TSしたら異能組織のボス(身長136cm)
環状線EX
プロローグ
俺は恵まれていた。
俺の人生におけるスタート地点はこれ以上ないほど良かったと思う。
家庭環境は悪くなかったし、経済的な面を見てもお金持ちとは言わないが余裕はあったと思う。
それに可愛い幼馴染がいた。
顔も幼いながらに整っていたし、性格も良くて、家が近かった関係もあってよく遊んでいた。
恥ずかしながら俺は幼少のころその子の前で厨二全開の妄想を垂れ流していたが、それを笑顔で聞いてくれる子だった。
いや、今思うと凄い子だった。
小さい頃なんていくら早熟な子だって興味のない話をニコニコと聞いてられるものじゃない。
聡明で可憐、まるで何かのヒロインのようだった。
だからやっぱり俺は恵まれてたと今なら思う。
それを実感するに至ったのは、俺が引っ越してその彼女と離れ離れになって直ぐだった。
そのころは毎日遊んでいた彼女と離れ離れになってしまって俺が引っ越して会えなくなった悲しみからやっと立ち直ろうといった時だった。
あの子もきっと向こうで俺以外の友達を作っているだろうからと、子供ながらに奮起したものだ。
しかし、そこでやっと気づいた。
その短い人生で俺の友達はあの子しかいなかったことに。
そもそもあっちでも俺は他に友達がいなかったのだ。
来る日も来る日も一緒に過ごしていたらそりゃそうもなるだろうと今でこそ思うが当時はそこで身をもって知ったのだ。
文字通り失ってから気付いた俺ではあったが、当時はまだ幼稚園児、コミュ障は発揮していない。
だから、新しい幼稚園に行っても普通に話しかけたわけだが……無理だった。
いや、今でも分からない事ではあるのだが無理だったのだ。
話しかけても仲良くなれなかった。
とまあ、そこからズルズルいって今は立派な陰キャになったわけだ。
ちなみに、業務連絡は来るのでボッチではない。
学校で一言も喋らないなんてことはないのだ。
しかし、そんな俺にも転機が訪れたかに見えたのは四年前の出来事の時だ。
その日を境に世界中でとある目撃例や証言がされることとなる。
それは、魔法のような現象が引き起こせるようになったと言う人たちが次々と現れるようになったというものだった。
確か、最初は中国辺りだったか。
手のひらから植物を出すことが出来る少年が現れたと言うニュースが報道されたのだ。
始めはフェイクニュースと言う線が濃厚とされていたため、世界中で広く取り上げられていたものの本気にしているような人はほぼいなかった。
しかし、それが一転する出来事があった。
それは米国某所で二人目の事例が発見されたことだ。
その出来事が発端で次々と世界各地で力を宿す人々が現れ信憑性が高まったのだ。
ただ、そのころには特異性を恐れた何者かに拷問の末に一人目の発現者が殺されてしまったのは有名な話だ。
とまあ、それから少し経って日本でもそれは珍しくなくなった。
国はその力を異能と呼び、それは共通認識となった。
そして、この俺も……と、夢を見ていたのだが、何の変化も訪れなかった。
いや、それは仕方ない。
きっと選ばれしものではなかったのだろう。
そう思っていたのも懐かしい。
だが、一人目の事例から四年、異能を持たないものなどごく少数となった昨今ではそんなことを自分に言い聞かせるのも難しい。
なんたって、クラスでも異能が発現してないのは俺だけなんだよ。
別に皆が超強い能力を持ってるとかじゃないんだよ。
学校のクラスのやつらの能力を見ても文明の利器で簡単に再現できる程度のもので、火を出せてもライター変わりが精々だ。
それでも羨ましい。
俺も欲しい。
そう思って早四年。
転機を逃した俺は結局陰キャに収まっていた。
で、なぜ俺がそんなことを思い返しているかと言えば、簡単に言ってしまえば記憶の確認のためだ。
いや、自分が自分であると言う事を確認するための……もういいや。
結論から言えば、女の子になっていたのである。
つまりだ。
気付いたら姿かたちが変わっていた俺はもしかしたら実は女の子だったのではないか、自分を男だと勘違いして今まで生きて来たのではないかと思い記憶を確認していたわけだ。
うんうん。意味わからないね。
「まあ、まずは着替えるか……」
女体化したのはちょうど家に帰って来た時の話。
学校から帰ってきて制服だったので取りあえず着替えることにする。
ブカブカになってしまった制服を脱いでハンガーにかける。
「服はどうするか」
少し頭を悩ませるが生憎俺の服は多くない。
それに体も縮んでいるし着る物も限られる。
「やっぱこれだよな」
鏡に映る少女を見て俺は頷く。
黒髪、碧眼、そしてTSあるあるブカブカTシャツ。
とは言え髪の毛が白じゃないあたりそこはあるあるではないようだ。
元の俺の髪と同じかと思ったが多分違うな、俺の頭はこんな綺麗な黒髪ではない。
そして、見るからに変わっている青……と言うより水色の瞳。
うん。
ロリだ。
ペドではない。
ここ大事。
「まあ、それはともかくとして……」
俺は視線を下げて小さくなった手のひらをグーパーさせてみる。
サイズが変わったのに違和感がない辺り謎なところが多いが、まあ、そんなことは今はどうでもいい。
今大事なのは異能だ。
そう、異能。
俺が欲してたまらないもの。
なんとなくわかるのだ。
今なら使えると。
「ハッハッハッ!ついに俺の時代が来た!!」
聞きなれない高く美しい声が俺の喉から出るが、そんなお約束より今は異能だ!
俺は小さくなった手のひらを最大まで腕を伸ばして突き出す。
そして、適当に狙いを定める。
「いでよ!異能!!」
あくまで異能、ゲームや漫画みたいな魔法じゃないから詠唱どころか叫ぶ必要すらないが、まあ、雰囲気だ。
俺の意思に反応してか手のひらに力が集まっていくような感覚を感じる。
そして、表面にバチッとプラズマが走る。
「これは……雷系」
つい歓喜によってかそんな言葉が口から洩れる。
雷とか電気とかそういうのは大体強いと言うのは定番だ。
異能に目覚めなかった俺が異能に目覚めて、更に大当たりを引くとは。
エネルギーはだんだんと輝きを増していく。
そして、球体の形を象って……象って……
「……あれ?お、終わり?」
そこからなんか変化していくのではと俺が期待にペタンコな胸を膨らませたところで変化は止まった。
手のひらに佇むのはさながらライトボール。
ライターと同程度の火の異能と比べても見劣りするそれはどこからどう見ても浮かんだ照明だった。
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