世界はちっとも甘くない

鮎川 碧

廻る世界

小さい時は、といっても私はまだ高校生の部類で、こんな表現をすること自体がおかしいことかもしれないが、小さい時は、ほんの数年前までは自由だった。母の声に起こされて、学校に行き、友達に会い、勉強をし、家に帰ってゲームをして、お風呂に入って、そして寝る。単調な生活であると、今振り返るが思ってしまうが、当時は、小さい時は、それが幸せだった。

それが私の世界の全てであった。


いつからだろう。毎日出会う朝に退屈さを覚えるようになったのは。かつては、幸せの始まりであったはずなのに、憂鬱さを感じるようになったのはいつからだろう。毎日同じ変わらない日々、これがどんなに幸せか人生で何度も説かれたが、それでも物足りなさを感じてしまう。私がおかしいのだろうか。私だけの感情なのであろうか。誰にも相談できず心に蓋をしてきた感情。言葉で言い表せない感情。なんと名をつければ良いのか。人生経験が足りない故の悩みなのであろうか。誰か答えは知っているのか。答えなんてあるのか。


小さい時は自由だった。いや、気づかなかっただけなのかもしれない。死という免れぬ運命に追いかけらている事実を知った時。毎日訪れる世界を大切にしようと思った。死と隣り合わせあるとしても、世界は毎日訪れてきたという事実を知った時。明日という言葉に価値を感じなくなった。決して、死にたいわけでない。死ぬのが怖くないわけではない。ただふと、生きたくないと感じることがあるんだ。


小さい時は自由だった。

無知な故に自由だった。


目を瞑ったらまた明日は巡ってくるのだろうか。


今日と同じ明日が巡ってくるのだろうか。


自由はいつ巡ってくるのだろうか。


世界は私を置いていくことなく、独りよがりに廻っていく。

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世界はちっとも甘くない 鮎川 碧 @Kopf-Kino-1224

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