第39話 セドリックside3
たしかにフランソワーズは、ほとんどが悪魔の宝玉がある塔にいる。
セドリックと公務を共にしてパーティーに出席していた。
フランソワーズは疲れた顔一つ見せずにいたからか忘れていたのだ。
彼女がベルナール公爵邸に帰ったのはいつだったのか。
フランソワーズがマドレーヌを虐げる時間などあっただろうか。
(そんなことにフランソワーズが興味を持つだろうか。まだマドレーヌと出会って半年……彼女たちはほとんど顔を合わせたことはないはずだ)
そう考えてゾッとしてしまう。
(いや……ありえない。マドレーヌが嘘をつくはずがないさ。それにベルナール公爵だって何も言わないのだから同意したということだろう?)
セドリックはベルナール公爵の態度を思い出していた。
迷っているようにも見えたが、フランソワーズの味方をすることはない。
一連のやりとりを見ていた人たちも騒ついていて、完全にセドリックたちの味方というわけではないようだ。
貴族たちは皆、悪魔の宝玉のことを知っている。
生まれた令嬢は聖女としての力を多かれ少なかれ持っているからだ。
力の強い聖女は結婚に優位となるため、そうやって教育された令嬢たちは悪魔祓いの力を得る。
それもすべて悪魔の宝玉から国を守るためだ。
負担になっていた宝玉を守るという使命をは、フランソワーズだけで担うようになっていた。
フランソワーズがいなくなることで、悪魔の宝玉を守るものがいなくなるのではと心配しているのだろう。
悪魔の宝玉の存在は、他国にはバレないようにしなければならない。
宝玉の存在がバレてしまえば、よからぬことに使おうとする輩も現れてしまうと思ったからだ。
他国の要人たちがいるこの場では弱味を見せてはいけないと、なんとかパーティーを盛り上げようとするもののお祝いのパーティーとは程遠い雰囲気になってしまった。
(いや、大丈夫だ。フランソワーズがマドレーヌを虐げていたという証人の令嬢たちの証言がで揃えばそれで済むはずだ)
今はこの場をしっかりと仕切ることだけに集中しようと思った。
「パーティーを続けよう……!」
無理矢理笑顔を作る。セドリックは胸騒ぎがして仕方なかった。
確認のため隣にいるマドレーヌに視線を送った。
気のせいなのかマドレーヌの表情は、いつもより固いように思えた。
「マ、マドレーヌ……大丈夫だよな?」
確認を込めて問いかけるとマドレーヌは静かに頷いた後に、いつものように笑みを浮かべた。
「大丈夫です。フランソワーズお姉様がいなくなってセドリック殿下と結ばれて嬉しいです」
「……そ、そうか」
「何もかもうまくいきますから!」
セドリックはマドレーヌの言葉に頷くしかなかった。
そして父と母の登場に沸き立つ会場。
フランソワーズがいないことにすぐに眉を顰めたが、パーティーを終えた後に説明すると言って誕生日パーティーを終えた。
そして別室に移動してから両親にマドレーヌとフランソワーズのことを説明する。
「つまりお前の独断でフランソワーズを国外に追放したと、そういうことだな?」
「はい、フランソワーズは自らの罪を認めて出て行ったのです。それにベルナール公爵も公爵夫人もその場にいたのに文句すら言わなかったんだ」
セドリックの言葉に二人は顔を見合わせている。
「だが、宝玉はどうするのだ?」
「それならマドレーヌが破壊してくれる。フランソワーズよりも強い悪魔祓いの力を持っているそうです!」
「な、なに? それは本当なのか!」
「まぁ……!」
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