの行動の最善は俺に想像がつくはずもない。

 役所にでも行ってみてもいいが身体が丸ごと変わってしまっていて俺が俺であると言う証拠もない。

 それに、そこからの対応もどうなるか分からない。

 少し大げさではあるが、普通の生活を過ごせるのか、それとも監視くらいは免れないのか。

 そう言ったことが全く俺の頭では想像できない為、下手に動けないのだ。


 だから、仕方なくネットで解決策がないか漁りながら大人しくしていようかと思ったのだが……


「か、可愛い!!」


 何処からともなく聞こえて来たそんな声の主である少女に抱えられて連れ去られた。


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