【毎日投稿】〜お嬢さまを溺愛する『白髪』最強執事は、魔法科学校の問題児〜《ハクシツ》
百目琳寧
プロローグ
――赤ちゃんが目の前にいる。
それが現状を表す最適な言葉だろう。
『うわぁ〜〜〜ん!!! ヤダヤダ! ぜったい〈魔法科学校〉に行くの!! ヒック……アンタは私の
「はぁ」
(泣きたいのはわたしのほうです、お嬢様)
今こうして泣きじゃくっておられるのは、決して赤子などではなく、国を揺るがすほどの権力を持った〈ビクトリヤ王国〉の第一王女、王位継承権で言うなら第二位に当たるほどのお方、
――――メイ・ロンネ・ビクトリヤ様である。
そんな王家のお嬢様たるお方が、貴族が通うような学校ではなく、下級、それも欲にまみれた男どもの行くような、ごく普通の〈魔法科学校〉に突如入学したいなどと申しておられる。
何か高度な意図があるのではないかと
特に銃口を向けられているとかそういうわけではないのに、かれこれ一時間ずっとこんな感じである。
「お嬢様、なぜ学校などという下級が
『いや、めちゃくちゃ言い過ぎだろ! ほら、私ってこれまでの人生で〈お嬢様学校〉しか行ったことがないわけじゃん? だから、普通の学校に行ってみたいなって思って……』
お嬢様はよくぞ聞いてくれた!と言わんばかりの表情で答えた。
「ジー…………、」
『な、なによっ!』
「お嬢様、本当のことを言ってください(呆れ顔)」
(……何年いっしょにいるとお思いですかお嬢様、バレバレです)
お嬢様は嘘をつくとき、あからさまに目を背ける癖がある。
お嬢様は押し黙り、顔を真っ赤にして言った。
『わ、私その…………、『恋』というものをしてみたいの!! してみたいの! してみたいの!(エコーみたいに言ってる)』
「………………な、、、、、!!!!!!」
『い、言わせんなよ。このバカ執…「こ、『恋』ですかお嬢様! 私という執事がありながらも『恋』ですか!! そうですか、わかりました。今のお言葉で『絶対に!』『何がなんでも!!』お嬢様を魔法科学校へ行かせるわけにはならなくなりましたッ!!!」』
『なっ…………、(目がうるうる)』
「ゼッタイ、ダメッッ!!!」
『う、うぅ、、うわぁ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!(今日一番の泣き声)』
「ふんっ!(そっぽを向く)」
しかし、こうして泣かれているお嬢様のお顔を見ていると、昔のことを思い出します。
わたしは脳裏に浮かぶお嬢様を見て、つい笑みがこぼれてしまった。
――フィンの回想
わたしは物心ついた頃には、王国の隅にある深い森で[おじさま]と一緒に暮らしていた。
おじさまはわたしの父の、弟ぎみに当たるお方だ。
森での生活は基本、わたしが獲物を狩って、おじさまがそれを調理していた。
それもそのはず、わたしは幼い頃から並外れた身体能力とある程度の魔法を網羅しており、とにかく狩りに
毎日がたのしくて、とても充実していた。
……しかしそんなわたしと、……おじさまとの間には……、絶対に守らないといけない……《言い付け》……が存在していた……。
「フィン、お前は特別な子どもだ。特別すぎて、他の人には理解されんだろう……でも、この森ならお前が生きていく上でなんの不都合もない。お前の両親が、私たちに
おじさまは笑顔の絶えない、とにかく優しいお方だった。
しかしこの時だけは、どこか寂しそうな、おじさまはそんな目をしていた。
「うん……だけど、お母さんとお父さんには会えないの?」
「……………………、」
両親は不慮の事故で亡くなったと聞かされた。
衝撃のあまり三日三晩……いや、一ヶ月は食べ物が喉を通らなかったのを覚えている。
おじさまは、過去にないほど悔しそうな顔をしていた。
それらもすべて……、わたしが『白髪』で生まれてきたからだ。
……この世界で『白髪』の子どもは……災いをもたらす元凶である……そんな言い伝えがある。
子どもの頃のわたしは、それすらも知らなかった。
それどころか、この世界でその言い伝えを知っているものは、百といないだろう。
それほど『白髪』の子どもというのは生まれてこない、あるいは生まれた瞬間、……即抹殺されてしまうのだ。
飲み食いできるくらいまで回復したある日、わたしはおじさまの部屋から
「これ、誰だろ……」
埃をよく手で拭き、わたしは写真を見た。そこには満面の笑みを浮かべる『家族』の姿があった。
そして―――――、
