第一章 まだ平和なときの魔法科学校まで

第1話 御伽話 〈重要〉



 わたしたちが日々暮らしているのは、

――――〈ビクトリヤ〉。そして魔物たちが住んでいて、誰も足を踏み入れ帰ってこれた者はいないという――――《バルザガン大樹の森》。


 ビクトリヤ王国の西北せいほくに広がるこの森は、王国側からの干渉はなく、見放された地、――――《«人類未踏じんるいみとう領域りょういき»》と言えよう。

 

 なぜか?

 それにはある御伽話おとぎばなしが関係していた。


「ちなみに寝る前になると、お嬢様にはこのお話を聞かせることが多いです。……なんとなくですが、今このお話を一人で朗読していこうと思います!」

 


――望まぬ称号

 

 ――――むかーしむかし、ある所に……とある森があって……その中に……それはそれは大きな〈木〉がありました。

 その木の真隣には……一人のおじいさんが暮らしていました。


(いつも思うのですが……この話導入がとても雑なのでお嬢様と、逆に好感度上がるよねって話をよくしています)


 そしてある日、おじいさんは森の中で……ある少女と出逢であいました。

 やがて二人は親友と呼び合う仲になり、生涯をともに過ごすと誓いました。


(はい、このように話がすっ飛ぶタイプの御伽話ですので、安心してください)


 しかーしッ!幸せな生活はそう長くは続きませんでした…………………。

 なぜなら、魔王討伐にやってきた王国の騎士団が、森の地形を隅々すみずみまで把握したおじいさんに押しかけてきたからです。

 そしておじいさんは知ってしまいました。

 あの少女こそが人間の姿に化けた[大魔王]であることを……………………………………。


(急展開きたー)


 そしておじいさんは、騎士団から隠すようにして《«もり何処どこか»》へ少女を封印しました。

 自分では助けられるはずもないと判断したおじいさんの、身を切っての行動でした。そうせざるを得なかったのです。

 

(さも当たり前のように封印していますが、このおじいさんは一体、何者なのでしょうか)


 それもそのはず、当時17歳という若さで王国の騎士団を率いていた絶対的な存在、『最強』と豪語された青髪のランスロットがいたから……そして魔王討伐を目論もくろむ王国騎士団の御一行ごいっこうには、当時15歳でぶっ壊れた強さを持った『片腕』のベディヴィエールもいたから仕方なかったのです。


(勇者御一行のリーダー格の年齢層が低いのは御伽話あるあるだとしても、『片腕』の人は連れてこないでください。……それにぶっ壊れたとか普通に書いてるタイプのお話なので、安心してください)


 魔王の捜索は三日三晩にわたり続きました。

 しかし、封印された少女が見つかることはなかったのです。

 

(これはおじいさんがファインプレーすぎます) 


 再び一人になってしまったおじいさんは、その森で寿命を迎え、理由も聞かされず封印された魔王はいかあばくるったのち、呪いのごとく、森の中全土にボウダイな魔力を根強く張りめぐらせたのです。

 それも厄介なことに、誰にも絶対……われることがないように……………………深く深く、ずっと残り続けるように……………………………………………と色々本気出して来てますので、魔力が森に残りました。


(はい、行きましょう) 


 やがてその森には、【天魔波旬てんまはじゅん】の復活を目論もくろんだ強大な魔物が集まるようになり、その森を住処すみかにしている――――――――チャンチャン。


(拍手ー)

 

 

 そしてその森こそが――――《バルザガン大樹の森》なのではないかって噂です。


 

 実際、森付近ではたくさんの被害報告が上がっているのは事実なので、〈王国側〉としては死んでも森に干渉したくない……、というのが本音でしょうね。

 

 そして、流言飛語りゅうげんひごによる話に過ぎないのですが、森の象徴である《バルザカン大樹》っていう魔大樹またいじゅが森のド真ん中にドカンと構えていて、なんせかつてのおじいさんが魔王を封印した場所って……《バルザガン大樹》……なんじゃないか、……いずれその木から[魔王]が復活するんじゃないか……なんていうお話がわたしの耳に届くぐらいまで出回っているのですが―――― 、

 わたしは幼少期の頃からずっとその森で暮らしてきたのでわかります。だからこそ言える。……確かにあの木の周辺には、異様いような程、魔物がひそんでいたし……本来のものよりも遥かに強大化していた…………。これに関しては話を盛り上げるために便乗して言っている……とかそういうのではなく、森以外の魔物との戦闘を通して、ちゃんと確認することができたし、やはり唯一手応えがあったのもバルザガンの魔物たちだったと思えます。


 それにおじさまも、あの木には近寄っちゃダメってよく言っていたし、……バレずにこっそり行ってみた日には……なんか心を突き刺すような、何かを訴えるような、ハイテンポな音楽とともに歌声?……みたいなのものが聞こえてきて驚いたのを覚えていますが……うーん…………なにか関係があったりするのでしょうか。みたいな、ちょっとあの話を裏付けるようなことを言っておきますね()

 


「あ、ちなみに……木の周辺にいた魔物たちは、わたしとおじさまが美味しく頂きましたので安心してください(真顔)」

 

 

 でもまぁ、あるはずもありませんよ。

 所詮しょせん、はるか昔の御伽話。一説によるとおじいさんは……『白髪』だった…………みたいな言い伝えもあるみたいですが、まったく……、呆れるような嘘つかないでください。はぁ。

 

 そもそもわたしですら『封印魔法』なんてもののビジョンが湧いてこないのに、そんなものが存在するとは到底とうてい思えない。

 それに白髪は、『«災いの元凶白い悪魔»』として恐れられる存在ですから………まぁ、おじいさんが一人で暮らしていたっていうのは、少しばかり引っ掛かるものはありますけど…………。


 でもそんな話はいいんです!

 

 これほど《故郷の森》を思い返すのも瞭然りょうぜん、これからわたしたちが通う――――【«エストリヤ魔法科学校»】は、《バルザガン大樹の森》に最も近い場所にあるのだから!

 

(おじさまにいつでも会えるとなると、自然とテンションが上がります!)

 

 

 そして今まさに、この〈ビクトリヤ家〉では、物語が始まろうとしていた!


 

 なのに―――――、






 ――なのに何ですか?!……まさか………、お嬢様がまだ……起きてない……なんてことありませんよね!!!……信じています、お嬢様…………




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