異世界で大聖女は克服したい!

鬼瓦

第1話 幼馴染

「おい明菜!なにやってんだよ、面接におくれるよ!」

「ごめんなさい勝也!トイレにいっていて遅くなっちゃたよ~」

「お前は、緊張するとトイレが近くなるよな!」

「仕方ないじゃないの~」

「面接が始まる前にもう一度トイレにはいっとけよ!」

「わかってるよ!今度は失敗はしないから!」

 

 私の名前は城之内明菜・22歳大学4年生。

 隣にいるのが、早乙女勝也・21歳で同じ大学4年生。

 私たちは就活の真っ最中で、今日も会社の面接に慌ててバス停まで走っている。

 彼とは保育園の時からの幼馴染で、家は隣同士で両方の両親が同級生とくれば

 当然何もかもも知っている仲になる。

 お互い二人兄妹で、私には弟が、彼には妹がいる。

 彼とは同じ学年だが、私の方が誕生日が早く来るので子供の時からお姉さん役をさせられている。

 みんなの目がある時はお姉さん役を演じているが、実際は彼に助けられてばかりの情けないお姉さんだ。

 それに彼しか頼れない秘密が私にはある。

 子供の時からのおねしょの癖が中々治らず、大人になっても緊張やストレス・恐怖やびっくりしてしまうとお漏らしをしてしまう癖がある。

 寝ている時のおねしょはさすがに克服したが、大人になった今もお漏らしは克服できていない。

 私がすぐお漏らしをすることを知っているのは・・・彼だけだ。

 小さい時は、いつもどちらかの家で一緒に寝ていたし、小学校5年生まではお風呂も一緒に入っていたが、ある事件をきっかけに入らなくなった。

 私は今でも一緒に入っても気にしないんだけど、勝也は断固として拒否する。

 きっとあの事が思いだされて嫌なんだろう!

 そういえば私のお漏らしの癖は、その時からかもしれない。

 勝也には女友達も彼女も全くいない。(私が知る限りでは見たことが無い。)

 私はこれでも結構モテる方で、何回も告白されては全て断っている。

 別に男に興味が無いわけではなく、気に入った人に巡り合わなかっただけだ。


 私達が住んでいる場所は、高台の住宅街で自然豊かな静かな所だ。

 今乗り込んだバスで、ふもとの地下鉄の駅まで行きそこから乗り換えて行くのが毎日の日課だ。

「よかった、間に合ったね勝也!」

「何がよかっただよ!走ったお陰で汗だくだくだ。」

「アはっ!」

 私はいつもの会話におどけて見せた。

「はい、ハンカチで汗を拭いて~それともおねーちゃんが拭いてあげようか~」

「何がおねーちゃんだ!自分で拭けるよ!」

「遠慮しなくてもいいのに~」

 子供の時は気にならなかった事が、勝也はすごく気にする。

 私は今まで通り気にならずにいるけどね!


バスがふもとにまで行く間で、一番大きな急カーブを通過しようとした時、急にバスごと揺れてガードレールを突き破った。

一瞬の出来事だったのか、ゆっくりと周りの景色が変わってゆき宙に浮いてる感じがした。

 周りの人達の悲鳴が聞こえたかと思ったら、勝也が私を体を引き寄せたと同時にバズが崖にぶつかった衝撃が伝わった。

「明菜!」

「勝也!!」

 私は勝也にしがみ付いたまま、真っ逆さまの状態になった。

 怖い!私死ぬんだわ!

 そう思った瞬間にお漏らしをしているのに気づいた。

 死ぬ最後でお漏らしとは、それも勝也に抱きついたままで最後の最後まで勝也に迷惑かけるなんて、ダメな私だったわね!

 短い人生の勝也のと記録が、走馬灯のように浮かび上がる。

 勝也が私の名前を呼んでいる声がしていたが、それも段々薄れて私は気を失った。

 





 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る