……わたしの隣にはもう一人……、恥ずかしそうな笑みを見せる——『白髪少女』の姿があることを知ってしまう…………。
わたしは何かの衝動に駆られ、おじさまとの言い付けを破って写真に映っている場所を探しに森を出てしまった。
それが、わたしに与えられた使命のように感じたから————。
「居たぞ『白髪』のガキだ!!!!!!!」
「何がなんでも捕まえろ!!!!!!!」
わたしは訳もわからず逃げ続けた。
だって、もしかしたら家族に会えるかもしれないという希望が……わたしの胸にはまだ
——そして出逢う。
『その子から離れなさい! 何をしているの!』
「…………誰…………お姉さん」
『大丈夫、私がいるから安心して』
街の道中で転び、死を覚悟したわたしを庇うようにして現れたのは、身長もさほど変わらない同い年ぐらいの少女だった。
だけど当時のわたしには、あの優しく包み込むような笑顔が、小柄ながらも大勢の大人たちに物怖じしないその姿が、かっこいい背中が、それら全てがわたしの目には強く、そして大きく映ったから。だからお姉さんと言ってしまった。
「メ、メイ様……、しかしそのガキは…………」
『いい? 国家命令よ! この子に指一本でも触れたらアンタらの首、吹っ飛ぶから』
わたしはお嬢様から目を離せなかった。
彼女から湧き出てくる人の
周りとは違う『髪色』をしたわたしを、怖がらず対等に扱ってくれた。恐怖とはまた違う、心臓のドキドキが鳴り止まなくて……不思議な感覚。
そう、この時初めて————『恋』をした。
「あ、あの……ありがと」
『うん、どういたしまして! 私メイ! あなた名前は?』
「おれは、『フィン・オリアス』です」
『フィンね、わかったわ! それじゃあフィン! 助けてあげた代わりに、わたしの執事になりなさい! あんたの髪の毛……その、すっごく綺麗だから……と、とくべつよ!!』
「きれ…………、」
「『「『は???????? メ、メイ様……な、何をおっしゃいますかッ!!!!(ガミガミ、ガミガミ)」』」』
(おれの髪の毛を……き、きれいって…………)
そこからというもの、わたしはお嬢様の住んでいる〈ビクトリヤ家〉に『連行』という形で連れて行かれ、そこでも盛大に議論が交わせられた訳だが、わたしの処分をめぐる言い争いは一人の少女を除いて全員が死刑に賛同。
一方的に議論が進む中、お嬢様だけはわたしの死刑処分に対して猛反発していた。
「メ、メイちゃん……自分がなにを言っとるのかわかっているのか…………」
『いいでしょお父様! 第一そんな《言い伝え》本当かどうかなんて分かんないじゃない!』
「し、しかし…………、、」
『もう……わかってくれないお父様なんか………嫌いっ!!!』
「な、、、、、、、、、、」
可愛い
長い抗議の末、言い伝えが本当であるか王家に身を置いて確かめることになった。
一度でもお嬢様に危害を加えることがあれば即死刑。
あの日からわたしはお嬢様に
やがてその姿勢が、王家の皆様から信頼を勝ち取ることができ、こうして今——お嬢様の執事として隣にいることができる。
それらも全て、お嬢様のおかげです。だからわたしにとって、歯磨きが大嫌いなお嬢様であれ、お世話ができるのなら本望、ご褒美なのです。
「……わかりましたお嬢様、仕方ないですね。わたしはあなたを命に代えてお守りすると誓った身分…………学校、行きたいですか?」
『ふんふん!』
一瞬にして泣き
「ただーしッ! こ、恋とかはゼッタイだめですからね?」
『わかったわよ。まぁ私にはフィンがいるしね』
「はい! ん? それってどういう……」
『はやく! お父様のところ行くわよ! ふっ』
「お、お待ちくださいーーーーッ!!!!!」
(どうせ国王様も、お嬢様には敵わないだろうな……というより、さっきのお嬢様のが気になりすぎて……ハゲそう、、)
そしてお嬢様は悪い笑みをチラつかせながら逃げているので、わたしはいつものようにポーカーフェイスで追いかけます。この日常がたまらなく愛おしいのです。
そして案の
————じゃなくて!
「結局さっきのはどういう意味だったのか、教えてくださいお嬢様ーーー!!!!」
————この物語は……なんやかんやで……お嬢様と……執事のフィンが……『幸せ』になるまでのお話を……書いていきます。……そして感動の再会も…………乞うご期待!……チャンチャン。
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