第68話

「フランソワーズは今のままでも素晴らしいのに……」


「フェーブル王国のことを、もっと学ばなければ王太子妃は務まりませんもの」


「君のそういうところも素敵だよ」



そしてフランソワーズとステファンが結婚式をする前にオリーヴとアダンの結婚式が行われた。

二人の結婚式は涙なしには見られない感動的なものとなった。

それはオリーヴからアダンと心温まる話をたくさん聞かせてもらったからだろう。

オリーヴが病に苦しんでいる間もアダンは彼女をずっと支え続けていたからだ。


結婚式が終わり、オリーヴとアダンの結婚を祝うパーティーが開かれていた。

純白の美しいウェディングドレスに身を包んでいる彼女は輝いて見えた。

幸せな気持ちが伝わってくる。

フランソワーズは見つめ合うオリーヴとアダンを見つめながら涙を流していた。



「改めておめでとう、オリーヴ」


「ありがとう、フランソワーズのおかげでわたくしとっても幸せよ!」



幸せそうなオリーヴと抱き合いながらに「次はフランソワーズの番ね」と言われ、花束を渡される。

アダンやアダンの両親もフランソワーズに深々と頭を下げる。

挨拶に回らなければならずオリーヴとアダンと離れた。

フランソワーズは涙を拭いながらも横にいるステファンを見た。


ステファンは「楽しみだね、フランソワーズ」と、いつものように優しい笑みを浮かべているが圧を感じていた。

視線だけでフランソワーズと『早く結婚したい』と訴えかけられているようだ。

フランソワーズは誤魔化すように笑いながら言った。



「な、何がでしょうか?」


「盛大な式にしよう。フランソワーズが僕と結婚したのだと早く皆に見せつけたいんだ」


「……!」


「照れている顔も可愛らしいね」


「いい加減にしてくださいっ!」



フランソワーズは元シュバリタイア王国のことが落ち着いてからも忙しい日々を過ごしていた。

宝玉が壊れた影響なのか、さまざまなモノに取り憑いていた悪魔たちが暴れ出したからだ。

フランソワーズが十年間も一人で宝玉を守っていたせいか、元シュバリタイア王国の令嬢たちは、すっかりと聖女の力の使い方を忘れてしまったらしい。

フランソワーズは令嬢たちを集めて、力の使い方を教えたり、悪魔を祓ったりと大忙し。


最近、共に過ごせないのもステファンがこうなる原因なのかもしれない。

共にいられる時間を大切にしたいと、ステファンはフランソワーズから片時も離れない。

それが嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分である。

今日も周りが呆れるほどにステファンはフランソワーズを溺愛している。



「フランソワーズ、愛してるよ」



フランソワーズ第一優先で動いているため、周囲にもフランソワーズに気遣っているように思う。

もしフランソワーズに何かあろうものなら……。


「覚悟はできているんだろうな?」


いつもの穏やかな紳士の笑みとは真逆で、また違った一面を見せるそうだ。

それに悪魔に取り憑かれたいた際に、訓練や猛獣を倒しまくっていた影響で彼は人間離れした強さを持つ。

今のところ、ステファンに敵うものは誰もいないといわれている。


そんな話をしているとフランソワーズとステファンの周りには人集りができていく。

今ではフェーブル王国を救った救世主として更に名前が広がった。

フランソワーズは暫く貴族たちと談笑していたのだが、少しだけ疲れを感じていた。

ステファンがタイミングを見計らい、フランソワーズに飲み物を渡す。

琥珀色の液体を流し込んで喉を潤してからホッと一息ついた。


ステファンが「バルコニーで少し休もうか」と提案してくれた。

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