第17話
フランソワーズは幼い頃から悪魔の宝玉を守るためだけに育てられた。
他の悪魔は祓ったことはないが、知識だけはたくさんある。
一方、マドレーヌは他の悪魔をたくさん祓ったことはあるが、宝玉の抑え方は知らないはずだ。
フランソワーズは今まで王妃教育と共に培った知識をステファンに話していく。
「……なるほど」
「それと悪魔が媒体にしている本ですが、なるべく太陽の光が当たる場所に置くべきです。光が当たらない場所では悪魔の力が強まりますわ」
悪魔の宝玉も常に陽の光が当たる塔の最上階に置かれている。
それは少しでも悪魔の力を抑えるためだ。
「そうだったのか。僕たちはすべて逆のことをしていたようだ……」
「何も知らないのですから、仕方ありませんわ」
シュバリタリア王国では当たり前のことも、他国にはない知識のようだ。
ちなみにステファンやオリーヴを呪った本を教会に移そうとしたそうだが、本に触れた人は皆、何らかの形で呪われてしまったそうだ。
フランソワーズは悪魔の本に触れることなく動かす方法をステファンに伝えていく。
「もっと早くフランソワーズ嬢に話を聞けていたら、皆が苦しまずに済んだかもしれない。プライドなど捨てて助けを求めていればっ……!」
ステファンは悔しそうに唇を噛んでいる。
フェーブル国王は大国ゆえに、シュバリタリア王国に頭を下げてまで頼りたくないと考えていたそうだ。
だからこそステファンは個人的に動いており、セドリックとも積極的に交流を持とうとしていたらしい。
「セドリックに聞いても何もわかるわけがないね。彼は何もしてないのだから……」
「はい……悪魔祓いは聖女たちの仕事です。セドリック殿下は直接関わっているわけではありませんから」
「フランソワーズ嬢、情報提供を感謝する」
「いえ……大したことではありません」
フランソワーズはシュバリタリア王国では皆、当たり前のように知っていることを話だけである。
「本当にありがとう、フランソワーズ嬢」
ステファンの本当の笑顔を見たような気がした。
彼の仮面が取り払われた本当の素顔を見ていると、フランソワーズの心臓がドキドキと音を立てる。
この短時間で彼の色々な表情を目にしたからかもしれない。
(こんな気持ち、セドリック殿下には感じなかったわ)
こうしてフランソワーズはフェーブル王国に向かうことになった。
フェーブル王国にはシュバリタリア王国から五日ほど、馬車で移動しなけれなければならない。
その間、馬車の中でフランソワーズはステファンとの時間を過ごしていた。
ステファンはフランソワーズを怖がらせないようにと、丁寧に接してくれた。
紳士的で身の危険を感じることはなかったし、彼はフランソワーズの気持ちを一番に考えてくれた。
あっという間の五日間だった。
移動時間では会話は弾んでいて退屈を感じることはない。
彼とも随分と打ち解けたように思う。
ステファンに『フランソワーズ』と名前で呼んでもらうように頼む。
彼がフランソワーズ嬢と呼び続けることに違和感を感じたからだ。
「わたくしは、今はただのフランソワーズですわ」
「……ならフランソワーズと呼ばせてもらうよ。僕のこともステファンと呼んでほしい」
「それはできませんわ! 大国の王太子ですのよ?」
「だけどフランソワーズにはそう呼んでほしいんだ。もっと君と親しくなりたいんだ」
「……か、考えておきます」
「うん、ありがとう」
短いけれど、濃密な時間だった。
話せば話すほどにステファンに好感を持っていく。
彼の誠実さや国民や側近である二人、そして家族を大切に思う気持ちを聞きながら、セドリックや国王、ベルナール公爵たちと比べてしまう。
フランソワーズは、ステファンを尊敬していた。
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