第20話 試供品

 キャロットからここにある材料は全て無料、いくらでも使用してもよいと言われ動揺していた。

「いくら何でもそれはマズイじゃないのかな!」

「ノーマン様からの指示で、魔道具の材料も使用してよいそうですよ。」

 なぜ、ノーマンはそこまで私に優遇してくれるんだろう?

「ノーマン様からは口止めされているんですが、アキナ様が作成された物は公表してはいけない事になっています。」

「どうしてかしら?」

「すみません!理由はわかりませんがアキナ様の為だと話していました。」

「ポーションにしても魔道具にしても、アキナ様が気に入れば作成すればよろしいかと思います。」

「裏を返せば、気に入らなければ作らなくてもいいという事ね。」

「もう一つ言いにくいことがあります。」

「アキナ様が作成した商品は、工房職員の作成または私が作成したことになるそうです。」

 キャロットは申し訳なさそうな表情で私を見つめる

 これもノーマンからの指示だろう。

「構わないわよ!私はあくまでもキャロットのお手伝いだから気にしなくていいからね!」

 キャロットは無言で頭を下げた。


 出来上がったポーションを箱に詰めて、キャロットと一緒にお店に向かった。

 工房からお店の裏側に行ける通路を通ると、すぐにお店に着いた。

「ミリアさん、お疲れ様です。」

 キャロットはお店の受付にいるミリアに声を掛けた。

「キャロットにアキナ様、どうかされましたか?」

「新しいポーションを作成しましたので、試供品として性能の検証をお願いします。」

「そうですか、試供品ですね。」

 ミリアはキャロットからポーションが入っている箱を受け取り、カウンターに並べた。

「いつものポーションより色が濃い感じがするけど、キャロットが作ったの?」

 ミリヤの質問にしばらくキャロットは黙っていたが、店側にいた護衛の男がミリヤに口を挟さんだ。

「誰が作っても店には関係はない。人々の役に立つ物が出来ればいい。」

「それに試供品だろう!効果がわかるまで心配のはずだ。俺が使用してみるぜ!」

「アンダーソンさんよろしくお願いします。」

 キャロットはホットした表情で彼にポーションを手渡した。

「今日の仕事が終わったら、魔物退治に行くんでな、ちょうど必要だったんだ。」

 彼は怖い顔の割には優しいわね!キャロットとは仲が良さそうさ感じがする。

「そうよね試供品よね、評判が悪かったら罰が悪いものね、内緒にしておくわ!」

 ミリヤもそれ以上詮索せずに、他の商品の整理を始めた。


「お店に置いてある品物を見てもいいですか?」

 ミリヤの許可を頂いて、店内の中を見てまわるとキャロットが嬉しそうに説明してくれる。

「ここに置いてある薬はすべて私達が製作したものです。」

「こちらのペンダントや髪飾りは、私が魔法付与した魔道具です。」

「綺麗!キヤロットは凄いわ!」

 お世辞抜きの言葉にキャロットは顔を赤く染めて照れていた。

「私も作ろうかな?」

 そう言った瞬間、アンダーソンが椅子から立ち上がり私を睨み付けた。

「お嬢さん!そう簡単に魔道具は作れない品物だ!この町では唯一キヤロットだけだ!」 

「アンダーソンさん!アキナ様に失礼ですよ。それに私の商品は王都の錬金術師と比べたらたいしたことないですよ!」

「謙遜するなキャロット!お前が作った商品でどれだけの冒険者が助かったか、お前はもっと自信をもっていいんだ!」

 あらやだ~キャロットに対する入れ込みがすごいわね~ 

「アンダーシンさんもキャロットが作った商品を使う冒険者ですか?」

「これでも元Bランクの冒険者だ!今は引退してこの店の警護の仕事を受けながら、時間があれば若い連中と魔物退治をしている。」

「Bランクの冒険者であれば大ベテランですね!私も冒険者でFランクです。ぜひ今度一緒に行きませんか?」

 アンダーソンは明菜の軽い言葉にあきれて物も言えなかった。

「そうですね、アキナ様もアンダーソンさんと冒険するとレベルが上がっていいですよ~」

 キヤロットが間に入るように言葉を掛けてきたが、ちょうどお客がお店に入って来た。

「いらっしゃいませ!」

 ミリヤがすぐさまお客に対応する。

 店の中に入って来た人物の顔を見て、明菜は驚き固まってしまった。


 







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